『ジョジョ SBR』アニメ制作の裏側を木村泰大監督が激白!「実際に馬に乗って研究した」という驚きのこだわりとは?

3月19日よりNetflixにて配信が開始された、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ最新作となるアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 スティール・ボール・ラン』。まだ第1話のみの配信ですが、その圧倒的なクオリティにファンからは絶賛の声が上がっており、今後の展開にも期待が高まっています。

この度、公式サイトにて木村泰大監督のオフィシャルインタビューが公開されました。前作『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』から引き続き監督を務める木村氏が、本作にかける想いや制作の裏側をジョジョファンに向けて熱く語っています。

以下、インタビューの主な内容を抜粋してお届けします。

Q:木村監督は『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』に続き、本作『スティール・ボール・ラン』の監督を務めることになりましたが、その経緯を教えてください。

木村:実は『黄金の風』のアフレコが終盤に差しかかった頃、ワーナー ブラザースのプロデューサーに「『スティール・ボール・ラン』をやりたいです」と自分から志願したんです。それが本当に実現しました。

Q:そうだったのですね!今回のアニメ化にあたり、特に重視した点は何ですか?

木村:この作品には「技術」と「スタンド」という2つの大きな要素があると考えています。ジャイロの鉄球は「技術」であり、それとは全く異なる超常的な存在が「スタンド」です。この対立しつつも共存する2つの要素は、ちょうど物語の舞台である1890年代のアメリカが、馬車から自動車へ、古い価値観から新しい価値観へと移り変わる転換期であったこととも重なります。この対比が面白いと感じたので、作品の中でも特に強調するように意識しました。現代にも通じる部分があると思います。

Q:脚本を構成する上で、特に意識したことはありますか?

木村:まず、この作品の一番の魅力は何かを考えました。それはやはり、ジョニィとジャイロの「バディ感」です。二人の会話や掛け合いは、基本的に可能な限りカットしないようにしています。また、原作は単行本で全24巻と長編ですが、一コマ一コマが大きいので、実はサクサクと読み進められるテンポの良さがあります。アニメでもその軽快なテンポ感を損なわないように心がけています。

Q:コマの大きさも関係してくるのですね。

木村:ええ。『黄金の風』までは少年漫画のテイストが強かったのですが、『スティール・ボール・ラン』は連載途中で『週刊少年ジャンプ』から『ウルトラジャンプ』へ移籍したこともあり、より青年漫画的な作風になっています。そのため、『黄金の風』の演出をそのまま持ってくると、少しチグハグになってしまうんです。なので、「どこまでジョジョらしさを残し、どこまで抑えるか」というバランスには非常に気を使いました。

例えば、ジョジョの大きな特徴である擬音もそうですね。アニメで多用しすぎると映像的に浮いてしまう可能性があるので、長年のファンが物足りなさを感じない範囲で調整しつつ、全体としては少し大人びた映像表現を目指しています。

Q:続いてキャラクターについてお伺いします。監督から見たジョニィの魅力とは何でしょうか?

木村:彼にはブレーキがないところですね(笑)。自分がやりたい、やると決めたことに対して、一切の迷いなく突き進んでいく。その潔さが格好いいですし、若さゆえの魅力でもあると思います。

Q:ジョニィ役の坂田将吾さんには、何か特別なディレクションをされましたか?

木村:細かい指示はほとんどしていません。皆さん原作をしっかり読み込んできてくださるので。坂田さんも、ジャイロ役の阿座上洋平さんも、最初からキャラクターを完璧に掴んでいました。オーディションの時も、そこが決め手になりましたね。

Q:ジャイロについてはいかがですか?

木村:「1st STAGE」の時点では、まだジョニィと距離があって、少し掴みどころのない人物として描かれています。ですが、彼が自分の考えをはっきりと口にするようになってから、どんどん格好良くなっていくんです。一言で言うと、「ミステリアスさ」がジャイロの魅力ですね。人懐っこいようでいて冷酷な一面もある。「ニョホホ」なんて面白い笑い方をするかと思えば、命を懸けた戦いでは恐ろしいほどの凄みを見せる。次に何をしでかすか分からない、その底知れなさを意識して演出しています。

Q:本作はアメリカ大陸を横断する壮大なレースですが、アニメで表現する上で工夫した点はありますか?

