テレビアニメの放送から30周年を迎える今もなお、絶大な人気を誇る『新世紀エヴァンゲリオン』。多くのファンにとって、アニメ史にその名を刻む神作の一つとして語り継がれています。
そんな中、ある大学教授がX(旧Twitter)に投稿した内容が大きな話題を呼んでいます。なんと授業で『新世紀エヴァンゲリオン』テレビ版の第25話・第26話(最終回)を上映したところ、学生たちから「これが三十年前のミステリアスなカルトアニメですか…」という反応が返ってきたというのです。この投稿は、当時の衝撃を知る世代と現代の若者との間に横たわる、大きなギャップを浮き彫りにしました。

投稿主は、大学で教鞭をとる松下哲也(@pinetree1981)さん。授業でテレビ版『エヴァ』の最終盤2話を流したところ、学生たちは複雑で、どこか気まずそうな苦笑いを浮かべていたそうです。しかし松下さんは、「90年代の放送当時は社会現象レベルの作品で、視聴者は毎週固唾をのんで結末を待っていた。それであの最終回2話が放送されたんだから、とんでもない衝撃だった」と当時を振り返ります。そして、現代の大学生にあの頃の空気感やインパクトを伝えることの難しさを痛感したと語りました。
松下さんによると、この授業は単なる「おじさんの思い出語り」や布教活動が目的ではありません。デジタル制作が主流となった今ではほとんど見られなくなった
「手描きのセル画」と「撮影台を使ったアナログな演出技法」を学生に理解してもらうためのものでした。松下さんが担当するのはアニメやイラストも含む「広義のマンガ学科」。そのため、学生には『新世紀エヴァンゲリオン』のような金字塔的作品の基礎知識を身につけてもらい、その上で、あえて伝説の最終話をアニメ史や演出技法の教材として扱ったとのことです。



この投稿には、多くのXユーザーから共感の声が寄せられました。多くの人が指摘したのは、『エヴァ』がパソコン通信からインターネットへと移行する、まさに時代の過渡期に生まれた作品であるという点です。今のようにリアルタイムで情報を共有できるSNSも、公式からの丁寧な解説もありません。視聴者は断片的な情報から制作状況を推測するしかなく、最終回が近づくにつれ「予算や人手は大丈夫なのか?」という不安が渦巻いていました。残り2話という状況で「本当に物語を畳めるのか?」と誰もが固唾をのんで見守る中、突如として始まった心理劇のような展開は、視聴者の予想を遥かに超えるもの。「膝から崩れ落ちた」「自分が一体何を見せられたのか理解できなかった」といった、呆然自失の状態に陥る人が続出したのです。



あるユーザーは、『魔法少女まどか☆マギカ』を例に挙げ、それまでの物語を知らない人に最終回だけを見せても、感動も絶望もできないのと同じだと指摘します。それまでの24話で積み重ねてきた感情の起伏こそが、あの衝撃の源泉であり、初見で共感するのは難しいというわけです。

同様に、今の学生たちは、物心ついた頃から『エヴァ』の影響を色濃く受けた作品に数多く触れてきています。そのため、「この演出は、すべてエヴァが最初にやったんだ」というオリジネイターとしての衝撃を改めて体感してもらうのは、さらに困難を極めるでしょう。

松下さんも、学生たちに当時の衝撃を100%追体験してもらうことを求めているわけではないと語ります。重要なのは、インターネットが存在せず、情報が限られていた時代に、『エヴァ』がいかにしてアニメの文脈そのものを変えてしまったのかを理解すること。マンガやアニメを専門に学ぶ学生にとって、『エヴァ』は単なる一つの作品ではなく、歴史の転換点に生まれ、時代の変化を象徴する「生きた教材」なのです。

とはいえ、今回の出来事は、『エヴァ』が当時アニメファンに与えた衝撃が、時代背景や視聴環境が全く異なる現代において、いかに再現困難であるかを改めて浮き彫りにしました。あの衝撃を今の世代に伝えるには、また違ったアプローチが必要なのかもしれませんね。
via: togetter