大塚明夫、『メタルギア ソリッド』スネークと小島秀夫への思いを語る 「新作をもう1本くらいやってもいいじゃない」

深みのある低音ボイスで『ルパン三世』の次元大介や『攻殻機動隊』のバトーなど、数々の人気キャラクターを演じてきた声優の大塚明夫さん。その代表役のひとつとして世界中のファンから愛されているのが、ゲーム『メタルギア ソリッド』(METAL GEAR)シリーズのスネークです。

大塚明夫さんがこのほど、文春オンラインのインタビューに登場。『メタルギア ソリッド』シリーズの主人公スネークや、同作を生み出した小島秀夫監督との深い絆を語ったほか、お気に入りの役だという『Fate/Zero』のライダーについても思いを明かしました。


以下、インタビューの一問一答を紹介します。

Q:ゲーム『メタルギア ソリッド』シリーズで演じたスネークについてお聞かせください。今やスネークの代名詞となった「待たせたな」は、もともとアドリブだったそうですね。

大塚明夫:本編中のアドリブです。その後、CMでも使われていました。ゲームの収録でアドリブができるのは、小島秀夫監督本人が目の前にいるからですよ(笑)。どのセリフを使い、どれを外すかは任せられるじゃないですか。

海外ゲームの日本語吹き替えでは、そうはいきません。昔のゲームは先にセリフを収録して、後から映像を付けていましたから。

Q:『メタルギア ソリッド』シリーズといえば、『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』で、大塚さん演じるスネークと、お父さまの大塚周夫さん演じるビッグボスが言葉を交わす場面は、今なお名シーンとして語り継がれています。

大塚明夫:本当にありがたいですね。あのときは、ビッグボスのモーションアクターも僕が担当しました。僕の動きに合わせて、父がセリフを収録したんです。現場でモーションキャプチャースーツを着た僕を見た父は目を丸くして、「お前に俺が声を付けるのか」と驚いていて。それが面白かったですね。

Q:これまで数多くのキャラクターを演じてきた中でも、スネークには特別な思い入れがあるそうですね。

大塚明夫:もちろんありますよ。小島監督とコナミの関係がどうなろうと、ファンにとってスネークは大塚明夫が演じるキャラクターのはずですから。ファンのことを思うと……やっぱり僕は板挟みなんですよ。

Q:大塚さんと小島秀夫監督の関係といえば、2019年、小島監督がコナミを離れてから初めて手掛けた作品『DEATH STRANDING』の発売記念イベントで、感極まって涙を流した姿が印象に残っています。

大塚明夫:小島さんはコナミを離れて、途方に暮れてしまったと思うんです。まだ終わっていないプロジェクトもありましたから。その後、小さなコジマプロダクションという舟を作って漕ぎ出し、さまざまな紆余曲折があった。ソニーが手を差し伸べて、ようやく完成したのが『DEATH STRANDING』というゲームです。

会社を離れてから苦労を重ね、それでも大作を完成させた。そう考えたら、泣けてくるじゃないですか。だって、これまでずっと一緒に歩んできたんですから。

Q:イベントでは「小島さんの背中に、孤独の『孤』という文字が見えた」と話していました。どこか悲壮感のようなものを感じていたのでしょうか。

大塚明夫:小島秀夫監督は僕の弟と同い年なので、僕より少し若いくらいです。同じような時代を生き、育ってきたからこそ、その時代に培われたメンタリティはとても近いんですよ。部下たちを引っ張っていかなければならない立場でありながら、会社を出て独立したばかりで、お金もない。きっと「もし『DEATH STRANDING』が失敗したら、どうなるんだろう?」という恐怖とも戦っていたと思います。

失敗すれば、一生働いても返せないような借金を背負うことだってある。そりゃ怖いですよ。だからゲームが完成し、「発売します」と発表された瞬間、僕は泣いてしまったんです。

