『おやすみプンプン』浅野いにお先生、AI活用に肯定的も「漫画家はAIを使えない」風潮で『MUJINA INTO THE DEEP』を休載中と明かす

『おやすみプンプン』や『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』などの作品で知られる漫画家の浅野いにお先生が、アーティストの落合陽一さんがホストを務めるトーク番組『WEEKLY OCHIAI』にゲスト出演しました。

番組内では、Unreal EngineとBlenderを駆使した漫画制作の手法や、生成AIの漫画業界での活用について言及。現在の漫画業界のAIに対する姿勢に戸惑いを感じており、AIが作業の一部を効率化できるのは確かだと述べました。この発言は海外でも注目を集め、SNSでは賛否両論の意見が飛び交っています。

今年初めから休載が続いている作品『MUJINA INTO THE DEEP』について、浅野先生は体調不良に加えて、現在の漫画業界のAIに対する姿勢も一因であると語りました。

実は、同作の背景の9割以上は、先生自らがUnreal EngineとBlenderを駆使して制作したものだそうです。市販のアセットも活用しつつ、イメージに合うものがなければ自ら3Dモデリングを行うという徹底ぶり。3Dで自由に背景を構築する実験的な作品に挑戦したかった、という思いがあったようです。

司会者から、AIを使えば広大なオープンワールドのモデリングや素材配置を効率化できるのでは、と問われると、浅野先生は「技術的には可能ですが、一番の問題は、どこまでAIを使っていいのかということです」と回答。

続けて、「まだ出版社が『AIを使っていい』と公言できない状況なんです。今の状況はすごく変で、むしろプロの漫画家だからAIを使っちゃいけない、みたいな空気がある」と、業界の現状に対するもどかしさを吐露しました。

さらに、こうも語っています。

「現状では、漫画家はAIを使えない。でも、AIを使えばクオリティが格段に上がるのは事実。だとしたら、今は描かない方がいいんじゃないか? 来年には急にAIが解禁されるかもしれないし、それならその時に描き始めた方がいい。そんな気持ちで、今は待機している状態です」

今後、どの程度AIを導入するかは明言しませんでしたが、AIによってモデリング作業が大幅にスピードアップすることは確実だと語ります。休載中の現在もAIの研究に時間を費やし、自身にとって最適な活用法を模索しているとのことです。

▼ 浅野いにお先生が出演したトーク番組『WEEKLY OCHIAI』のアーカイブ映像

また、浅野先生は今年3月に出演した別番組【Blender Fes SELECTION】でも、Unreal EngineとBlenderを使った制作工程を実演しています。

先生にとって、特に背景制作においてこれらのツールは作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、思い描く壮大な「オープンワールド」をしっかりと構築し、その世界で物語を自然に展開させるための重要な手法となっているようです。

▼ 【Blender Fes SELECTION】浅野いにお先生のインタビュー映像

しかし、こうした浅野先生の発言に対し、海外のネットユーザーからは「AIの使用は芸術の本質を損なう」「AIに頼るのではなくアシスタントを増やすなど別の方法を考えるべき」といった否定的な意見も少なくありません。

一方、国内のネット上では「AI研究のために休載するなんて、まるでLLMに職を奪われた人の思考(笑)」といった、ユーモラスなツッコミも見られました。

「本末転倒では?」「研究に時間をかけるなら、その分、創作に時間を費やしては?」といった声も上がっているようです。

その一方で、休載中の『MUJINA INTO THE DEEP』はフランスで開催されたJapan EXPOの「Daruma Awards 2026」にて、最優秀漫画賞と最優秀作画賞をダブル受賞しており、浅野先生の画力と創作活動が高く評価されていることも事実です。

実は、最近『HUNTER×HUNTER』の作者である冨樫義博先生も、週刊連載の巻末コメントで「僕が描いた絵だけをAIに学習させてネーム(コマ割り)を描かせたら、それは僕の原稿と言えるのだろうか?」と問いかけており、漫画界におけるAIの立ち位置について、多くの人が考えさせられるきっかけとなっています。

AIをめぐる問題は、イラストや漫画、ゲーム業界で近年、常に議論の的となってきました。浅野先生のようなベテラン漫画家の画力に疑いの余地はありませんが、彼らがAIによる創作補助を口にするとき、私たちはその背景にある考えや理由を、どう受け止めるべきなのでしょうか。