Netflixのアニメ戦略に変化? 『超かぐや姫!』大ヒットの裏に見る、”独占”にこだわらない「共創」という新潮流

Netflixのオリジナルアニメ映画『超かぐや姫!』が、全世界独占配信を経て日本国内でも劇場公開され、興行収入20億円を突破。配信発の作品としては異例の大ヒットとなり、業界内外で大きな注目を集めています。

とMAPPAとの戦略的パートナーシップ締結や、メディアミックス展開への注力など、Netflixの日本アニメへの関わり方が大きく変わりつつあります。これまでの「完成した作品の権利を独占する」スタイルから、パートナーやクリエイターとの「共創」を重視する方向へとシフトしているようです。今回、アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」がNetflixのコンテンツ部門責任者である山野裕史氏にインタビューを実施。その戦略転換の裏側について語りました。

『超かぐや姫!』は、Netflixが企画・宣伝を手掛けるアニメ会社TWIN ENGINEとタッグを組んだ3作目の作品です。過去2作では「配信と劇場の同時公開」という形が取られましたが、今回は「配信先行、その後に劇場公開」という新たなアプローチが採用されました。

山野氏によると、同時公開は多くの視聴者にリーチできた一方で、「両方に注力することでプロモーション効果が分散してしまう」という課題があったとのこと。そこで3作目では、まず配信に特化し、世界的な大ヒットを目指す戦略に切り替えたそうです。

この戦略は見事に成功。配信で鑑賞した後に劇場へ足を運ぶファンや、劇場での感動を胸に自宅で“追い視聴”するファンが続出。こうした「複数回・複数環境での視聴」という新たな鑑賞スタイルはSNSでも大きな話題となり、一種のムーブメントを巻き起こしました。

本作の監督を務めた山下清悟氏は、配信の最大の強みである「繰り返し視聴」を意識し、「何度見ても新しい発見がある」作品作りを目指したと語ります。絵コンテから全体の構成に至るまで一切の妥協を許さず、配信と劇場の両方で最高の体験ができるクオリティを追求したことが、成功の大きな要因と見られています。

今回の『超かぐや姫!』の成功は、プラットフォーム独占配信の作品であっても、大規模なムーブメントを生み出せることを証明した重要なケーススタディとなりました。

山野氏は、「実写の人気シリーズが大ヒットする一方で、アニメではなかなか同じような現象が起きにくい」ことにもどかしさを感じていたと明かします。今回の成功は、「オリジナルアニメ+独占配信」という座組にとって大きな追い風となり、今後さらに多くのクリエイターがこの分野に挑戦するきっかけになることが期待されます。

Netflixの日本アニメに対する戦略は、ここに来て明確な変化を見せています。これまでは完成した作品を買い付けて独占配信するケースが主でしたが、現在は企画の初期段階から参画し、製作サイドと共同でコンテンツを開発するスタイルへと移行しています。例えば、MAPPAとのパートナーシップでは、アニメ制作だけでなく、グッズ開発やIPの多角展開といったメディアミックスも視野に入れた協力体制を築いています。

Netflixは世界190以上の国と地域でサービスを展開していますが、日本のような「アニメ+グッズ+イベント」という包括的なメディアミックスをグローバルで展開するのは、実は簡単ではありません。山野氏いわく、国によって視聴者の文化や背景は大きく異なるとのこと。例えば、原作漫画の存在を知らない地域ではキャラクターの動機を丁寧に説明する必要があったり、プロモーションも各地域に合わせたローカライズが不可欠です。例として『SAKAMOTO DAYS』では、海外向けに「原作未読でも楽しめる」ことを意識した特別プロモーション映像を制作したそうです。

Netflixのデータによると、海外の視聴者の約8~9割が「吹き替え版」でアニメを鑑賞しているそうです。さらに『超かぐや姫!』では、劇中歌も多言語(英語、フィリピン語、タイ語、スペイン語、ポルトガル語)で制作。単なる歌詞の翻訳にとどまらず、各言語の響きに合わせてリズムや歌詞を再構築するという、徹底したこだわりを見せています。

かつては「全権利の独占」を基本戦略としていたNetflixですが、こと日本のアニメに関しては、より柔軟な姿勢へとシフトしています。必ずしも全ての権利を自社で保有するのではなく、メディアミックス展開を得意とする企業と協業し、日本独自のビジネス生態系を尊重しながらIPの価値を最大化させる道を選んでいるのです。山野氏は、「ファンコミュニティの育成やクロスメディア展開において、日本のアニメ業界は世界の最先端を走っている。全てを自社で抱え込むよりも、その道のプロフェッショナルと組む方が、結果的に大きな成果につながる」と語ります。

▼ 実際、『超かぐや姫!』では関連グッズの展開も非常にスピーディーで、これは従来のNetflixの体制では難しかったことだと言えるでしょう。

まとめると、Netflixは「プラットフォーム主導」から「クリエイターとの共創」モデルへと、大きく舵を切っていることがわかります。

コンテンツの“買い付け”から“共同開発”へ

“独占”から“柔軟なパートナーシップ”へ

“配信”から“IPの統合プロデュース”へ

今後はアニメ本編だけでなく、映画、ゲーム、グッズといった多角的な展開が、Netflixのアニメ戦略の今後を占う上で重要な試金石となりそうです。

via: アニメ!アニメ!