Q:小島秀夫監督に対して、本当に強い思いを抱いていることが伝わってきます。

大塚明夫:基本的に、僕たち声優は頼まれれば演じるのが仕事です。ただ、『メタルギア ソリッド』シリーズは小島秀夫監督が生み出した作品で、僕にも「彼と一緒にこの作品を作ってきた」という自負があります。だから「小島秀夫監督が関わっていない『メタルギア ソリッド』は、僕はやりたくない。」と言ったんです。言ってしまった手前、後に引けなくなっているんですけどね(笑)。

Q:『メタルギア ソリッド』シリーズについては、以前、森久保祥太郎さんと天﨑滉平さんのYouTube番組にゲスト出演した際にも、「もう1本くらい作ればいいのになと思う」と話していました。

大塚明夫:本当にそう思っています。世界中の『メタルギア ソリッド』ファンのために。首を長くして待っているファンがいるんですから。その人たちのために、もう1本『メタルギア ソリッド』を作ろうよって。小島秀夫監督は今、『DEATH STRANDING』で自分の作品を作っているわけですから、「だったら、もう1本くらいやってもいいじゃない。」という思いがあります。

Q:実際に小島監督本人へ、「もう1本やりたい」と話したことはあるのでしょうか。

大塚明夫:ご想像にお任せします(笑)。

Q:これまで演じたキャラクターの中で、お気に入りのひとりに『Fate/Zero』のライダーを挙げているのは少し意外でした。

大塚明夫:『Fate/Zero』は、アニメに先駆けてドラマCDが制作されたんです。そのときスタッフから「事前に原作を読んでおいてください」と言われて、分厚い原作小説が4冊も送られてきました。「えっ、ドラマCDを録るために、これを全部読まなきゃいけないの!?」と思いましたね。

でも、いざ読み始めると面白くて。読み進めるうちに、「このライダーという役はいいな」と思ったんです。鬱々とした展開が続く物語の中で、ライダーが登場するときだけ“風”が吹く。「これはおいしい役だな」と思っていました(笑)。

Q:大塚さんが演じてきた『ブラック・ジャック』のブラック・ジャックや、『攻殻機動隊』のバトー、そしてスネークは、心に陰を抱えた人物が多いですよね。一方、ライダーにはそうした陰がない……あるいは、見せないキャラクターです。

大塚明夫:ライダーは演じていて本当に痛快なんですよ。何と言えばいいのかな。ハーレーのような太いトルクで、ダカダカダカッと突き進んでいく感じです。あんな感覚はめったにありません。「これは面白い役だな」と思いました。

Q:ライダーは豪快ですが、何も考えずに突っ走るだけの猪突猛進な人物ではありません。

大塚明夫:そこがまたいいんですよ。『Fate/Zero』には「聖杯問答」という回があります。あの場面では、ライダーが自分の理屈をとうとうと語るじゃないですか。そこで彼が展開する論理がとても明快で、聞いていると「なるほど」と納得させられる。しかも、普通の人にはなかなか思い付かないような発想なんです。

そもそも、一般的なアニメではあのようなシーンは珍しいですよね。セイバー、アーチャー、ライダーの3人が、ずっと座って話しているだけなんですから(笑)。「王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)」というライダーの宝具が登場すれば、映像だけでも「すごい!」となります。でも、「聖杯問答」は本当にずっと会話しているだけなんです。

だからこそ、視聴者を引き込めるかどうかは役者の力量に懸かっている。そう思って、必死に演じました。

今回のインタビューからは、大塚明夫さんと小島秀夫監督の強い絆があらためて伝わってきます。『メタルギア ソリッド』は、ふたりが共に作り上げてきた大切な作品。新作についても「もう1本」と率直な思いを明かしました。また、お気に入りの役が、これまで演じてきたキャラクターとはひと味違う『Fate/Zero』のライダーというのも、ファンにとっては意外な“推し”だったのではないでしょうか。

via: 文春オンライン