
【はじめに】
映画ファンなら、1963年に公開され、映画史に残る傑作のひとつと評されるイタリア映画『8 1/2』をご存じでしょう。映像芸術の金字塔として名高い本作に対し、香港にも「4本半」の映画を通して、映像表現と格闘アクションの頂点を極めた人物がいました。生涯そのものが映画以上にドラマチックだった、不世出のスター、ブルース・リーです。
【死は再生への序章――命を懸けたゲームとキャラクターの背景】
1973年、稀代のスターであるブルース・リーがこの世を去りました。彼が遺した「4本半」の主演映画は、世界中の映画ファンや格闘技ファンから現在も不朽の名作として愛されています。その「半本」にあたり、現代アクションの教科書とも称される一方、数々の議論を呼んだ作品こそが『死亡遊戯』です。主人公のビリー・ローは、武術アクション映画界の大スター。犯罪組織からの誘いを拒んだことで命を狙われ、周囲の人々まで危険にさらされてしまいます。事態を完全に収束させるため、ビリーは危険な賭けに打って出ます。人気絶頂にあった彼の訃報が突然世間を駆け巡りますが、その裏でビリーは邪悪な組織への反撃を計画していました。自らの命を懸けた、文字どおりの「死亡遊戯」が始まります。
【製品レビュー】
前回紹介した1/12スケール「バットマン・ザ・デバステーター」と同じく、アクションフィギュア界の新鋭INARTが送り出す注目作です。今回立体化されたのは、『死亡遊戯』でブルース・リーが演じたビリー・ロー。劇中キャラクターではありますが、ここではブルース・リーとして紹介していきます。INARTらしい高い完成度で、映画史に残る伝説的なスタイルを1/12スケールに凝縮。鮮やかなイエロー・ジャンプスーツには黒いラインが入り、足元には同じ配色のスニーカーを合わせています。1970年代当時としても際立って先鋭的だった、ブルース・リーのファッションセンスを象徴する装いです。生地の色合いや衣装のシルエット、スニーカーの造形に至るまで徹底的に再現され、ブルース・リー特有の体型を表現するために新規開発された1/12スケールの超可動素体へ落とし込まれています。特筆すべきは、衣装越しでも繊細な筋肉の付き方や身体のラインがはっきりと伝わる点です。衣装には優れた伸縮性があり、大きく脚を開いたポーズでもフィット感を損ないません。可動性能も申し分なく、人間の身体で可能な動作を幅広く再現できます。さらに、このブルース・リー素体には驚きのギミックが隠されています。ジャンプスーツは着脱できませんが、その下にあるふくらはぎ部分へ追加関節を搭載。キックポーズをより自然に決められるだけでなく、ブルース・リーならではの柔軟性と美しい身体のラインを強調できます。すでに本商品を手に入れた方は、ぜひ実際に動かして確認してみてください。ヘッドパーツは通常表情と、戦闘へ集中したアクション表情の2種類が付属します。ファンにとって最も気になる顔の再現度についても、ブルース・リーのファンである筆者が造形を拡大して観察し、関連書籍の資料と比較したところ、1/12スケールとは思えない情報量に驚かされました。皮膚の質感はもちろん、多くの人が見落としがちな右頬のごく小さな傷まで、開発チームは余すところなく再現しています。開発チームへのインタビューによると、顔立ちや体型の比率、時期によって微妙に変化する筋肉量と体脂肪まで、徹底的に研究したとのこと。『死亡遊戯』は、ブルース・リー本人が出演したわずかなフィルムと、複数の代役によって追加撮影された映像を組み合わせ、彼の死から5年後に完成した作品です。年月の経過によって資料が散逸しており、映画の画像だけでは正確な検証や最高水準の再現が困難でした。そのため開発チームは、膨大な関連書籍や映像作品、写真資料を参照。開発初期から製品化に至るまで、テストと修正を繰り返し、可能な限りリアルな姿と最高の品質をコレクターへ届けることを目指したそうです。ブルース・リーへの敬意と、製品作りに対する妥協のないこだわりが伝わってきます。
主な付属品は以下のとおりです。
1. 高い再現度を誇る2種類の表情のヘッドパーツ。
専用設計の交換用ハンドパーツ一式。拳を握った際の指関節や拳の凹凸まで緻密に造形されており、見応え十分です。
2. 劇中でダン・イノサントとの対決時に使用したヌンチャクと、緑色の竹鞭。
3. 多関節式の可動支柱とディスプレイ台座。
4. アクセサリー収納袋。
【総評――1/6スケール版が登場するまでは、間違いなく最高峰の1/12ブルース・リー】
INARTの1/12スケール製品らしい高水準の仕上がりと、手に取りやすい価格設定を今回も実現しています。これまで、さまざまなメーカーから多彩なスケールのブルース・リーがアクションフィギュア化されてきました。しかし、今後登場する1/6スケール版を除き、1/12スケールというカテゴリーに限れば、本商品は間違いなく最高峰のひとつです。1体だけ1/12スケールのブルース・リーを選ぶなら、本商品を強くおすすめします。その理由は明快です。顔がぼやけたり、印刷の網点が目立ったりする、いわゆる3Dフェイスプリント技術に頼らずとも、他社にできることはすべて実現し、他社では難しい表現にまで踏み込んでいるからです。答えは、それほどシンプルです。
逃してから後悔しても、もう遅いかもしれません。
ブルース・リーの言葉を借りるなら、
「ひとつのことを考えるだけで時間を使いすぎていては、いつまでたっても成し遂げられない」
それではまた次回。








