『デジモンテイマーズ』25周年! 脚本担当・小中千昭氏が当時の設定を語る! 『serial experiments lain』のように、時を経て改めて観る価値があると語る

今年、テレビアニメ『デジモン』シリーズ第3作となる『デジモンテイマーズ』が、アニメ放送25周年という記念すべき節目を迎えました。当時のデジモンカードをテイマーがスキャンしてデジモンの戦闘能力を強化するシステムや、究極体への進化時に子どもたちがデジモンの一部となるという、斬新な設定が大きな話題を呼びましたね。

このたび、アニメ『デジモンテイマーズ』のシリーズ構成を務めた小中千昭氏への公式インタビューが実施されました。氏が作品に参加したきっかけから、物語やキャラクター設定のコンセプトまで、25年の時を経て改めてこの名作を振り返ります。

小中千昭氏の脚本は、SF色の強い作風が特徴的。『ウルトラマンティガ』や『ウルトラマンガイア』、『serial experiments lain』といった作品からも、SFへの深い造詣がうかがえます。初期にはホラー映画の脚本も多数手がけ、クトゥルフ神話や音楽に関する造詣も深い方なんですよ。

ここからは、公式インタビューの模様をQ&A形式でお届けします。

Q:今年『デジモンテイマーズ』は25周年を迎えました。今、改めてこの作品を振り返って、小中さんの中でどのような印象が残っていますか?

小中千昭氏:2018年にBlu-ray BOXがリリースされた際、特典ドラマCDの脚本を書かせていただいたのですが、それが2017年のことでした。その時、少し薄れていた『テイマーズ』の記憶が一気に蘇ってきて、個人的にも作品への熱が再燃した時期でしたね。

その後20周年を迎え、そして今回25周年。こうして長く皆さんに記念して、愛され続けていることに、本当に感謝しかありません。『デジモンテイマーズ』は、僕にとって唯一「少年たちの成長」というテーマに真正面から取り組んだ作品なんです。

Q:『デジモンテイマーズ』にシリーズ構成として参加されたきっかけを教えてください。

小中千昭氏:一番大きなきっかけは、『デジモンアドベンチャー02』第13話「ダゴモンの呼び声」を担当したことだと思います。話は初代『デジモンアドベンチャー』の制作期間にまで遡るのですが、当時、角銅博之監督がデジモンの登場キャラクターを選定する中で、ダゴモンに目をつけられたんです。クトゥルフ神話のダゴンを連想させるということで、「この回は小中さんに書いてもらおう」という話になったと聞いています。

そのエピソードが『02』の第13話になったのですが、関弘美プロデューサーもその創作過程をずっと見ていらっしゃったので、それが第3作への参加に繋がった一因ではないかと。それから、『テイマーズ』のシリーズディレクターは貝澤幸男さんです。以前、アニメ『ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー』でご一緒したことがあり、僕がシリーズ構成・脚本、貝澤さんが監督を務めていました。なので、再び貝澤さんと一年間アニメを一緒に作れるというのも、僕にとっては非常にやりがいのあることでしたね。本当にアイデアとセンスに溢れた方です。

Q:現実世界を舞台に、後半になるにつれてシリアスな展開が繰り広げられる『テイマーズ』は、シリーズの中でも異色の存在です。制作当時、特に意識されたことはありますか?

小中千昭氏:今も『デジモンビートブレイク』という作品を手がけていますが、当時としても、一年間かけてオリジナルストーリーをしっかり描ける作品というのは、そう多くありませんでした。玩具企画と連動しつつ、50話を超える長編作品だからこそ、その長尺の魅力を最大限に活かしたいと考えていましたね。

とはいえ、『デジモンテイマーズ』は前2作と完全に切り離された作品というわけではありません。世界観には繋がりがあり、例えばタカトは太一や大輔に憧れてデジモンが好きになった、という設定があります。つまり、『テイマーズ』は前2作の土台を受け継ぎつつ、全く新しい『デジモン』を創り出すことを目指した作品なんです。

Q:『デジモンテイマーズ』の大きな特徴として、デジモンが本当の意味での「パートナー」となり、舞台も現実世界に設定されています。これらのアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?

小中千昭さん:突き詰めると、私が描きたかったのは「 まだ未成熟な子供が、自分とは異なる存在とどう向き合うか」ということです。『デジモンアドベンチャー』では、戦闘時に子供たちはパートナーデジモンの戦いをそばで見守ることが多かったですよね。もちろんそれはそれで良いのですが、『テイマーズ』では、「人間がデジモンと共に戦い、共に生きていくとはどういうことか?」という点をさらに掘り下げたかったんです。タカトにとって、ギルモンは自分が想像し、創造した存在です。しかし、ギルモンは次第にタカトの思い通りには動かない、かけがえのない「他者」へと変わっていきます。そしてタカトもまた、その関係性の中で成長していくのです。

Q:タカト、ジェンリャ、ルキの3人のテイマーは、パートナーデジモンとの関わり方がそれぞれ全く異なります。キャラクターをデザインする上で、最も重視されたのはどのような点だったのでしょうか?

