林士平氏、仏メディアのインタビューで出版社設立に言及「集英社と競争するつもりはない」 契約作品のアニメ化・グッズ展開も担当へ

集英社の『少年ジャンプ+』編集部が、人気編集者の林士平氏が代表を務める株式会社ミックスグリーンへの編集業務委託を終了したと発表し、大きな話題を呼んでいます。さらに、林氏は『少年ジャンプ+』の連載4作品について、ミックスグリーンが各漫画家と直接契約を結んだと発表。両者の関係がどうなるのか、漫画ファンの間ではさまざまな臆測が飛び交っています。

そんな中、林氏がフランスのメディア「L'Internaute」のインタビューに登場。自身が立ち上げた独立出版社ミックスグリーンについて語るとともに、ここ数カ月、漫画界をざわつかせてきたさまざまなうわさに正面から答えました。

まず質問されたのは、2022年に集英社を退社し、独立編集者となった理由についてです。

林士平氏は次のように回答しました。

理由はとてもシンプルです。仕事の成果を評価されて次々と昇進しましたが、役職が上がるほど、それまでと同じように現場の編集者、つまり「担当編集」として働くことが難しくなっていきました。副編集長に昇進してから1年余りで、会社を辞めました。

私が編集という仕事を特に好きなのは、作家のそばに寄り添い、作家が生み出す物語やキャラクターについて一緒に話し合えるからです。そこから離れていきたくはありませんでした。

Q:あなたの会社ミックスグリーンの設立発表後、ネット上では大きな反響がありました。今後は自社で漫画を出版するのでしょうか。このプロジェクトをどのように位置付けていますか?

林士平氏:私たちは出版社になるつもりです。独自の漫画アプリを立ち上げ、多くの新作を開発するとともに、若い作家を丁寧に育てていきます。願いはとてもシンプルで、今後10年、20年をかけて、ミックスグリーンを優れた作品と作家が生まれる場所にしたい。私にとってミックスグリーンは、未来の漫画界を担う作家が育つ場所でなければなりません。

「集英社と競争する」という発想で考えているわけではありませんし、「絶対に会社を大きくしなければならない」とも考えていません。私たちが何より目指しているのは、一緒に作品を作ることを選んでくれた作家に、しっかりとしたサポートとサービスを提供できる会社になることです。

Q:現在の漫画編集を取り巻く環境について、どのように見ていますか?

林士平氏:業界全体としては、今も健全な状態にあると思います。世界における漫画の売り上げは伸びています。一方、国内では人口減少が続いているため、将来的には読者数が減り、最終的に漫画の売り上げにも影響する可能性があります。それに対して、海外市場は今も力強く成長しています。

私たちは今、転換期の真っただ中にいます。これまで築き上げてきたものをすべて壊すのではなく、本当に大切な部分を残しながら、どうすれば世界中の読者に作品を届けられるのか、より深く考える必要があります。すでに多くの企業が取り組んでいますが、今はこの課題をさらに具体的かつ緻密に考えなければならない段階です。

Q:『ダンダダン』以前、龍幸伸先生は『ジャンプSQ.』時代を含め、何度も作品が採用されなかったといいます。こうした長期的な試行錯誤や成長は、現在でも可能なのでしょうか。大手出版社は以前よりリスクを避けるようになったのでしょうか。そして、これはミックスグリーンが解決したい課題でもありますか?

林士平氏:これは大企業かどうかというよりも、各編集部がどのようなメンバーで構成されているかという問題です。作品を世に送り出せるかどうかは、その部署で編集上の判断を下す人たちによって決まります。龍幸伸先生は『ジャンプSQ.』時代に、何度も作品が採用されませんでした。少なくとも当時は、『ジャンプSQ.』編集部の方針と私の考え方に違いがありました。しかし、その後『少年ジャンプ+』で一緒に仕事をした際には、同じようなズレを感じることはありませんでした。

ただ、私の経験上、同じチームがいつまで続くのかは誰にも分かりません。自分の会社を設立したからには、私自身が納得できない評価方法を採用したくはありません。これは、私個人の好みを全員に押し付けるという意味ではなく、新しいものを受け入れる勇気を持つということです。

私は会社の責任者ですが、ある企画を個人的につまらないと感じたり、理解できなかったりしても、若いスタッフと話し合った結果、挑戦する価値があると判断できれば、チャンスを与えたいと思っています。これまでの経験を生かし、かつて私自身が不満を感じたような意思決定を、できる限り繰り返さないようにしたいです。

Q:『週刊少年ジャンプ』では、早い段階で読者を引き付けることが求められます。ミックスグリーンでは、立ち上がりがゆっくりで、世界観を構築するまでに時間がかかる作品にも、より多くのチャンスを与えるのでしょうか?

