『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(Spider-Man: Brand New Day)は公開後、好調な興行成績を記録した。しかし脚本家のクリス・マッケナ(Chris McKenna)がこのほど「The Bulwark」のインタビューで明かしたところによると、映画が現在の形になるまでには、何度も大幅な書き直しが行われたという。最大の問題のひとつは、ソニーが『モービウス』(Morbius)、『マダム・ウェブ』(Madame Web)、『獵人克萊文』(Kraven the Hunter)などのソニー・マーベル・ユニバース作品を立て続けに製作したことで、当初使う予定だったヴィランが次々と「奪われていった」ことだった。

マッケナによると、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』では早い段階から、ピーター・パーカーの「変容」を物語の核とするアイデアが提案されていた。しかし一度は棚上げされ、遠回りの末に再び採用されたという。チームがあらためて案を出した際には、周囲から「そのアイデア、どこから出てきたんだ?」と驚かれ、思わず「1年半前に俺たちが出した案だよ!」と言いたくなったと笑いながら振り返った。
初期案の中には、MJから自分に関する記憶を失われたピーターが、イギリス人になりすまして彼女に接近する展開もあった。トム・ホランド本人のイギリス英語をそのまま生かし、「ベン・ライリー」と名乗るというものだ。別のバージョンでは、東南アジアでギャングと戦っていたピーターがニューヨークへ戻ると、偽スパイダーマンが彼のスーツやウェブを勝手に使っているばかりか、「スパイダーマン」の名称まで商標登録していたという展開も検討された。その結果、ピーターは「デアデビル」ことマット・マードックに依頼し、法廷で争うことになる。
脚本チームを本当に悩ませたのは、ヴィランのバッティングが相次いだことだった。マッケナによれば、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の企画段階では「スポット」を登場させる案があったものの、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(Spider-Man: Across the Spider-Verse)が先に同キャラクターを採用したため断念。その後は「クレイヴン・ザ・ハンター」が街中にわなを仕掛け、ピーターを追い詰める構想を練っていたが、突然ソニーが単独映画を製作すると知らされたという。

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』では「カメレオン」の起用も検討されたが、『獵人克萊文』でも同じキャラクターが使われていた。マッケナは「本当にストレスがたまった。互いに相手の昼飯をずっと奪い合っているような感覚だった」と本音を明かしている。
その後、物語はテレパシー能力を軸とする方向へ進んだが、今度はミュータントの領域に踏み込むことになり、ディズニーによるフォックス買収後に進められていたX-MENの構想と重なってしまった。チームは「シャドウキング」の登場まで検討したものの、ドラマ『レギオン』ですでに使われていたため、またしても壁にぶつかった。
マッケナが「ジーン・グレイを使っていい」と知らされたのは、ようやく2024年9月になってからだった。『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の撮影開始まで残り約11カ月という段階で、最終的なヴィランの方向性がようやく固まったという。
via: The Bulwark