『ちいかわ 人魚のしまのひみつ』ナガノ先生スペシャルインタビュー公開! 次回作は「島二郎の話をやりたい」と告白!

『ちいかわ 人魚のしまのひみつ』が2026年7月24日に劇場公開され、その興行収入はなんと公開からわずか2週間で50億円を突破! まさに大ヒットを記録しています。

この度、公開前に原作者のナガノ先生が語ったスペシャルインタビューが公開されました。映画制作への参加経緯や、「セイレーン」「島二郎」といったキャラクター誕生秘話、さらにはキャスト選定の裏側まで、貴重なエピソードが盛りだくさんです!

今回の劇場版『ちいかわ 人魚のしまのひみつ』では、ナガノ先生が制作のあらゆる工程に完全投入されたとのこと。ご自身の作品を最高の形で届けたいという熱い想いが伝わってきますね。以下、Q&A形式でインタビュー内容をお届けします!

※本インタビューは映画公開前に実施されたものです。

劇場版について

Q:今年、『ちいかわ』初の劇場版が公開されますが、率直な今のお気持ちはいかがですか?

ナガノ:映画館で上映されるということで、すごく緊張していますし、同時にめちゃくちゃ楽しみです。もし可能なら、皆さんと一緒に映画館で観たいなって思っています。今回の劇場版は、僕にとって初めてのことだらけで、まさに手探り状態でした。最初は「そもそも劇場版ってやるの?」「本当にできるの?」っていうところから始まったんです。

嬉しい悲鳴ではあるんですけど、やるからには絶対に良いものにしたくて。制作中は「どうしたらもっと良くなるんだろう?」ってずっと悩んでいましたね。2023年に漫画を描き始めてから、映画が公開されるまでの間、ずっと自分の時間が2023年で止まっているような感覚で、全然前に進んでいない気がしていました。だから、僕にとっては、映画が7月24日に公開されて初めて、「あ、やっと2024年になったんだ」って感じたんです。

Q:映画制作チームとはどのようにコミュニケーションを取られましたか? 先生から要望されたことはありますか?

ナガノ:まず、一番こだわったのは、キャラクターたちのイメージを壊さないことです。例えば、ちいかわとハチワレがチラシを見ているシーンで、ちいかわが横から手を伸ばす時、「サッと奪い取る」みたいな感じにはしないでほしい、とお願いしました。他にも、作画に関しては、特にキャラクターの表情について、眉の角度や口の開き具合など、かなり細かい部分まで要望を出させていただきました。定期的に打ち合わせもしていましたし、直接会うこともあれば、アフレコ時にはリモートで参加することもありましたね。

映画の内容についても、漫画のどのシーンを削って、どの部分を増やすか、といったことを一緒に話し合いながら調整していきました。及川啓監督が飴を食べる時、口に入れてから噛み砕くまでのスピードがめちゃくちゃ速くて、きっとたくさん飴を噛んでいらっしゃるんだろうな、っていつも思っていました。なんで知ってるかって? リモート会議中に、たまに「カリッ……」って飴を噛む音が聞こえてくるんですよ。でも、その飴を噛む音を聞くと、なぜかすごくリラックスできて、「映画公開に向けて頑張ろう!」って気持ちになれるんです。

僕自身、漫画をアニメにする時、このシーンが最終的に何分になるのかとか、どれくらいの「間」があれば視聴者の方が心地よく感じるのか、正直分からないんです。でも、監督にはアニメになった時の時間の流れがもう見えているんだろうな、っていつも感じていました。僕が「ここは削ってもいいかな」って思っていた大事な部分を、監督が「ここは残しておいた方がいいですよ」って止めてくださることもあって。本当にこの作品やキャラクターたちの良さを深く理解してくださっていて、原作をすごく大切にしてくださっているのが伝わってきました。及川監督のあの穏やかな雰囲気が、今回の映画にも『ちいかわ』らしい空気感をもたらして、作品全体をすごく良い形で繋いでくださったんだなって思います。

総作画監督の辻智子さんや前川葵さんをはじめ、アニメーターの皆さんには、本当に細かい部分までお願いをしました。そんな状況でも、皆さんが最高の作品にしようと尽力してくださって、本当に感謝しかありません。プロデューサーの今福太郎さんは、食事に使うフォークを腕に巻き付けているんですが、そこがまた良いんですよね。いざという時には、地面を掘るのにも使えますし(笑)。僕のたくさんの要望に、かなりご苦労されたんじゃないかと思います!それでも、たくさんの要望を叶えてくださって、作品に真摯に向き合ってくださるのを感じました。

Q:今回の劇場版制作には、どの程度関わられたのでしょうか?