林士平氏:私たちのプラットフォームはまだ正式にスタートしていません。そのため、作品をどのように評価すべきか、どのような読者が集まるのかは、現時点では分かりません。すべて決まっているかのように話すのは、むしろ不誠実でしょう。ただ、今でも「適切なタイミングで連載を終了する」こと自体は、優れた仕組みだと考えています。

売り上げが伸びず、読者にも届いていない作品を、作家に長期間描き続けてもらうことは、作家にとっても読者にとっても良いことではありません。そのため、どの段階で作品を終了するのか判断できるルールは、必ず必要になります。『週刊少年ジャンプ』では、通常は第3話までの反応を見て判断し、短い作品では連載10話ほどで終了する場合もあります。残酷に見えることもありますが、その一方で、作家が別の作品に挑戦する機会にもつながります。

漫画家が健康を損なわずに漫画を描き続けられる期間は、おそらく30年ほどです。読者に届いていない作品に2年、3年、あるいは4年を費やしてもらうことが、本当に最善とは限りません。だからこそ、作家と私たちの双方が納得できるデータとルールを見つける必要があります。成果が出ていない作品を際限なく続けてもらうような状況は避けたいです。ただ、立ち上げ当初は掲載作品が少ないため、連載を終了させることも簡単ではありません。次々と作品を終了してしまえば、読者に提供するコンテンツの量を維持できなくなるからです。

しかし、連載作品が増えた後は、本当に作家を大切にするのであれば、適切なタイミングで作品を終える判断も必要です。そして「この作品は、これらのデータを根拠に終了します。」と明確に説明できなければなりません。私は、その判断に感情を持ち込みたくありません。編集長の誰かが「この作品は面白くないと思う」と言っただけで、終了を決めるべきではない。読者から支持されていないことを確認した上で判断する方が、より健全だと思います。

▼ 現在ミックスグリーンが担当する作品

Q:現在担当している遠藤達哉先生や龍幸伸先生といった人気漫画家が、読み切りや特別企画でミックスグリーンの立ち上げに参加する可能性はありますか?

林士平氏:遠藤達哉先生には、現在、私たちが初めて開催する漫画賞の審査委員長を務めていただいています。私自身は、現在も『少年ジャンプ+』で『SPY×FAMILY』『ダンダダン』『ケントゥリア』『WITCHRIV』の4作品を担当しており、これらの作品は今後も『少年ジャンプ+』で連載を続けます。

その一方で、アニメ化や商品展開といった派生展開については、私たちの会社が監修と制作を担当します。具体的には、アニメ化やグッズ展開などです。少し特殊な協業の形といえるでしょう。これらの作家が今後、読み切りを描いたり、ミックスグリーン向けに別のコンテンツを制作したりすることについては、私にも考えがあります。

ただし、現在連載している作品が何よりも最優先です。少し時間ができて、ほかの仕事に取り組む余力があれば、何か作る可能性はありますが、現時点で具体的な予定はありません。

Q:現在、優れた編集者に求められるものは何だと思いますか? 読む力、書く力、聞く力、交渉力、それともプロデュース力でしょうか?

林士平氏:優れた編集者は、まず作家と本当の意味で仕事の話ができ、作家に前向きな気持ちを持ってもらえる人でなければなりません。つまり、「漫画を描くのは楽しい」「これからも描き続けたい」と思ってもらうことです。

次に、作家から託された作品を世に広め、より多くの読者に知ってもらい、世界中へ届ける力が必要です。現在では、アニメ企画を適切にプロデュースする力や、魅力的なグッズを開発する力も求められます。つまり、できる限り作家と作品のそばに寄り添い続けることです。


集英社は、林氏および同氏が代表を務める会社との業務委託関係をすべて終了しました。4作品については「新たな体制で連載を継続する」とされていますが、各漫画家はミックスグリーンとも直接契約を締結。今後、『SPY×FAMILY』『ダンダダン』『ケントゥリア』『WITCHRIV』のアニメ化やグッズ展開などはミックスグリーンが担当するとのことで、作品のIP展開に大きく関わる形となります。

漫画界で、林士平氏ほど編集者個人の名前が注目を集め、ひとつのブランドのような存在感を放つケースはそう多くありません。「集英社と競争するつもりはない」と語る一方、その新たな取り組みが漫画業界に新風を巻き起こしていることは間違いなさそうです。

via: L'Internaute