今や「引きこもり」や「ニート」といった言葉はすっかり定着しちゃいましたよね。外との交流を避け、ネットやスマホゲームで時間を潰すことが多い彼らですが、果たしてネットでの代替交流が、リアルな社交に繋がるかっていうと……どうなんでしょう?
そんな疑問に一石を投じる研究が、奈良先端科学技術大学院大学などの研究チームから発表されました。このほど学術誌『PLOS ONE』に掲載された「Social marginalization risk and its negative association with socialising preferences in Japanese gamers」と題した論文によると、引きこもりやニートといった社会的に孤立するリスクを抱える人々は、オンラインゲームのバーチャル世界にいても、他のプレイヤーとの交流をあまり好まず、助け合いにも消極的であることが明らかになったそうです。

社会的に孤立するリスクがある人にとって、現実世界での人付き合いは、とてつもない心理的プレッシャーを伴うことが多いのは、想像に難くないですよね。だからこそ、これまで「もしかしたら」と期待されてきたのが、オンラインゲームの匿名性や物理的な距離に縛られない特性です。これが、彼らにとって安全に他人と交流する練習の場となり、ひいては社会復帰への足がかりになるのではないか、と考えられてきました。
しかし、ここで疑問が浮かびますよね。「現実で人との交流を避けている人が、ゲームの世界に行ったら急に積極的に交流するようになるものなの?」って。

この疑問を解明するため、今回、研究チームは日本人ゲーマー587名を対象に調査を実施。社会的孤立リスクと、ゲーマーが好むプレイスタイルの関連性を分析しました。
その結果、社会的孤立リスク(NHR)が高い人ほど、ゲーム内でも他のプレイヤーとの交流を好まず、助け合いにも消極的であることが判明! 年齢や性別といった要因を除外しても、社会的孤立リスクとゲームのソーシャル機能への興味の薄さには、はっきりとした関連性が見られたとのことです。うーん、やっぱりそうなのか……。

さらに、こういったプレイヤーは高難度コンテンツへの挑戦や、創造性・自己表現を重視するプレイスタイルをあまり好まず、外的な報酬によってモチベーションが上がることも少ないそうです。これは、従来のゲームでよく使われる報酬制度や高難度ミッションが、彼らの参加意欲を高めるどころか、かえって興味を失わせ、離脱を促してしまう可能性を示唆しています。まさかの逆効果!?
つまり、現実世界で人との関係を避ける傾向にある人は、バーチャルなゲーム世界でも同じようなプレイスタイルを好む、ということですね。だからこそ、もしゲームが社会的に引きこもりがちな人々の社交能力再構築の「第一歩」となることを目指すなら、ゲーム開発者は、彼らが自己表現をためらいがちであることや、その特別な心理的ニーズ、そしてプレイ動機を十分に考慮した、安全で低ストレスなゲーム環境を構築する必要がある、と研究チームは提言しています。

研究チームは、この現象がゲームそのものへの興味の欠如を意味するわけではなく、むしろ自分の心理状態を守るための積極的な対処戦略である可能性を指摘しています。オンラインゲームでは、罵倒されたり、ミスを責められたり、時には心ない言葉を浴びせられることも少なくありません。そのため、彼らは再び傷つくことを避けるために、あえて一人でプレイする道を選び、比較的安全な環境でゲームを楽しんでいるのかもしれません。ソロ専は自己防衛だった……?
というわけで、「ゲームで社会復帰」という話は、現実の状況に対しては限定的な助けにしかならないどころか、社会的孤立リスクが高い人々が満足し、心を開けるような「適切なゲーム」を選ばなければ、ゲームが社交意欲を高める効果を真に発揮することは難しい、という結論に至っています。ゲームでみんなとワイワイ!……は、ちょっと難しいのかもしれませんね。
via: itmedia