CLAMPが手掛ける不朽の名作『魔法騎士レイアース』。2024年に原作誕生30周年を迎え、新アニメ化プロジェクトの始動が発表されました。10月に放送がスタートし、現在は第2話までオンエアされています。
アニメ情報メディア「アニメ!アニメ!」は、約30年ぶりとなる新作アニメを企画した岸田拓磨プロデューサーにインタビューを実施。なぜ令和の今、『魔法騎士レイアース』を再びアニメ化するのか。新作で目指したものや制作方針について聞いています。

以下、インタビューをQ&A形式でお届けします。
Q:まずは岸田さんが本作で担当している役割と、アニメプロデューサーの仕事内容について教えてください。
岸田拓磨:アニメプロデューサーの仕事や役割は幅広く、作品によっても異なります。本作では、企画を立ち上げ、アニメーション制作会社を探すこと、実制作に入ってからは現場の調整や、原作サイドへの確認を行うことが主な役割です。
今回は3社がパートナーとして映像制作に参加しているため、作品内容やビジネス面について各社と調整する役割も担当しました。
Q:つまり、「『魔法騎士レイアース』の新作アニメを作りましょう」と最初に提案したのが岸田さんだったのでしょうか?
岸田拓磨:そうですね。僕自身がやりたいと思い、企画を立ち上げました。
Q:多くの人に影響を与えてきた作品ですが、なぜ令和の今、『レイアース』を再びアニメ化しようと思ったのでしょうか?
岸田拓磨:当時は男女を問わず、本当に多くの子どもたちが夢中になっていた印象があります。今振り返ると不思議な現象にも思えますが、それだけ作品自体に強い魅力があったということでしょう。企画のきっかけは、トムス・エンタテインメントだからこそ実現できる作品を作れないかと考えたことでした。
僕はもともとトムスでライセンス営業を担当しており、弊社が携わった平成版『魔法騎士レイアース』のDVDやBlu-ray制作にも関わっていました。その際に、「『魔法騎士レイアース』が描くテーマは、今の時代にも十分通用するのではないか?」と感じたんです。そこで今回、満を持して企画を提案しました。

Q:本作のテーマが、現代にも通用すると感じた理由を教えてください。
岸田拓磨:まず、CLAMPさんの原作には、時代に左右されない普遍性があるのだと思います。今見ても世代を超えて楽しめる要素が多く、現代にもつながるテーマが詰まっています。
Q:近年は異世界を題材にした作品が数多くアニメ化されています。『魔法騎士レイアース』も、ある意味では異世界召喚ものです。そうした点も、時代を問わない理由のひとつかもしれませんね。
岸田拓磨:まさにその通りだと思います。企画書にも「元祖異世界もの」といった表現を書きました。当時は特定のジャンルとして意識せずに作られたのでしょうが、CLAMPさんの先見性には驚かされます。
その一方で、物語は異世界の姫を救うため、邪悪な神官を倒すというところから始まります。まさに王道ファンタジーと呼べる分かりやすさがあります。そうした王道の魅力も含め、『魔法騎士レイアース』は今なお多くの人が楽しめる作品だと考えています。

Q:物語の導入はストレートで分かりやすいですよね。ただし、『魔法騎士レイアース』の魅力はそれだけではなく、その後には予想もつかない展開が待っています。
岸田拓磨:本作の大きな魅力は、物語が進むにつれて、それぞれのキャラクターが置かれた立場や関係性、胸の奥に秘めた思いが少しずつ見えてくることです。最後まで引き込まれる物語で、特に後半には驚きの展開が次々と待っています。本当の敵は誰なのか。自分たちが救えると思っていたものは何だったのか。そして、本当の正義はどこにあるのか。
ひとつの答えには収まらない、非常に奥深いテーマを描いた作品です。当たり前だと思っていた価値観が、物語の進行とともに根底から覆されていく。その構成が本当に魅力的です。視聴者の価値観を揺さぶり、さまざまなことを考え直すきっかけを与えてくれる作品でもあると思います。
Q:子どもの頃は「カッコいい」「かわいい」と素直に楽しめますが、大人になって見返すと、深く考えさせられる物語だったことに気付かされます。
岸田拓磨:そうなんです! 作中には魔神、つまりロボット要素がありますし、魔法が使える世界という設定だけでもワクワクします。さらに、登場するキャラクターたちも魅力的です。主人公ひとりが突っ走るのではなく、3人が一緒に冒険し、その中で成長していきます。見ている側も、自然と彼女たちを応援したくなるんです。
『魔法騎士レイアース』には王道の異世界ファンタジーらしい魅力がありながら、決まった型には収まらず、物事をひとつの側面だけで捉えない面白さがあります。作品が扱うテーマや物語そのものの魅力、そして僕自身が感じてきた数々の面白さを考えると、今の時代に改めてアニメ化する意義があると思いました。
Q:今回の新作を制作するにあたり、平成版のアニメ『魔法騎士レイアース』はどの程度参考にしたのでしょうか?
岸田拓磨:平成版へのリスペクトはもちろんありますが、制作にあたって、それを意識的な基準にはしていません。というのも、平成版『魔法騎士レイアース』の放送当時は原作漫画が連載中で、アニメには多くのオリジナル要素が盛り込まれていたからです。
現在は原作が完結しており、アニメの作り方も当時から大きく変化しています。制作の前提そのものが異なるため、平成版をあえて参照するよりも、今だからこそ作れる『魔法騎士レイアース』を目指すべきだと考えました。先入観を持たず、改めて原作と向き合うこと。それも、今このタイミングでアニメ化する理由のひとつです。