ナガノ:作画や絵コンテなど、かなり細かい部分まで確認させていただきました。アニメ映画を手がけながら漫画の連載も続けていらっしゃる原作者の先生方は、ご自身の作業もあるので、どうしても制作現場から離れなければならない瞬間があると思うんです。

それに比べて、僕の場合はかなり深く関われる状況だったので、逆に「 どのくらいの距離感で関わるのが正解なんだろう?」と悩んでしまいました。でも、後悔だけはしたくなかったので、できることはすべて全力でやらせていただきました。

キャラクターのキャスティングについて

Q:島二郎、セイレーン、一葉、二葉のキャストはどのように選ばれたのでしょうか?

ナガノ:声優さんを選ぶにあたっては、もちろんキャラクターのイメージに合うかどうかという点も大事ですが、その方自身がどんな人なのか、例えばどんなものが好きなのかといった細かい部分まで知るようにしています。

セイレーン

セイレーンは、可愛らしさと恐ろしさの両方を表現できて、なおかつ歌が上手な方がいいなと思っていました。そのイメージに鈴木実里さんがピッタリだったので、お願いすることにしました。歌唱オーディションでの、ビブラートの美しさが決め手になりましたね。

一葉と二葉

一葉と二葉のキャスティングは、本当にたくさんの方が熱心にオーディションに参加してくださったので、一番頭を悩ませました。見た目はそっくりな二人ですが、それぞれに個性があります。セリフがない中でも二人の性格をしっかり掴んで演じてくださった、寺澤百花さんと鈴代紗弓さんにお願いすることにしました。お二人には、

「一葉は少しぼーっとしていて、どこか抜けている感じ。二葉はしっかり者で、落ち着いている感じ」

でお願いします、とお伝えしました。

島二郎

島二郎は、最上嗣生さんのお声がキャラクターにピッタリだったのはもちろんですが、Xのアカウント名が「日本酒舐郎」だったことも、決め手の一つになりました。イメージしていた通りの声で島二郎が話しているのを見たときは、本当に嬉しかったですね。特に水中の島二郎は、最高でした。

人魚役の大木咲繪子さん、七瀨彩夏さん、南雲希美さんも、時間をかけてじっくり選ばせていただきました。アフレコでは、テレビシリーズからずっとお世話になっている音響監督の土屋雅紀さんが、私たちが表現したいニュアンスや細かな感情を、声優の皆さんに的確に伝えてくださいました。

オープニング(OP)映像について

Q:OP映像の原案は、どのようなコンセプトで制作されたのでしょうか?

ナガノさん:『ちいかわ』のテレビアニメは短いのでOPがありません。なので、「もし『ちいかわ』にOPがあったらこんな感じがいいな」というのを考えました。

映画ということで、初めて『ちいかわ』に触れる方もいらっしゃると思ったので、キャラクター紹介や世界観が伝わるようなOPにしたいという思いもありました。私自身、アニメのOPが大好きなので、今回携わることができて本当に嬉しかったです。

Q:劇場版ならではのアニメーションの見どころを教えてください。

ナガノさん:とても綺麗な背景や、メインで話していないキャラクターが後ろで動いているところ、特にうさぎに注目です。また、原作にはない映画的な構図や“間”も、アニメならではの魅力だと思います。

映画の冒頭、ちいかわとハチワレとうさぎが木を囲んでわちゃわちゃしているシーンは、特に映画らしさを感じました。実際にアニメーションになったものを見たときは、本当に感動しましたね。セイレーン登場時の歌唱シーンや、うさぎのラップも、かなり力を入れて作っていただきました。あと、声優さんたちのアドリブのセリフが入っている箇所もあって、個人的に大好きなポイントです。

ほかにも見どころはたくさんあります!特に戦闘シーンはすごく迫力があって、原作のマンガではなかなか表現しきれないラッコさんの強さが、よりダイレクトに伝わるんじゃないかと思います。キャラクターたちの体の動きや心の動きに、それぞれ音楽がついているので、そういった部分にも注目していただけると嬉しいです。言葉ではなかなかすべてを伝えきれないのですが、ぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。

キャラクターについて

Q:セイレーンと島二郎は、どのようにして生まれたキャラクターなのでしょうか?

