アニメーション監督・細田守さんが手がけた映画『竜とそばかすの姫』。ヴェネツィア国際映画祭での初上映では賛否が分かれ、2021年の日本公開後もSNSでは「酷評の嵐」状態。興行収入も残念ながら振るわない結果となりました。
そんな細田監督の「創作の原点」に迫る展覧会「細田守の原点展」が現在開催中。これに合わせて、メディア「集英社オンライン」のインタビューに応じ、これまでの創作活動を振り返るとともに、『竜とそばかすの姫』の興行不振、そして脚本家・奥寺佐渡子さんとのタッグが『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』以降途絶えた理由についても語っています。

細田監督によると、高校時代にはすでに東映アニメーションの『少年ケニヤ』(1984年)のアニメーター募集に、自作アニメを応募していたそう。かなりダークな作風だったものの、見事選出。しかし、当時はまだ学生だったため、結局は立ち消えになってしまったとか。
金沢美術工芸大学で油絵を専攻していた細田監督ですが、在学中は実写映画にどっぷりハマり、50本以上の作品を制作したといいます。若い頃の自分は、今よりも悲観的で反骨精神に満ちており、物事の本質を見抜くような視点を持っていたと回顧。そして、その「リアル」を描きたいという姿勢は、今も変わっていないと語っています。

細田監督は幼少期に吃音があったため、言葉への意識が非常に高かった一方で、言葉に頼らない表現方法を重視せざるを得なかったといいます。
セリフ一言で済むなら簡単。でも、絵や動き、時間を使って、感情をじっくりと観客に伝えたい。アニメーションは、魂のように目に見えないものを描くのが得意。肉眼では見えないけれど、確かに存在する感情や気配を画面で表現できる。もしかしたら、僕自身の創作の原点は「言葉にできないもの」なのかもしれませんません。
▼ 細田守監督は『時をかける少女』で、真琴が1分間走り続けるシーンを例に挙げています。

過去に数々のヒット作でタッグを組んだ脚本家・奥寺佐渡子さんについても触れています。二人は『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、そして『おおかみこどもの雨と雪』で共に高い評価を得てきました。
細田監督は、『おおかみこどもの雨と雪』を終えた後、自身に子どもが生まれ、家庭や親子関係といったテーマに深く向き合うようになったと語ります。このあたりの価値観は人それぞれで、奥寺さんに自分の個人的な執筆意図を背負わせたくなかった。それが、その後タッグを組まなくなった理由だと明かしています。

細田監督は近年の挫折についても言及。多くの人が「『竜とそばかすの姫』は大爆死だった」と思うかもしれない。でも、僕の中では、これまでの作品とすべて繋がっているんです。
「なぜ最近は強い女性ばかり描くのか?」とよく聞かれるけれど、別に女性キャラにこだわっているわけじゃない。男性キャラもたくさん描いてきた。多くの人が「細田守は変わった」と言うけれど、実は中学生の頃からずっと同じことをしている。僕は、もうダメになりそうな人が負けないでほしい、諦めないでほしいとずっと思っている。もう限界な人が、そのまま負けてしまう社会は本当に嫌なんです。

『竜とそばかすの姫』の興行成績は厳しいものだったものの、監督自身は「少なくとも無事に完成して公開できた」と語っています。それよりも、かつて参加した『ハウルの動く城』の企画から最終的に降板したことこそが、自身の人生における最大の失敗であり、心残りだと明かしました。
ネット上の批評についても、細田監督は昔から賛否両論、様々な意見に目を通してきたと告白。「見ない」とは言いつつも、今でもチェックしているとのこと。しかし、そうした意見に左右されることはなく、今回の挫折を乗り越えて、これからも作品を作り続けていくと力強く語っています。
via: 集英社オンライン