小島秀夫、『メタルギア ソリッド 2』で描いた世界が「いま現実に」 SNSの偽情報が生活を左右する恐怖を語る

テックメディア「ギズモード・ジャパン」がこのほど、小島秀夫監督と、映画『The Digger』を手掛けたアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督による対談を公開しました。

対談の中で小島監督は、2001年発売の『メタルギア ソリッド 2』で描いたデジタル社会が「いま、本当に現実になった」とコメント。SNSがまるで生命を持つかのように振る舞い、偽情報が社会情勢のみならず、私たちの日常生活まで左右している現状について語りました。

小島監督はまず、イニャリトゥ監督の新作『The Digger』について、恐怖を感じさせるコメディーだと評価。そこで描かれているのは未来の空想ではなく、まさに現実で起きている出来事だと指摘しました。また、映画と演劇を交錯させた複雑な物語構成にも、大きな衝撃を受けたといいます。

その後、話題は「脚本は未来を予言するものではなく、現在進行形の出来事を拡張して物語にするもの」という創作論へ。そこで小島監督は、25年前に制作した『メタルギア ソリッド 2』を引き合いに出しました。

小島監督は「2001年に『メタルギア ソリッド 2』というゲームを作りました。当時はまだSNSがありませんでしたが、SNSがある種の生命を持つような物語を描いたんです。いま、その世界が本当に現実になりました。『The Digger』も同じですよね?」と振り返ります。

さらに、現在のSNSでは事実ではない情報が際限なく膨らみ、拡散され、政治情勢や人々の暮らしまで変えてしまうと指摘。こうした現象に恐怖を感じていると明かしました。

『The Digger』にも同様の構造を感じたそうで、人々が舞台の上に立たされ、見えない別の力によって操られているかのような感覚が不安をかき立てると説明。真偽の見分けがつきにくいデジタル社会で、次々と押し寄せる情報に翻弄され、自分がどうすべきか分からなくなってしまう状況もまた恐ろしいと語っています。

小島監督は、AIがSNSに組み込まれることで、自分の好みや考え方に合う情報ばかりが届きやすくなる一方、異なる意見に触れる機会が失われていくと指摘。さらに、思いがけず新しいものに出会うチャンスまで減ってしまうことに危機感を示しました。本来なら、テクノロジーの進歩によって社会はより便利で自由になるはず。しかし実際には、私たちが触れられる情報や物事の範囲は、むしろどんどん狭くなっているといいます。

▼ギズモード・ジャパンによる、小島秀夫監督と映画『The Digger』のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の対談動画

小島監督は、2025年12月にWIRED.jpが公開した一問一答動画でも、「『メタルギア ソリッド 2』では、AIが世界を支配する可能性を描いたのか」という視聴者からの質問に答え、当時の制作意図を語っていました。

その際、小島監督は、ゲームで描いたのはAIそのものではなく、デジタル社会の未来だったと説明。「こんな世界になってほしくない」という思いを込めて描いたものの、残念ながら現実は作品内の状況へ近づきつつあると話しています。



『メタルギア ソリッド 2』は2001年発売の作品であり、欧米の映画でもAI技術が社会へ及ぼす影響や、その先に待つ未来はたびたび描かれてきました。今回の対談で小島監督があらためて語ったのは、SNSによって選択肢が増えたように見えながら、実際には見える世界が少しずつ狭められているという現代社会の皮肉です。

テクノロジーが進化するほど、私たちに届く情報はより細かく選別され、その範囲も限定されていく――。便利さと引き換えに社会の分断や二極化が加速しているとしたら、まさに笑えないSFが現実になりつつあるのかもしれません。

via: Gizmodo Japan