VTuber事務所ホロライブプロダクションに所属するタレントは、その多くが「アイドル」として活動しています。ライブでの歌やダンス、ファンとの交流など、アイドル路線を徹底することで「箱推し」と呼ばれるファン文化を生み出し、ホロライブ全体が巨大なファンコミュニティを形成するに至りました。
そんな中、hololive DEV_IS所属のVTuberグループ『ReGLOSS』のメンバーである一条莉々華さんが、自身の配信で結婚という、アイドル文化において最もデリケートな話題のひとつに言及しました。彼女は、「将来もし結婚したとしても、VTuber活動を辞めることは絶対にない」と断言。この発言は、VTuberという存在がこの問題にどう向き合うべきか、国内外のファンの間で大きな議論を巻き起こしています。
VTuberとアイドルを同一視すべきかについては議論の余地がありますが、VTuberのファンコミュニティには、いわゆる「ユニコーン」と呼ばれる層が存在します。これは「自分の“推し”が異性と交流することを受け入れられない」過激なファンのことを指す言葉です。従来のアイドルファン文化から生まれたこの言葉は、強い独占欲を伴い、推しの異性との交流を極端に嫌い、時にはアンチに転じてしまうファンもいるのが実情です。

配信の中で、一条さんは「今、付き合っている人はいない」とすぐに明言しました。しかしその上で、「アイドル像を守るためにプライベートを隠すのはすごく嫌だ」と強調し、「ファンに対しては正直でいたい」と、ありのままの自分でいることを選びたいと語りました。さらに彼女はファンに向けて、「もし将来私が結婚したら、その事実を知りたい? それとも何も知らずに“幻想”の中に居続けたい?」とストレートな問いを投げかけました。
この一連の発言は、アイドル業界に根強く残る「結婚はタブー」という暗黙のルールへの挑戦と受け止められています。あくまで独身というイメージを守ろうとするのではなく、よりオープンで誠実な姿勢でファンと向き合おうとする彼女のスタイルは、VTuberやアイドル文化の中では非常に珍しいものと言えるでしょう。


この発言はもちろん、ファンの間で大きな議論を呼びました。彼女のストレートな姿勢を支持する声は多く、「VTuberやアイドルが『ユニコーン』に配慮して異性との交流まで制限されるなんて馬鹿げてる」「正直に話してくれるなら、結婚詐欺とかすぐ離婚とかじゃなければ祝福したい」といった意見が見られます。

また、「ホロライブのメンバーもデビューから何年も経って、適齢期の人も多い。結婚するのは自然なことなのに、『恋愛するな』とか『結婚するな』とか束縛するのは気持ち悪い」といった声も上がっています。

一方で、「結婚を発表すれば、それを受け入れられずに離れていくファンが必ず出てくるのは事実。それはリアルのアイドルも同じで、結婚や出産をするなら、その覚悟は必要だろう」という冷静な意見もありました。

この話題は海外にも広がり、スペイン語圏のアニメ情報アカウント「AnimeTrends」が「VTuberがアイドル界の結婚タブーに挑戦」と題して投稿したことで、海外ファンの間でも議論が白熱しました。

海外のネットユーザーからは、「アイドルの恋愛禁止なんて、日本特有の奇妙な文化だよね。昔のアイドルから今のVTuberまで、なんでそんな考え方があるのか理解できない」といったコメントが寄せられています。

日本のファンからは、「日本のアイドル活動では、事務所が恋愛や結婚を許さないのが長年の慣習。特に女性アイドルは、それが理由で引退を選ぶことが多い」といった背景を説明する声もありました。

こうした状況に対し、個人勢として活動し、海外にも多くのファンを持つVTuberの乙夏れいさんも自身の考えを投稿。彼女は未婚のシングルマザーであることを公表して活動しています。
過去にアイドルとして活動していた時期には、子供がいることを隠すように言われていたという乙夏さん。しかしVTuberになってからは、自身の人生の一部を隠すことをやめたと語ります。「配信を続けるうちに、ありのままの私を応援してくれる人が増えていきました」。
そして、「この業界で長年『タブー』とされてきたことが、いつか当たり前に受け入れられるようになってほしいと願いながら、活動を続けていきたいです」と述べ、自身の経験が同じような境遇のVTuberの励みになれば、と続けました。「本当の自分を隠して活動を諦めるより、好きなことを続けている姿を見たいと願ってくれる人はたくさんいるはずです」。

もちろん、こうしたアイドルのタブーがVTuber業界に持ち込まれる現象は、これまでにもありました。しかし、大手事務所がアイドル路線でタレントをプロデュースする場合、この問題は避けられません。
とはいえ、今年『にじさんじ』所属のVTuber北小路ヒスイさんが婚約を発表し、多くのファンから祝福されたことは記憶に新しく、運営元のANYCOLOR株式会社がタレントのプライベートを尊重する姿勢を示した好例と言えます。今後、ホロライブで同様のケースが起こった場合、運営であるカバー株式会社がどのような対応を見せるのか、注目が集まります。