8月15日・16日に東京ビッグサイトで開催された日本最大級の同人誌即売会「コミックマーケット」(コミケ、C108)。2日間で約30万人が来場し、多種多様な同人作品が集結しました。
そんな中、ある一冊の同人誌が大きな話題を呼んでいます。それは、現役の糖尿病専門医が自ら執筆したという『糖尿病専門医が解説!大食い大好き!望月さん』。医学的な見地から作中の描写を例に挙げ、食と健康についてよりリアルな視点で考えるきっかけを与えてくれる一冊です。このユニークな試みは多くのネットユーザーの注目を集め、「まさかあの話題作を題材に健康本が出るとは!」と驚きの声が上がっています。

原作の『大食い大好き!望月さん』は、まるよのかもめ先生が白泉社の『ヤングアニマル』で2024年5月から連載を開始した作品。一見するとほのぼのグルメ漫画のようですが、ストレスフルな社会で生きる主人公「望月美琴」が、「過剰なカロリー摂取で、直接、幸福の向こう側へ」という唯一無二のコンセプトで絶頂の快感を得る姿が描かれています。
その常軌を逸した食べっぷりは過去の漫画作品でも類を見ず、連載初期から大きな注目を集めました。SNSでも度々トレンド入りし、「次にくるマンга大賞」にもノミネート。そして今年8月には、待望のアニメ化も発表されました。


この同人誌のサークルスペースはニコニコニュースの取材も受けており、執筆者である医師ご本人はインタビューに対し、「この本は“暴食は絶対ダメ”というスタンスで書いたものではありません」と語っています。あくまで、より現実的な視点で食と健康について考えてもらうことが目的なのだとか。
さらに、オタクにとって身近なコミケを例に挙げ、「脳梗塞にでもなったら、コミケの行列に並べなくなってしまいます。皆さんには長く健康に生きて、人生を思いっきり楽しんでほしい」と健康維持の大切さを力説。また、生活習慣病については「実は遺伝的要因が非常に大きい」とも指摘しています。
つまり、健康問題を単純に「食べ過ぎ」や「不摂生」のせいにするのではなく、遺伝や食生活、ライフスタイルといった多角的な視点から理解を深めることを、この解説書は目指しているのです。
この『糖尿病専門医が解説!大食い大好き!望月さん』、実は昨年すでに第1弾が発行されており、今回は健康をテーマにした第2弾。スペースでは他にも健康関連の同人誌が並び、コミケに集う人々の健康、特に生活習慣への意識を高めたいという思いが伝わってきます。


その内容は非常に充実しており、様々な食事療法の解説から、どのような食べ方がリスクを生むのかといった、日々の生活に直結する問題まで鋭く切り込んでいます。


興味深いことに、この本には『望月さん』のイラストは一切登場しません。解説役のキャラクターは、なんと作者ご本人が担当P(プロデューサー)であるという『アイドルマスター シンデレラガールズ』の矢口美羽ちゃんをモデルにしているのだとか……。まさかの同業者(P)でしたか(笑)。
実は、この同人活動を始めた真の目的は、担当アイドルである矢口美羽ちゃんの知名度を上げることだったそうです。そのために、約2年もの歳月をかけてこの本を執筆したとのこと。現在開催中の『シンデレラガール総選挙』でトップ10入りすれば、CDデビューや様々な特典が待っています。しかし、美羽ちゃんにはまだボイスが実装されていません。「ぜひ応援してほしい」とのことでした(笑)。


さて、このような専門的な内容の同人誌は、一般的な二次創作と比べて頒布が難しいのでは?と思うかもしれません。作者の方も「新刊・既刊あわせて最終的に600部が残りました」と語っていますが……なんと、搬入数は合計6,000部! つまり、5,400部も売れた計算になります。これはとんでもない数字ですよ…!

▼ C108で頒布された『大食い大好き!望月さん』解説書。新刊・既刊あわせて6,000部を搬入したとのこと。
アニメやゲームの二次創作だけでなく、こうした専門知識を活かしたユニークな作品に出会えるのも、コミケの懐の深さ。多くの人が足を止め、手に取っていく光景は、同人文化の多様性を象徴しているようでした。
via: X@ U-4