小中千昭さん:タカトは、太一や大輔のように最初から主人公オーラ全開のキャラクターにはしたくなかったんです。もっとごく普通の、一般の子供に近い存在として描きたかった。意図的に泣き虫にしたわけではないですが、今振り返ると、確かによく泣いていましたね(笑)。ギルモンと出会い、事件に巻き込まれていく中で、徐々に「自分がやらなきゃ」という意識が芽生えてくる。彼の成長は、冒険を通して一歩一歩積み重ねられていくものなんです。だからこそ、最初から従来の主人公像に当てはめるわけにはいかなかった。今思えば、これはかなり野心的な設定だったかもしれません。

他のキャラクターで言うと、ジェンリャのパートナーは好戦的なテリアモンですが、ジェンリャ自身はとあるトラウマから戦いをためらっています。そしてルキですが、女性のテイマーを登場させるからには、そのパートナーは十分に強くなければならないと考えました。レナモンのデザイン自体が、強さと冷静さを兼ね備えた雰囲気を持っていたので、ルキもそれに釣り合うキャラクターである必要があったのです。

そのため、物語の序盤では、

タカトはギルモンを自分が創り出した存在として見ている。

ジェンリャはテリアモンを戦わせることに躊躇している。

ルキはレナモンを強さを求めるための道具と見なしている。

というように、3人のスタンスは意図的に全く異なるものとして描かれています。そして物語が進むにつれて、彼らとパートナーとの関係性が徐々に変化し、最終的に本当の「パートナー」になっていくわけです。

Q:タカトとギルモンの関係は、パートナーであり、親子のようでもあり、また創造主と被造物のような側面も持っています。この関係性はどのように構想されたのでしょうか?

小中千昭さん:最大のキーポイントは、声優に野沢雅子さんをお迎えできたことだと思います。ギルモンはタカトが空想から生み出したデジモンですが、単に可愛いだけでも、ただ強いだけでもない。タカトの想像を徐々に超えて、一個の人格を持つ生命体として成長していきます。

その説得力は、野沢さんの演技によるところが非常に大きいのです。タカトは当初、ギルモンを自分の「作品」のように捉えています。しかし、やがて自分の作品ではなく、一個の意志ある生命なのだと受け入れていく。その過程で戸惑い、葛藤し、そして成長していく。そこが『デジモンテイマーズ』という作品の最大の魅力だと考えています。

Q:当初、留姫はデジモンを単なる力の象徴として見ていましたが、レナモンとの関係性が大きく変化していきます。この変化はどのように描かれたのでしょうか?

小中千昭:留姫個人の物語は、主に吉村元希さんが担当されていました。彼女がただ力を求めるだけの状態から、徐々に変化していく様は、吉村さんの脚本を読むたびに新しい発見がありましたね。レナモンは一見大人びて見えますが、実は人間の世界のことを何も知らないんです。留姫に寄り添う中で、人間の感情や距離感を学んでいく。だから、留姫だけが変わったのではなく、レナモンもまた成長しているんです。どちらか一方が影響を与えるのではなく、互いに影響し合い、変化し、最終的に本物のパートナーになっていくんです。

Q:『デジモンテイマーズ』は子供向けアニメでありながら、インターネットやデジタルワールド、生と死、恐怖といった深いテーマを扱っています。当時、そのテーマの深さは意識的に調整されたのでしょうか?

小中千昭:2001年当時は、まだ小学生が今のように日常的にインターネットに触れている時代ではありませんでした。ただ、『デジモンアドベンチャー』のおかげで「デジタルワールド」という概念はすでに浸透していましたね。ただ、前2作のデジタルワールドは、どちらかというと「異世界」という趣が強かった。そこで『テイマーズ』では、それを「本物のネットワーク空間」として再定義したいと考えたんです。

この発想は、1998年に私が手掛けた『serial experiments lain』での経験も活きています。子供たちには少し難しい設定があることも分かっていました。でも、私は常々「すべての物事を、一度見ただけで完全に理解する必要はない」と考えています。子供の頃に「なんだかカッコいい」と感じたものが、大人になって見返した時に初めてその真意を理解できる。そんな、何度も味わえるような作品として『テイマーズ』が残ってくれたら嬉しいなと。

Q:最後の敵であるデ・リーパーは、これまでの敵とは一線を画す存在でした。なぜこのようなデザインになったのでしょうか?

