「女性の身体のどの部分に最も魅力を感じる?」――時折こんな話題で盛り上がることがありますが、その中でも定番なのが「胸か、お尻か」という究極(?)の二択。もちろん、人の魅力が身体の一部分だけで決まるわけではありません。しかし、「女性の体型におけるどのような特徴が魅力の評価に強く影響するのか」は、心理学の分野で長年研究されてきたテーマでもあります。
このほど、和洋女子大学の鈴木智大教授らの研究チームが、和歌山人間科学研究開発センターと共同で、日本人女性の実測データをもとに体型を再現し、日本人成人男性が女性の体型のどのような特徴に魅力を感じるのかを調査しました。研究成果は日本心理学会の学術誌『Japanese Psychological Research』に掲載され、最近ではXでも注目を集めています。

この研究「Influence of Waist-to-Hip Ratio and Waist-to-Bust Ratio on Attractiveness of the Female Body Among Japanese: Using Figural Stimuli Based on Objective Measurements」では、これまで女性の体型と魅力の関係を調べる際、特に腰とヒップの比率が注目されてきたことを指摘しています。その代表的な指標が「ウエスト・ヒップ比(waist-to-hip ratio:WHR)」です。WHRは「ウエスト÷ヒップ」で算出され、数値が小さいほどヒップに対してウエストが細いことを意味します。
今回の研究ではWHRに加えて、「ウエスト・バスト比(waist-to-bust ratio:WBR)」も検証されました。WBRは「ウエスト÷バスト」で算出され、数値が小さいほどウエストに対してバストが大きいことを意味します。研究チームはWHRとWBRをそれぞれ0.6、0.7、0.8、0.9の4段階に設定し、計16種類の女性の体型図を作成しました。
分析の結果、WHRと外見的魅力や性的魅力との関連は非常に小さい一方、WBRについては外見的魅力、性的魅力の双方と明確な関連が確認されました。つまり、日本人女性の実測データをもとに作成した体型を日本人成人男性が評価した今回の実験では、ウエストとヒップの比率よりも、ウエストとバストの比率のほうが魅力評価を大きく左右したことになります。


WHRを変化させた場合にも統計的な差は確認されたものの、その差は非常に小さく、研究チームは実質的な影響はほとんど無視できるレベルだとしています。つまり今回の実験条件では、ウエストとヒップの比率を変えても、日本人男性が感じる魅力はほとんど変化しなかったということです。
一方、WBRでははっきりとした差が現れました。WBRが0.6~0.7の体型は比較的高い評価を受け、0.8、0.9と数値が高くなるにつれて、外見的魅力と性的魅力の評価はいずれも低下していきました。
言い換えれば、日本人女性の実測データをもとに体型を作り、日本人成人男性に評価してもらった今回の実験では、ウエストとヒップの比率よりも、ウエストとバストの比率のほうが魅力評価に強く影響したという結果になりました。

今回高い評価を得たWBR 0.6を、仮にウエスト65cmとして計算すると、バストは約108cmになります。研究者によると、このような体型の女性は日本では実際にはかなり珍しいとのこと。つまり、男性が単純に「日常生活でよく目にする体型」を最も魅力的だと評価しているわけではないことになります。
そこで研究者らは、テレビや広告、フィクション作品など、日常的に接するメディアに登場する女性の体型が、「魅力的な体型」に対する基準に影響を与えている可能性も指摘しています。この日本独自ともいえる傾向に、ネット上では「アニメの影響だったりする?」との声も。さらには「全部『ONE PIECE』のおかげでは」と冗談を飛ばすユーザーまで現れました。
ただし、この研究では参加者が普段どのようなメディアに接しているのかまでは調査されていません。そのため、WBRへの好みがメディアによって形成されたと現時点で断定することはできず、あくまで今後検証されるべき仮説のひとつです。
こうした日本人男性の結果は、海外で行われた別の研究と比べても興味深い違いを見せています。ほぼ同時期に発表されたノルウェーの研究「Buttocks or Breasts? Identifying Latent Subgroups in Male Preferences for Female Bodily Features」では、男性参加者がパートナーを評価する際の重要度について、バストは平均3.37点、ヒップは3.91点となり、ヒップのほうがより重視される結果となりました。
さらに潜在プロファイル分析を行ったところ、53%はバストとヒップの双方を非常に重視するグループに分類され、18%は明確な「お尻派」と呼べるグループに分類されました。一方で、バストだけを特に重視する独立した「胸派」のグループは確認されませんでした。研究では分析方法を変えても「ヒップをより重視する」グループが繰り返し現れたことから、比較的安定した傾向だと考えられています。

とはいえ、日本のネット上ではやはり意見が真っ二つ。「お尻派」と「胸派」、それぞれが譲れないこだわりを主張しています。


さらに「二次元の影響を考えるなら、太もも派も忘れてはいけない」と第三勢力まで参戦。確かにこれもまた、キャラクターの魅力を語るうえでは定番の“属性”かもしれません。

「胸とお尻、どちらが好きなのか」なんて研究する意味があるの?と思う人もいるかもしれません。しかし世界各国で以前から関連研究が続けられていることからも分かるように、身体的魅力がどのように評価されるのかは、心理学で長年扱われてきた研究テーマのひとつです。
もちろん、好みは国や文化によって違うだけでなく、時代によって美意識そのものが変化する可能性もあります。「お尻派」か「胸派」か、それとも将来さらに新たな派閥が加わるのか――この論争、どうやら永遠に決着しそうにありません(笑)。
via: ナゾロジー