去る6月、『はたらく細胞』の作者である清水茜先生が自身のXにて、連載中に複数の病気や家庭の不幸が重なり、心身ともに極限状態にあったことを告白し、大きな注目を集めました。
そして先日、新たに『はたらく細胞』連載当時、出版元である講談社の担当編集者から十分なサポートを受けられず、約束されていた監修体制も機能していなかったという不誠実な対応を明かし、その結果自殺を考えるほどに追い詰められていたと告白しました。これを受け、講談社は本日(7月3日)、公式サイトにて声明を発表し、作者である清水茜先生に対して当時のサポート不足や業務上の不手際があったことを認め、正式に謝罪しました。

清水先生はまず、今回の件が以前告白した性被害とは全く別の問題であると強調しています。
投稿によると、2014年に『はたらく細胞』の連載が始まる前後、担当編集者のA氏から「作品には医療監修が入ります」と説明があったとのこと。清水先生は、専門家による修正が入ることを前提に執筆を開始しました。しかし、単行本発売が近づいても監修者からの修正指示は一切なく、編集者に何度も確認しても「対応します」との返答ばかりだったそうです。

そして2015年、『はたらく細胞』単行本第1巻が発売された際、書中には医療監修者の名前はどこにも記載されておらず、内容には多くの間違いが含まれていました。当時、読者からも多数の指摘が寄せられたため、改めてA氏に説明と医療監修体制の改善を求めました。しかし、A氏からは「どうせ漫画なんだから、適当に描けばいいんですよ」という信じられない言葉が返ってきたといい、改善要求は拒絶されたとのことです。
作品が急速に人気を集めるにつれ、作者への誹謗中傷も増加し、清水先生は極度の精神的ストレスに晒されることになりました。その結果、抜毛症(トリコチロマニア)を発症してしまったといいます。
連載期間中、清水先生は自費で大量の医学書を購入し、資料を調べながら執筆を続けるしかなかったそうです。それでもなお、作中の間違いは修正されないまま掲載され続け、監修者からのフィードバックは一切ありませんでした。

さらに、編集部からアシスタントを紹介されることは一度もなかったといいます。最終的に、母校の専門学校の同級生数名にアシスタントを依頼したものの、その中には「私にはできないのでやりません」「やれることがないなら帰ります」といった理由で、背景やトーン、集中線、効果文字などの作画作業を拒否する人もいたそうです。
結局、清水先生と協力的な数名のアシスタントだけで徹夜作業をこなし、なんとか連載を続けていたとのことです。

2016年の連載中、読者から「絵が雑になった。アシスタントに任せすぎでは?」という批判が届いたそうですが、実情は全くの逆でした。清水先生が2度目にA氏へプロのアシスタント募集を依頼したところ、「なんでも人のせいにする性格をまず直すべき」と、人格や生い立ちの問題にすり替えられ、協力を拒否されたといいます。
医療監修体制の改善についても尋ねたところ、「まだ怒ってるんですか?しつこいですね」とあしらわれてしまったとのこと。正常なサポートが全く得られない状況に絶望し、一時は自殺も考えたと告白しています。
翌2017年にも再度、編集部に監修体制の改善を要求し、当時は「改善します」との約束を得たものの、結局何も変わることはありませんでした。

2018年、アニメ化を目前に控えた時期に、4度目となる監修体制の改善を編集部に要求。A氏から「どうすれば満足するんですか?」と言われ、ようやく話し合いの場が設けられました。会議では自身の不満を伝え、今後は掲載前に修正可能な段階で監修意見を共有してほしいと求めました。その場で「改善します」「申し訳ありませんでした」との言葉はあったものの、やはり状況は変わらなかったそうです。
編集部から紹介されたのはプロのアシスタントではなく漫画家志望の新人だったため、背景作画の人手不足といった根本的な問題は解決せず、アシスタントたちも制作体制に不信感を募らせていきました。その後、3度目のプロアシスタント募集を依頼しましたが、A氏からは「君は誰と組んでも同じ結果になると思う」と拒絶されました。
長期シリーズの最終回原稿を描いていた際には、A氏から突然「監修の先生がこの展開にNGを出しているので、こういう話に変えてください」と指示が。しかし、具体的な監修内容や医学的根拠は示されず、一方的なストーリー変更を求められただけでした。修正のタイミングと内容について意見したところ、A氏から電話で「あなたに話を畳む能力なんてない。やることなすこと、全部蛇足なんだよ」と罵倒されたといいます。
この一件の後、清水先生は手が動かなくなり、うつ病と診断され、休載せざるを得ない状況に追い込まれました。

