
『ハリー・ポッター』(Harry Potter)シリーズの誕生から長い年月が過ぎるなか、新たにリブートされるHBOオリジナルのドラマ版も始動。第1シーズン『ハリー・ポッターと賢者の石』は、日本では2026年12月下旬よりHuluで配信予定だ。そんな同シリーズを巡り、最近ネット上で二次創作ブームが再燃している。特に注目を集めているのが、ドラコ・マルフォイを女性化したバージョンだ。X(旧Twitter)やRedditなどのSNSでは多くのクリエイターが反応し、イラストや漫画、カップリング作品が急増している。

今回のブームを巻き起こした大きなきっかけは、イラストレーターのREDTENが2026年9月に公開した女性版マルフォイのイラストまでさかのぼる。マルフォイを象徴するプラチナブロンドやスリザリンらしい雰囲気、傲慢な表情を残しつつ、ロングヘアやイヤリング、日本の美少女キャラクター風のデザインをプラス。瞬く間に多くのクリエイターが追随し、女性版マルフォイが嫉妬する姿や、ハーマイオニーとハリーを取り合う展開、さらには原作の宿敵関係をラブコメへと作り変えた作品まで登場した。


▼9月27日、@spaz141が女性版マルフォイとハーマイオニーがハリーを取り合うイラストを投稿。3日間で4万4000件を超える「いいね」を獲得した。
▼9月28日、@tns2804が頬を膨らませる女性版マルフォイの同人イラストを投稿。2日間で1万8000件を超える「いいね」を獲得した。
ただし、マルフォイを女性として再解釈したクリエイターはREDTENが初めてではない。イラストレーターの Grizz も、2024年に「もしマルフォイが女の子だったら」というコンセプトの作品を発表している。さらに歴史をさかのぼると、『ハリー・ポッター』シリーズが世界的ブームとなった2000年代初頭には、FanFiction.Netをはじめとする同人プラットフォームで、キャラクターの性別を入れ替えた作品がすでに数多く投稿されていた。マルフォイも、そうした改変の定番キャラクターの一人だった。

例えば2001年には、ドラコ・マルフォイを女性として描いた作品がすでに登場。2002年には、「もしマルフォイが女の子で、しかもグリフィンドールに組分けされていたら」という物語も投稿されている。
2004年になると、FanFiction.Netには『ハリー・ポッター』の性別反転作品を専門に集めた「HP Genderbending Stories」コミュニティまで誕生した。当時の定番設定は、キャラクターが生まれつき原作とは異なる性別だったり、魔法薬や魔法の事故によって突然性別が変わったりするもの。ハリーとマルフォイをそろって女性化する作品もあり、「Fem!Harry」は後に巨大な独立ジャンルへと成長した。


その後、TumblrやDeviantArt、Rule 63文化が盛り上がった2010年代に入ると、性別反転作品は小説からイラスト、実写版のファンキャスティングなどへと広がっていく。2013年前後には、ハリー、ハーマイオニー、ロン、マルフォイら主要キャラクター全員の性別を再設定した「Gender-Swap Harry Potter」企画もネット上に登場していた。

台湾でも2020年、独自の「女性版マルフォイ」ブームが起きている。PTT C_Chatのユーザーが「もしマルフォイだけが性別反転していたら?」というアイデアを投稿したことから、「綴歌・マルフォイ」と呼ばれる共同創作へと発展。数百本もの小説に加え、イラスト、漫画、動画、さまざまな並行世界が生み出され、原作とは独立したキャラクターの成長物語まで構築された。

一方、2026年の女性版マルフォイブームは、現代のアニメファンにはおなじみの「ツンデレお嬢様」像により近い。マルフォイはもともと、名門出身で、素直になれず、高慢。自分からハリーに近づいたものの拒絶され、その後もしつこく絡み続けるという特徴を持つ。性別を入れ替えるだけで、原作の宿敵関係が日本のラブコメに登場する「悪役令嬢」やツンデレヒロインへ、ほぼ違和感なく変換できてしまうのだ。
つまり今回のネット上での爆発的人気は、まったく新しい「女性版マルフォイ」の誕生というより、20年以上にわたる同人文化のルネサンスと呼ぶべきものだろう。同じ性別反転の発想が、初期の同人小説からTumblrのイラスト、台湾の「綴歌」を経て、アルゴリズムによって一気に拡散される現代のミーム文化へとたどり着いた。変化したのはアイデアそのものではなく、世代ごとにマルフォイを捉え直す方法なのだ。