小島秀夫、ソニーの『Physint』撤退内幕を初告白!スタジオ倒産の危機、Xboxが救いの手 コジプロはBloomberg報道に反論

小島秀夫率いる「コジマプロダクション」は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(Sony Interactive Entertainment、SIE)とアクション・エスピオナージゲーム『Physint』を共同開発していた。ところがPlayStationが突如プロジェクトから撤退し、Xboxが新たなパブリッシャーを務めることになった。

それから数日後、小島秀夫が『IGN Japan』のインタビューに応じ、2026年6月にソニーから出資打ち切りを告げられた際の状況を初めて詳しく明かした。突然の知らせに頭が「真っ白」になり、資金繰りの悪化でスタジオが倒産する可能性まで考えたという。


Zoom会議で突然の出資打ち切り、小島秀夫も「まったく予想していなかった」

小島によると、2026年6月にSIEから突然Zoom会議への参加を求められ、コジマプロダクション社長の平野真二、人材開発責任者の齊藤昭義とともに出席した。ところが会議の席でソニーから、『Physint』への開発資金を今後は提供しないと直接告げられたという。

「本当に驚きました。『今、何と言いました?』と聞き返したくらいです。あまりにもショックで、相手が何を言っているのか理解できませんでした」。近年のゲーム業界でスタジオ閉鎖やプロジェクト中止が相次いでいることは把握していたものの、『Physint』だけは「大丈夫」だと思っていたため、ソニーの決定はまったく予想していなかったという。

そのとき湧いたのは怒りではなく、会社の将来に対する不安だった。「最初に考えたのは、『自分のスタジオはどうなるんだ?』ということでした」と小島は振り返る。

独立系デベロッパーであるコジマプロダクションには、継続的に資金を提供する大手親会社が存在せず、作品ごとの契約によってスタジオ運営を維持している。当時、同社が抱えていた大型プロジェクトは『OD』と『Physint』の2本で、それに合わせて従業員数も約200人まで拡大していた。

「契約をひとつ失ったら、『Physint』を担当していたスタッフを全員解雇しなければならないのか、あるいはキャッシュフローが尽きてスタジオが倒産するのではないかと考え始めました」。事業運営と組織拡大のため銀行から融資も受けており、大型プロジェクトの突然の中止を銀行側に知られれば、深刻な事態になりかねなかったという。

さらに『Physint』では、すでに俳優のキャスティングやスキャンが始まり、複数のアーティストとも交渉を進めていた。そのため、小島は簡単に開発中止を発表する気にはなれなかった。

「彼らにゲームが中止になったとは言えませんでした。『P.T.』のときのような経験は、もう二度としたくなかったんです」



社員には知らせず企画を書き続けた小島、3日後に「新しいパートナーを探す」と約束

ソニーから出資打ち切りを告げられた後も、小島はすぐに全社員へ知らせなかった。平野真二、齊藤昭義との3人だけで情報を共有し、新たな協業先を探すことにしたという。驚くべきことに、小島が会議終了後に最初に取った行動は、自分のデスクへ戻り、『Physint』の企画を書き続けることだった。

「とても大きな出来事だったので、逆に『Physint』のコンセプトへ新しい内容を付け加えました」。その3日後、小島は『Physint』チームの責任者たちに状況を説明し、社員へ「新しいパートナーを探すから、心配しなくていい」と約束した。

スタジオ運営を維持するため、『Physint』の一部スタッフは一時的に『OD』チームへ異動したが、この出来事を理由に退職した社員はひとりもいなかった。小島はチームの士気が崩壊することすら心配していたが、翌週オフィスへ行くと、スタッフたちは意欲的に新たな提案資料を作っていたという。

「そのとき、『うわあ、うちのスタッフは本当に強いな』と思いました」

その後、小島は新たなビジネスモデルを模索し始めた。ゲームの企画書だけを持ち込み、「お金を出してもらえませんか」と頼む方法は時代遅れだと考え、『Physint』を映画、ドラマ、アニメ、コミック、音楽まで含むクロスメディアIPとして売り込むことにした。

そして最終的に小島秀夫が選んだのが、すでに『OD』で協業していたXboxだった。

「正式に『Physint』を提案すると、最初の反応は『素晴らしい企画です。こんな提案は今まで見たことがありません!』というものでした」。Xboxは資金だけでなく、技術、マーケティング、テスト面でも支援できる。何より、両社はIPの将来像について共通のビジョンを持っていたという。

「彼らが考えていたのは、ゲーム1本への出資だけではありません。映画やアニメを含むIP全体です。みんなで新しいIPを生み出し、さらに大きな規模へ育てようとしているんです」

現在も『Physint』では、世界観、脚本、ゲームシステム、AI、モデル、ビジュアル、俳優のスキャンなどに関する実験が続いている。開発が完全に止まったことは一度もなく、使用するゲームエンジンについてはまだ決まっていないという。



ソニーは現在も理由を説明せず 小島は「関係が決裂したわけではない」と強調

ソニーが突然出資を打ち切った理由について、小島は現在も詳しい説明を受けていないという。

「まったくありません。あれ以来、向こうから連絡は来ていません」。ただし、小島はソニーと口論になったわけでも、両社の間にトラブルが起きたわけでもないと強調。約30年にわたって協業してきただけに、もしこのような結末になると決まっていたのなら、もっと早く知らせてほしかったと語った。

「6月の会議でいきなり最終決定を伝えられるのではなく、もう少し早く知りたかったです」

Bloombergは以前、ソニーが『Physint』から撤退した背景には、開発スケジュールや予算、プラットフォーム戦略、さらに『DEATH STRANDING』の商業成績に対する懸念があったと報じていた。これに対し、コジマプロダクションは正式な声明を発表し、一連の主張は公式または実名の情報源に基づくものではないと強調した。

同社は現在の経営状況についても「健全で利益を上げている」と説明。『Physint』の開発はXboxとともに継続しており、PlayStationとの関係も引き続き強固だとしている。

もともとPlayStation向けだった『Physint』が、将来的にPS5で発売される可能性について、小島は明言を避けた。プラットフォーム戦略はXbox側が決定することだという。

「今の時点ではまだ分からないので、本当に何も言えません」

via: IGN Japan