木村:今回はアメリカを横断するロードムービーでもあるので、「旅の空気感」をとても大切にしています。『黄金の風』の時にも感じたのですが、『ジョジョ』シリーズって旅の途中で食事をするシーンが意外と少ないんですよ(笑)。大抵、食べようとすると敵に襲われますからね。なので今回は、原作にないシーンでもキャンプをしたり、料理をしたり、食事をしたりする場面を積極的に追加して、旅の雰囲気を丁寧に描くようにしています。

美術面でも、街や建物がある場所と、何も無い荒野との対比を意識して、大陸の広大さを感じてもらえるように工夫しました。地域によって画面の雰囲気が変わっていくので、その違いも楽しんでいただければと思います。

Q:1890年代のアメリカを描くにあたり、資料集めは大変でしたか?

木村:本当に大変でした。日本国内では関連資料がほとんど見つからず、ネットの情報だけでは不十分だったので、時代考証の専門家の方にお願いしました。服装や風習、食文化、建築様式など、当時存在したもの、しなかったものを一つひとつ確認していく作業です。しかも、日本では西部開拓時代を専門に研究されている方がほとんどいらっしゃらないそうで、最終的にはアメリカ史がご専門の西川秀和先生に監修をお願いすることになりました。

Q:「1st STAGE」で特にこだわったポイントはどこですか?

木村:『スティール・ボール・ラン』を、一つの「レース作品」としてきちんと描くことです。スピード感や、レース実況のテンポなど、何度も調整を重ねました。特にレース後半は力を入れています。

Q:騎馬レースということで、馬の表現が重要になってくるかと思いますが。

木村:馬は、最初から最大の難関でした。今回、僕の仕事は「最高の馬の絵を描く」ことではなく、「作品を通してクオリティが破綻しない『馬の作画システム』を構築する」ことでした。「1st STAGE」だけならもっとクオリティを追求することもできたかもしれませんが、この作品は長丁場になります。だからこそ、誰が描いても一定のクオリティを保てる仕組み作りが重要だったんです。

Q:何か参考にされたものはありますか?

木村:実際に乗馬を体験しに行きました。馬の背中って三角形で、視線が高くて不安定で、「こんなのに乗ってアメリカを横断するとか正気か!?」と思いましたね(笑)。ただ、アニメでは現実を完全に再現しているわけではありません。馬の走り方も色々研究したのですが、知れば知るほど複雑で、そのままアニメに落とし込むのは不可能でした。最終的には動きを簡略化して、『スティール・ボール・ラン』ならではの走り方をデザインしています。

シリーズ全体で5000カット以上は馬が登場する見込みなので、全て手描きというのは現実的ではありません。コストやマンパワーを考慮し、クオリティを維持できる制作方法を設計する必要がありました。

Q:3DCGと手描きはどのように使い分けているのでしょうか?

木村:基本的に、馬の全身(脚まで)が映るカットは3DCGを使うことが多いです。ただ、キャラクターが絡む特定のアングルのカットなどは手描きで対応しています。作画でなければならない重要なカットは手描きに任せ、それ以外を3DCGで補うことで、作画スタッフの負担を軽減しています。

Q:原作ファンとしては、ジャイロの鉄球の表現も気になるところです。

木村:鉄球も手描きと3DCGを併用しています。さらに「1st STAGE」では、かつての「波紋」のようなエフェクトを加えています。これはアニメオリジナルの表現で、過去シリーズとの繋がりを意識したものです。完全に波紋というわけではありませんが、効果音も少しそれっぽい雰囲気を出しています。

また、鉄球の質感にもこだわっていて、音響監督の小山恭正さんは回転音を作るのにかなり苦労されたようです。最終的には本物の鉄球を買ってきて音を録ったそうですよ(笑)。

Q:最後に、アニメを楽しみにしているファンへメッセージをお願いします!

木村:全く新しいシリーズですが、これまで『ジョジョ』を追いかけてきたファンの方はもちろん、ここから初めて見るという方にも楽しんでいただける作品になっています。スタッフ一同、全力で制作に臨んでいますので、ぜひご期待ください!

このインタビューからも、『ジョジョの奇妙な冒険 スティール・ボール・ラン』という、レースがテーマの異色作にアニメ制作陣が並々ならぬ情熱を注いでいることが伝わってきますね。1890年代のアメリカという舞台設定の再現や、最大の難関である「馬」の表現に、多大なリソースと研究を費やしていることが伺えます。

現在はまだ第1話のみの配信ですが、そのハイクオリティな映像は一見の価値ありです。今後の配信を楽しみに待ちましょう!


via: 《JOJO的奇妙冒險》官方網站