
2026年10月17日、フランス各地で大規模なデモが発生しました。一部地域では夜になると放火や店舗への略奪といった暴動に発展し、『ポケモン』カードの専門店やゲームショップも被害に。ニースでは、略奪を食い止めようと店先に立ったゲームショップの店員が背後から飛び蹴りを受け、その様子を捉えた映像がネット上で注目を集めています。
今回の抗議活動は、生活費の高騰や公共サービスの質の低下などに対する不満を背景としたものです。フランス内務省によると、全国で約55万人が参加。大半は平和的に行われましたが、一部の参加者が警察と衝突し、店舗も破壊の標的となりました。
リールにあるトレーディングカード専門店「Le Coin des Barons」には、騒乱のさなかに集団が侵入。商品を奪われた後、店舗で火災が発生しました。ネット上に投稿された映像には、数百枚もの『ポケモン』カードが路上に散乱する光景が映っています。同店では普段、『ポケモン』『遊☆戯☆王』『ONE PIECE』などのトレーディングカードを販売しており、火災によって甚大な被害を受けました。店側によると、犯人らは防護ガラスを破壊して侵入し、約15分間にわたって商品を略奪。その後に出火したことから、店側は何者かが故意に火を付けたとみています。
一方、ニースにあるゲームショップ「Micromania」も略奪の被害に遭いました。店長のピエール・コランさんは、群衆の侵入を防ごうと入口に立ちはだかります。そのすぐ隣に貼られていたのは、『ドラゴンボール』の孫悟空のポスターでした。この写真は瞬く間にSNSで拡散され、ピエールさんは「ニースの悟空」(Goku de Nice)と呼ばれることに。さらに、その姿をアニメキャラクターやトレーディングカード風にアレンジしたファンアートまで登場しました。

報道によると、ピエールさんは店内へ戻ろうとした際、突然背後から飛び蹴りを受けたとのこと。後の取材では、「私はただ店の前に立ち、彼らが中へ入るのを止めようとしただけです。それだけです」と説明しました。また、暴力を振るったのはあくまで一部の人間であり、デモ全体を代表するものではないとも強調しています。
フランスの「RTL」が10月19日に報じたところによると、ピエールさんは事件当日、もともと休暇中でした。しかし、店舗に何者かが侵入して荒らしていると元従業員から連絡を受け、現場へ急行したといいます。当初は商品を守るために危険を冒すべきではないと考えていたものの、破壊された店を見て笑う人々の姿を目にし、ついに我慢できず止めに入ったと振り返りました。
「何より悔しかったのは、彼らが笑っていたことです。ある瞬間、とうとう我慢できなくなりました。でも、決して賢明な判断ではありませんでした」。幸い、ピエールさんは軽い擦り傷と捻挫を負っただけで、深刻なけがはありませんでした。
ネット上で英雄視されていることについて、ピエールさん本人はいたって謙虚。ほかの店舗関係者に対し、商品を守るために自分の身を危険にさらしてはいけないと呼びかけています。
店舗の今後については、地元ラジオ局「Nostalgie Nice」の取材に対し、従業員とともに現場の清掃や商品の整理を始めていると説明。商品の供給と配送体制が回復し次第、営業を再開する予定です。各方面から寄せられた心配や応援の声に感謝する一方、ネット上ではピエールさんの名前を無断使用した募金活動が複数確認されているとして注意を呼びかけました。本人はいずれの募金にも関与しておらず、許可も出していないため、詐欺に遭わないよう警戒してほしいとしています。
このほか、パリでも漫画やゲーム、模型を扱う複数の店舗が略奪され、商品や設備に被害が出ています。フランスの小売・流通業界団体は、約1500店舗が襲撃されたと推計。2026年10月19日時点の報道では、逮捕者は2500人を超えています。ローラン・ニュネス内相は、警察が一時的に状況を制御できなくなったことを認めて辞表を提出しましたが、エマニュエル・マクロン大統領は受理しませんでした。