手術やカテーテル治療をテーマに、医療ミスを頻繁に繰り返す外科医の姿をリアルに描き、ネット上で大きな話題を呼んだ漫画『脳外科医 竹田くん』。2023年1月から個人ブログで連載されていましたが、同年7月に第142話が公開された後、「続編の制作時期は未定です」として突然更新がストップ。以降、新作が公開されることはありませんでした。
そんな中、先日作者が突如声明を発表。「私(漫画作者)は、2019年から2020年にかけて赤穂市民病院の脳神経外科で発生した複数の医療事故のうち、2020年1月22日の医療過誤被害者の家族です」と告白しました。この衝撃の事実に、ネット上では「漫画で描かれていたことは実話だったのか…」と驚きの声が広がっています。

実は昨年12月27日、松井宏樹という医師が相次ぐ医療事故を理由に、業務上過失傷害の罪で検察に起訴されました。このニュースが報じられると、多くの人がこの漫画を連想し、ネット上では「『脳外科医 竹田くん』ってノンフィクションだったの!?」「マジで竹田くんみたいな医者がいたのか…」と騒然。メディアが松井医師の医療事故を大々的に報じるにつれ、「この漫画の作者は一体何者なんだ?」と、その正体に関する様々な憶測が飛び交っていました。
▼ 昨年12月の報道。

作者は声明文の中で、自身が医療事故に関する多くの内部情報を把握しており、それを漫画という形で表現したと説明。「私は直接的、間接的に関係者から情報を得て、信じがたい一連の異常な出来事を詳細に記録し、その資料をもとに『脳外科医 竹田くん』を創作しました」と述べています。
さらに、「この漫画はあくまでフィクションですが、作中で描かれている医療事故やそれにまつわる出来事は、当時の赤穂市民病院で起きた医療事故と内部対立をモデルにしています」と強調しました。
また、「読者にテーマを分かりやすく伝えるため、一部の設定を簡略化したり、比喩表現を用いたりした部分はありますが、医療事故の深刻さをことさらに誇張したり、特定の人物のネガティブなイメージを植え付けるために悪意のある表現や事実の歪曲を行ったりしたことは断じてありません」と、創作上の脚色について釈明しています。

作者によると、当初は漫画という形で医療システムへの不満を表現したいという思いがあったものの、2023年1月にブログで連載を開始すると、予想をはるかに超える大きな反響があったとのこと。そして昨年12月に実際の医療事故が報道されたことで、作品への関心がさらに高まったため、創作の意図について誤った憶測が広まるのを防ぐべく、作者としての考えを読者に説明することにしたそうです。

作者は「自分にとって、フィクション作品を通じて社会問題を提起することが、唯一可能な方法でした。幸いにも絵を描くことが好きだったので、見よう見まねで四コマ漫画の創作を始めました」と語ります。制作過程では、報道や裁判記録、公開資料を読み込み、さらには手術に関わった医療スタッフを含む多くの関係者から膨大な聞き取り調査を行い、事件の全容を深く理解していったとのこと。「医療事故が隠蔽されていく過程を詳細に描くことで、救済されない被害者の存在に目を向けてほしい」という強い思いがあったと明かしています。

これまでに出版のオファーも多数あったそうですが、すべて断ってきたことも明かしています。また、ブログで漫画を公開し、Xで更新を告知する以外、宣伝活動は一切行っておらず、現在に至るまで商業化はせず、作品から一切の収益を得ていないとのことです。

さらに、2023年10月には、作中に登場する「竹田くん」のモデルを自称する医師から、発信者情報開示請求があったことも告白。2024年6月に裁判所が開示を決定し、7月上旬に開示が完了したそうです。現時点では、損害賠償などを求める訴訟は起こされていません。また、この開示請求において、漫画が赤穂市民病院の医療事故を描いたこと自体が名誉毀損にあたるという主張はなかったとのことです。
作者にとって漫画を描く動機となったのは、「このまま医療事故の真相が闇に葬られ、人々の記憶から風化してしまえば、将来さらに多くの被害者を生むことになる」という強い危機感でした。「長い葛藤の末、何としてでもこの問題を社会に伝えなければならないと決意しました」と、その胸の内を語っています。

この告白はネット上で大きな反響を呼び、多くの読者が「この漫画は単なるフィクションではなく、現実世界からの血の滲むような告発だったのか」と衝撃を受けています。SNSでは「今の医療システムは本当に心配になる」「漫画で描かれるような悪質な出来事が、本当に社会で起きているなんて…」といった声が上がっています。


今回の作者の声明は、多くの国内メディアでも報じられています。作者にとって、漫画の連載開始から約2年を経て、医療システムが抱える問題に大きな注目が集まったことは、創作を始めた当初の目的が達成された瞬間だったのかもしれません。
via: Hatena Blog