Q:今回のストーリーは、原作を軸に描かれるということですね。
岸田拓磨:はい。原作へのリスペクトを前提に物語を構成することが、今回の新作アニメにおける基本方針です。ただ、原作の『魔法騎士レイアース』と『魔法騎士レイアース2』は、合わせても単行本全6巻です。これをテレビアニメの2クールとして描くには、どうしても分量が足りません。
そのため、今回は少し特殊な話数構成になっています。また、キャラクターの心情をさらに掘り下げられる場面については、原作から逸脱しない範囲で描写を広げています。原作を補う部分については、メインスタッフや原作サイドと何度も話し合い、「どのように描けば、視聴者にきちんと理解してもらい、伝えたいことを受け取ってもらえるのか」を慎重に考えました。
Q:漫画には読者が想像できる余白がありますが、それをそのままアニメにすると、映像としては流れが不自然になる場合もあります。アニメ化では、原作の余白を補う作業も必要になりそうですね。
岸田拓磨:そうですね。読者が自由に想像できる余白は、漫画ならではの魅力です。一方、アニメでは決められた放送時間の中で、どうすれば物語を楽しんでもらえるかを考えなければなりません。映像としてどのように見せるかも含めて、作品を組み立てる必要があります。
そうした点を踏まえ、シリーズ構成の村越繁さんや脚本家の皆さんと、「ここはもう少し補足した方がいいのではないか」「この場面で伝えたい感情は、もう一段はっきり見せた方がいい」と何度も話し合いました。そうした議論を積み重ねながら、作品を作り上げています。

Q:制作にあたり、原作サイドのCLAMPから何か要望はありましたか?
岸田拓磨:最初に講談社の担当者を通じてお話しした際、「メカデザインを楽しみにしています。」という言葉をいただいたと記憶しています。その後は、アニメーション制作を担当するE&H productionをとても信頼してくださったようで、大きな要望を受けた印象はありません。原作サイドの皆さんには、いつも丁寧にコミュニケーションを取っていただき、とても助けられています。
Q:キャラクターデザインでは、どのような部分を特に重視しましたか?
岸田拓磨:キャラクターデザインと総作画監督を担当する渡部里美さんは、CLAMP作品の大ファンです。原作で大切にされている要素を熟知しており、僕たちが目指す方向性もしっかり理解したうえで、デザインへ落とし込んでくれました。
CLAMP作品のキャラクターといえば、やはり瞳が大きな特徴のひとつです。そうした細部については、何度も意見を交わしながら調整しました。また、キャラクターの頭身についても話し合ったことを覚えています。

Q:魔神のデザインは、どのように作り上げていったのでしょうか?
岸田拓磨:魔神のデザインについても、原作サイドのCLAMPさんと何度も打ち合わせを重ねました。最終的には、魔神デザインと魔神メカニックディレクターを担当する牟田口裕基さんが提案した、華やかな装飾とフォルムを重視する方向性を採用しています。細部まで見応えのあるデザインに仕上がりました。
繊細なディテールを表現しながら、原作が持つ魅力もしっかり引き出せています。非常に素晴らしいデザインになったと思います。

Q:岸田プロデューサーが、アニメ制作で最も大切にしていることを教えてください。
岸田拓磨:企画やプロモーションを考える際には、まず「誰に見てもらう作品なのか」を想定する必要があります。どれだけ一生懸命に映像を作っても、見てもらえず、誰かに語られたり感動が受け継がれたりしなければ、作品を長く残すことは難しいでしょう。
ただし、それは視聴者に迎合すればいいという意味ではありません。アニメを作るうえでは、自分たちがどのような思いで作品に取り組んでいるのか、そして視聴者にどの部分を見てほしいのかを考える必要があります。コンテンツを届ける側、つまり制作者としてそれらを明確にし、伝えたいものを作品へ込めることが大切です。
Q:作品をどう受け取るかは視聴者の自由ですが、作り手としては、きちんと思いを込めて送り出したいということですね。
岸田拓磨:作品をどう解釈するかは視聴者の自由なので、作り手の考えを押し付けるべきではありません。それでも、多種多様なアニメが次々と生まれている今だからこそ、作品のテーマと真剣に向き合い、視聴者が何を感じるかまで想像しながら作ることが重要だと考えています。
Q:最後に、本作を楽しみにしている視聴者へメッセージをお願いします。
岸田拓磨:『魔法騎士レイアース』では、キャラクターたちの言葉が、それぞれの立場や心情の変化に伴って少しずつ変わっていきます。冒険を通じて彼女たちの心がどう変化し、どのように成長していくのか、じっくり見届けていただきたいです。
美しいアニメーション表現はもちろん、迫力とスケール感に満ちた魔神同士のバトルも見どころです。魅力あふれる原作を、現代の技術によって新たなアニメとして描き出しました。今の時代だからこそ生まれた『魔法騎士レイアース』を、ぜひご自身の目で確かめてください。制作現場のスタッフ全員が、多くの人に届けたい、多くの人に見てもらいたいという思いで全力を注いでいます。

今回のインタビューからは、岸田プロデューサーの『魔法騎士レイアース』に対する並々ならぬ愛情が伝わってきました。その熱意こそが、新作アニメを動かした大きな原動力だったのでしょう。
時代を超えて支持され続けてきたCLAMP作品。約30年の時を経てよみがえった新たな『魔法騎士レイアース』が、どのような風を吹き込んでくれるのか注目です。
via: アニメ!アニメ!