ナガノさん:大きくてかわいいキャラクターを作りたいなと思って、セイレーンは「あのこ」みたいなフォルムを目指して作りました。ラフの段階ではキャラクターのフォルムがまだ固まっていなかったので、とりあえず「あのこ」をセイレーンの位置に置いていたんです。頭は犬張子をモチーフにしていて、下半身は赤くて金魚のようなイメージです。

島二郎は、「どうしたら頼りになりそうに見えるか」を考えて、今の形になりました。

Q:「セイレーン編」を描き始めた当初の構想から、変更された点はありますか?

ナガノさん:最初のラフでは、一葉と二葉は顔もセリフもあるキャラクターだったんです。でも、「ちょっとしゃべりすぎだな」と思って。セリフのないキャラクターのほうが自分でもしっくりくるので、最終的に顔もセリフも直接は見聞きできない形に変更しました。

島二郎は登場する予定ではありませんでした。でも、頼りになる仲間が欲しかったので登場させることにしました。実は当初、「酒まんじゅう」という、くりまんじゅうにそっくりな島の村長のようなキャラクターが登場する予定だったんです。でもその案がなくなって、結果的に島二郎という新しいキャラクターを増やすことができてよかったなと思っています。

音楽について

Q:映画の音楽について、どのようなオーダーをされたのでしょうか?

ナガノさん:音楽に関しては、TVアニメ版から引き続きトクマルシューゴさんにお願いしたいという希望があり、最終的にトクマルさんと上水樽力(かみみずたる ちから)さんに担当していただくことになりました。オーダーとしては、まず「島のテーマ曲」を1曲決めて、そのアレンジバージョンを劇中のいろいろなところで流してほしい、というものでした。「なんかおいしいものをたべる♬」のメロディが劇中の色々なところで流れるので、そこに気づいてもらえると嬉しいですね。

セイレーン登場シーンのミュージカル調の雰囲気もすごく良くて、特にセイレーンが顔を見せる前、ちいかわとハチワレの後ろ姿からグッと迫っていくところは、めちゃくちゃカッコいいのでぜひ聴いてみてほしいです! BGMはどれもおすすめなんですが、特に「ふたりのひみつ」と「出航の朝」がお気に入りです。

Q:完成したオープニングとエンディングについてはいかがでしたか?

ナガノさん:OPとEDは、こちらで先に作詞したものをトクマルさんに作曲していただく形でした。どちらもトクマルさんが素晴らしい楽曲に仕上げてくださって、最初のデモ音源を聴いたときは本当に感動しました。そこからどんどんアレンジが加わって、曲が完成していく過程を見られたのもすごく良かったです。

OPは、タイトルが出る前の迫力あるイントロから、『ちいかわ』の世界観を感じさせる雰囲気まで、両方を表現されていて本当にすごいなと思いました。EDは、ちょっと南国っぽい雰囲気があって、こちらもすごく好きです。特に、曲が終わった後の最後のフレーズが、「本当に映画が終わっちゃうんだな」という感じがしていいんですよね。

最後に

Q:以前から「いつか『ちいかわ』を映画にしたい」という思いはありましたか?

ナガノさん:そもそも『ちいかわ』がTVアニメになったこと自体が、自分にとっては衝撃的なことだったので、「さらに映画も!」とは、当時は特に考えていませんでした。自分の中で、『ちいかわ』と映画というものが、あまり直結していなかったんです。

「『ちいかわ』がTVアニメで放送されている」ということを実感するのに、2、3年かかりましたから(笑)。なので、今回の映画も、実際に「映画が公開されたんだな」と実感できるのは、また2年後くらいかもしれません。

Q:観客の皆さんには、どのように映画を楽しんでほしいですか?

ナガノさん:キャラクターたちの可愛くて面白いところを見て、純粋に楽しんでいただけたら嬉しいです。もし小さなお子さんが観てくれたなら、大人になったときに「昔、こんな映画を観たな」と思い出してくれたらいいなと思います。頭の片隅にこの映画の記憶が残っていて、将来何かを作りたいと思ったときの、その土台のひとつになってくれたら嬉しいです。自分自身、昔観たアニメ映画がずっと心に残っているので。

Q:今後、『ちいかわ』の映画がまた観られる可能性はありますか?

ナガノさん:今回は「これが最初で最後」という気持ちで、やれることはすべてやりきったつもりです。でも、もしまた機会があるとしたら……島二郎が主役の映画を撮りたいです! 内容は「島二郎とオデが、めちゃくちゃに殴り合う話」です。


via: 『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