2018年の休載中、5度目の監修体制改善と4度目のプロアシスタント募集を要求するとともに、「私の人格が期待に沿えないようなので、これ以上続けるより連載を終了させてほしい」と編集部に伝えました。
Xで公表された休載理由は「連載体制の準備のため」でしたが、『月刊少年シリウス』の編集長とA氏は、その原因を「漫画家としての経験不足によるネタ切れ」と捉え、「遊んで経験を積む必要がある」として休載を決定。清水先生が再三訴えてきた監修体制の問題は無視された形です。
当時、清水先生は「話が通じない」と感じ、「他のスピンオフ作家さんたちはきちんと対応してもらえているのに、私だけが不当な扱いを受けている」と思い詰めていたそうです。そしてついに、延長コードで輪を作り、クローゼットのポールに掛けて首を吊ろうとしました。
その後はA氏の要求を受け入れざるを得ず、「アシスタントがついてきてくれるような大人に成長しなければ」と考えるようになったといいます。アシスタント向けの教材提供や住居提供なども提案しましたが、全て拒否されました。一方、アシスタント側は「清水先生は編集部と仲が悪いから頼れない」と考えるようになり、現場の環境はさらに悪化していきました。

2021年、編集部から監修体制の改善に関する連絡が一切ないため、作品を終わらせることだけを目的に連載を再開。再開後まもなく、細胞名を丸々1話間違えたまま執筆してしまったにもかかわらず、掲載直前まで誰からも修正指示がなかったそうです。これにより、編集部に監修体制を改善する意思がないことを確信し、早期の連載終了を申し出ました。
A氏はストーリー修正の際、「長くなってもいいからこのまま描いて」と指示したかと思えば、後になって「やっぱり長すぎるから20ページくらい削って描き直して」と要求することもあったとのこと。最終的に、長年の心身の負担が限界に達し、『はたらく細胞』の連載は終了を迎えました。

最後に、2023年に編集部との協力関係終了を申し出た後、『はたらく細胞』のスピンオフ作品において、本来「原作:清水茜」と表記されるべき箇所が、本人の同意なく「協力:清水プロダクション」に変更されていたことを明かしました。
さらに2026年になって、2019年に出版された『はたらく細胞ずかん』から、自身の名前が完全に削除されていることを発見。代わりに、表紙や奥付などの目立つ場所には「シリウス編集部」の名前が記載されていました。
関係者に確認したところ、「清水先生が医療監修に不満を持っていたため、もし内容に間違いがあった場合に先生に迷惑がかからないよう、名前を削除する配慮をした」という趣旨の説明を受けたそうです。

この3日間にわたる清水先生の一連の告白を受け、講談社は本日、公式サイトにて謝罪声明を迅速に発表しました。
講談社は、「2026年7月1日から3日にかけ、弊社刊行の『はたらく細胞』の著者・清水茜氏より、Xにおいて、同作の連載中(休載期間を含む)の医療監修・作画体制、当時の担当編集者の対応、連載終了後の派生作品における著者クレジットをめぐる問題についてご指摘がございました」と経緯を説明。
声明では、清水先生から連載中に創作環境の改善要求が複数回あったにもかかわらず、編集部が医療監修体制を十分に構築できず、アシスタントの手配など然るべき作画協力も行えなかったことを認めています。
また、連載終了後に出版された一部のスピンオフ作品やアニメ関連の刊行物において、クレジット表記が作者の事前確認なしに行われていたことにも言及。「編集部の管理体制の不備と不適切な対応により、清水先生に多大なご負担とご心痛をおかけしたことを、重ねて深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。

当該の担当編集者は現在、清水先生の担当を外れていますが、今回の問題は編集者個人の問題ではなく、編集部全体の管理・監督体制の不備によるものだと説明。会社および編集部として重く受け止めているとしています。清水先生の投稿にもある通り、現在も関係部署が誠実に協議を続けており、過去の問題の解決に努めているとのことです。
同時に、現在の清水先生への創作支援体制や新企画の推進については、先生の意向を尊重した良好な協力関係が築けていることも確認したとしています。講談社は現在、すべての漫画家が安心して創作に臨める体制の整備と、心理的安全性の高い環境づくりを進めていると述べ、「シリウス編集部としましても、作家の皆様へのサポート体制をより一層強化してまいります」と締めくくっています。
最後に、「改めまして、清水茜先生、ならびに読者の皆様、関係者の皆様に、多大なるご心配とご迷惑をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます」と、重ねて謝罪の意を示しました。

講談社の声明発表を受け、清水先生も自身のXを更新。「この度、編集部様から正式な謝罪文を頂戴いたしましたので、ご報告させていただきます」と投稿しました。続けて、「今回の投稿に対し、真摯にご対応くださいました関係者の皆様に、心より御礼申し上げます」と感謝を述べています。
また、一連の投稿で心配をかけた読者に対しても「深くお詫び申し上げます」と謝罪。講談社とは現在も協議を続けているため、冷静に対応していくとしています。
via: 講談社 X@ 清水茜|イエローフレイム