小中千昭:ラスボスを、また別の邪悪なデジモンにはしたくなかったんです。『テイマーズ』ではデジタルワールドを広大なネットワークとして描いているわけですから、デジモンたちのさらに外側に、彼らさえも恐れる存在がいてもおかしくないだろう、と。デ・リーパーはタカトたちだけが立ち向かう相手ではなく、デジモンも、そして大人たちも一丸となって戦うべき脅威です。デジモンが「この世界に生きる生命」として確立されたからこそ、「もしこの世界そのものが本当の危機に瀕したら、一体どうなるのか?」という問いを投げかける必要があったのです。

Q:制作期間中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?

小中千昭:やはりインプモンとベルゼブモンの存在は忘れられませんね。実は当初、インプモンを主役のパートナーにするという案もあったんです。ですが、私は初代の『アグモン』のように、子供とモンスターが出会う物語を描きたかった。それで、ギルモンが生まれました。とはいえ、インプモンも一度は主役候補だったわけですから、ただの脇役で終わらせるわけにはいきません。そこで、彼がベルゼブモンへと成長していく物語を用意した結果、作品全体でも屈指のキャラクターアーク(物語性)を持つことになりました。この部分は、脚本の前川淳さん、演出の芝田浩樹さんのお力添えがあったからこそ、私一人では到達できない高みに引き上げていただけました。

Q:レオモンの犠牲も含め、ベルゼブモンの物語は非常に印象的でした。

小中千昭:あの展開は確かに残酷でしたが、この事件がなければベルゼブモンの物語は成立しませんでした。同時に、啓人(タカト)が成長するための重要なターニングポイントでもあります。感情が暴走した時、力がどれほど危険なものになりうるのか、それを子どもたちにも感じてほしかったんです。

Q:カードスラッシュも『デジモンテイマーズ』を象徴する要素ですよね。

小中千昭:カードで戦うという案が出た時、アニメでどう表現するかを考えました。ただカードを出すだけでは絵的に地味になってしまう。そこで、データをダウンロードする演出をカッコよく見せるために「カードスラッシュ」というアクションが生まれました。ですが、実際に完成した映像は私の想像をはるかに超えていましたね。あのお決まりのバンクシーンは本当に素晴らしく、今見てもまったく色褪せません。

Q:物語の展開は、最初からすべて決まっていたのでしょうか?

小中千昭:いえ、大まかな方向性は決まっていましたが、細かい部分は作りながら発展させていきました。例えば、樹莉(ジュリ)が最終的にレオモンとパートナーになることは、当初は決まっていなかったんです。「こういう展開なら、次はこうできるんじゃないか?」と皆で話し合いながら、少しずつ物語を紡いでいきました。ですから『デジモンテイマーズ』は、私一人の作品というより、まさにチーム全員で作り上げた作品だと感じています。

Q:25年経った今でも多くのファンに愛されている『デジモンテイマーズ』ですが、これから初めて見る視聴者には、作品から何を感じ取ってほしいですか?

小中千昭:南米やドイツに熱心なファンが多いことは知っていましたが、昨年上海に行った際には、中国のファンの方々ともお会いしました。そこで改めて『デジモンテイマーズ』が世界中の人々に大切にされているんだなと実感しました。この作品は後半の展開が非常に重く、単発のエピソードよりも一年を通した長大な物語を重視したため、放送当時は評価が二分したのも事実です。しかし、だからこそ私たちは、一生忘れられないような作品を作りたいという想いが強かった。それが、25年経った今でも皆さんの記憶に残っている理由なのかもしれません。現在、25周年を記念してYouTubeで毎週2話ずつ無料配信されています。当時見ていた方も、初めて触れる方も、この作品を好きになっていただけたら嬉しいです。

Q:最後に、小中さんにとって『デジモンテイマーズ』とは、どのような作品でしょうか?

小中千昭:制作当時は、決して楽しいことばかりではありませんでした。悩みも多かったですし、私自身もかなり頑固な人間でした。しかし、だからこそ本気で作品に向き合えましたし、スタッフ全員が全力を尽くしてくれました。今のアニメの作り方とはもう違うのかもしれませんし、私の創作スタイルは、少し古臭いと思われるかもしれません。ですが、もし子どもの頃に見てくれた人が、大人になってから見返した時に、また新たな発見をしてくれるような。

『デジモンテイマーズ』がそんな深みのある作品としてあり続けられるなら、これほど嬉しいことはありません。25年という時を経ても、なお多くの人の心に残り、さらには新しい視聴者にも届いているということに、心から感謝しています。

via: デジモンアニメポータル