フィギュアや文房具、朝食シリアルからシャンプーまで、任天堂のライセンス商品はもはや何でもアリ。ですが、そんな我々の想像を遥かに超えるブツが、かつて存在したことをご存知でしょうか? その答えは――なんと『シーリングファン(天井扇風機)』です。
1988年頃、北米市場でひっそりと発売された「Nintendo Super Mario Ceiling Fan & Light Kit」。これは、米国のA-America社が製造し、任天堂が正式にライセンスを与えた家庭用のシーリングファンです。実際に回転して照明としても機能するだけでなく、『スーパーマリオブラザーズ』の人気キャラクターたちが羽根にプリントされており、ファンが回るたびに、まるで天井で懐かしのゲーム世界が再現されるかのような逸品でした。

任天堂が扇風機をライセンス!? まさかの実話
このシーリングファンは、シアトルに拠点を置くA-America Inc.が製造したもので、型番はCFN-1。米国任天堂から正式なライセンスを受けていました。ファミコンが大ヒットし、マリオが誰もが知るキャラクターとなった時代、任天堂は周辺グッズのライセンス事業を積極的に展開。このファンも、当時の「何でもライセンスしちゃえ!」という勢いから生まれた産物の一つだったのです。
主なターゲットは子供部屋で、直径は42インチ(約106cm)。4枚の羽根にはそれぞれマリオ、ルイージ、ピーチ姫、そしてクッパが描かれています。中央の照明カバーには「Super Mario」のロゴがプリントされており、プルスイッチ(引き紐)でファンと照明を個別に操作できる仕様でした。


当時、このシーリングファンはKmartやSearsといった北米の百貨店など、一部の販路でのみ販売されていました。価格も安くなく、大々的な宣伝もされなかったため、残念ながら大ヒットには至りませんでした。しかし、それから数十年後、この商品は思わぬ形でオークションサイトで脚光を浴びることになります。
eBay の落札記録によると、箱付きで状態の良い中古品が500ドル以上、未開封の新品となれば1,000ドルを超える値がつくこともあるとか。その価値の源泉は、なんといってもその希少性。当時、子供部屋にこんなユニークなファンを設置した家庭はそう多くなく、現在まで良好な状態で保存されている個体は極めて少ないのです。

マリオのシャンプーに任天堂シリアル!? 驚きのライセンス戦略
実はこのシーリングファンも、任天堂のぶっ飛んだライセンス商品のほんの一例に過ぎません。90年代初頭には、化粧品メーカーのRevlonと提携し、マリオの子供用シャンプーや泡風呂入浴剤を発売。さらには『スーパーマリオブラザーズ』デザインの電話機まで存在しました。中でも特に有名なのが、1988年にRalston社から発売された2種類の味が楽しめる朝食シリアル「Nintendo Cereal System」でしょう。
▼「Nintendo Cereal System」2フレーバー入りシリアル
▼1990年発売の「スーパーマリオ シャンプー&バブルバス」


これらの周辺グッズは、任天堂の「キャラクターを人々の生活に溶け込ませる」というマーケティング戦略を色濃く反映しています。単なるブランドのおまけではなく、一つの世代のプレイヤーたちの生活体験に影響を与えた、文化的なアイコンとも言える存在なのです。
レトロブーム到来! 扇風機も今や伝説の逸品に
近年のレトロブームの盛り上がりとともに、ファミコンカセットからキャラクター文具まで、任天堂の懐かしいグッズを収集するファンが急増しています。そんな中、このシーリングファンも、まるでテーマカフェに飾られているような、おしゃれなインテリアアイテムとして再評価されているのです。
このシーリングファンの存在は、任天堂が単なるゲーム会社ではないことを改めて教えてくれます。同社は記憶を創造し、キャラクターを画面の中だけでなく、生活のあらゆる場面に浸透させる術を知っているのです。たとえそれが一台の扇風機であっても、そこには子供時代の夏の思い出や、キャラクターたちと過ごした時間、そしてブラウン管の前で感じた純粋な楽しさが詰まっているのかもしれません。
via: Oddee The Retroist