KADOKAWA、「なろう系・異世界ジャンルへの過度な偏り」を反省。出版事業の利益激減を受け構造改革へ

KADOKAWAは5月14日、2026年3月期の通期決算を発表し、連結営業利益が前期の89億円から40億円へと半減したことを明らかにしました。特に主力の出版事業は、前期の32億円の黒字から一転、10億円の営業赤字に転落するという厳しい結果となりました。

同社はこの要因について、特定のジャンル、特に「小説家になろう」発の作品や異世界ものに過度に集中した結果、企業としての収益化が困難になったと分析しています。

KADOKAWAは決算資料の中で、収益悪化の原因の一つとして「既存の成功パターンへの過度な依存」を明確に指摘。長年にわたり実績のある「小説家になろう」系や異世界ジャンルに偏重した結果、市場が飽和状態に陥り、企画もテンプレ化が進んだことで、作品の新鮮味や挑戦的な試みが失われていったと説明しています。

さらに、編集者の増員や刊行点数の増加といった積極策も、多くの作品でクオリティや新規性が伴わなかったためにヒット作の創出には繋がらず、かえって1作品あたりの販売部数が減少する結果を招いたとしています。

( ※「小説家になろう」は、誰でも無料で小説を投稿・閲覧できる日本最大級の小説投稿サイト。『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』、『転生したらスライムだった件』、『Re:ゼロから始める異世界生活』など、数多くの人気作がここから生まれています。)

KADOKAWAはその他にも、宣伝・販促リソースの分散、製造・物流コストの上昇、そして販売価格へのコスト転嫁が不十分であったことなどが利益を圧迫したと述べています。これらの課題に対処するため、同社は2025年11月に「出版事業運営会議」を設置し、体制の再構築を進めています。

この会議は、編集、営業、宣伝、製造といった各部門の責任者が参加する横断的な組織で、出版事業の構造改革を推進する役割を担います。また、KADOKAWAは2026年1月と4月に出版部門の組織再編も実施。ジャンルごとの組織を見直すことで、意思決定の迅速化と効率的な組織運営を目指すとしています。

今後の改革の方向性として、KADOKAWAは「構造改革のモデルケース」となる作品を挙げています。例えば、「マンガ大賞2026」を受賞した『本なら売るほど』や、直木賞作家による小説『熱柿』など、あえて異世界ジャンルのトレンドから距離を置いた作品をプッシュし、より多様なジャンルの開拓を目指す方針です。

一方、アニメ事業と実写映像事業も苦戦を強いられており、4億6500万円の営業損失を計上し、赤字に転落しました。

同社は、収益を牽引するメガヒット作品が不足したことに加え、アニメスタジオへの投資や制作体制の拡充によるコスト増が響いたと指摘。また、前期の『【推しの子】』のような大型作品が生み出した高収益の反動減も、業績に影響を与えたと分析しています。

今後のアニメ事業については、既存の人気シリーズに加え、2026年3月期に放送された新作アニメの続編制作などを積極的に進め、作品ラインナップの充実を図るとしています。同時に、自社アニメスタジオの制作能力拡大や、グループ内での連携強化も計画しているとのことです。

実写映像事業では、引き続き大型作品に挑戦しつつ、自社原作の実写映画化を軸に展開していく方針です。ただし、KADOKAWAは事業基盤の再構築を優先するため、今後2年間は利益が低迷する可能性があると認め、その後の安定的な収益化を目指すとしています。

また、今回の決算では、前回の中期経営計画が未達に終わったことも明らかにされました。これを受け、KADOKAWAは2027年3月期から2032年3月期までを対象とする新たな中期経営計画を策定しています。

新計画では、最初の2年間(2027~2028年)を「構造改革期」と位置づけ、作品ポートフォリオの見直しやコストの最適化に注力。その後、「収益成長期」、「収益拡大期」へと移行し、出版・IP創出セグメントにおいて、2026年3月期を底として2032年3月期までに年平均24.7%の営業利益成長率を達成することを目指すとしています。


via: KADOKAWAグループ ポータルサイト