2025年4月から半年間にわたって開催される「2025年日本国際博覽会」(大阪・関西万博)。国家的なビッグイベントとして準備が進められていますが、想定を上回る予算投入などもあり、世間からの風当たりは決して弱くないのが現状です。
そんな中、最近公開された「2億円トイレ」が、そのシンプルな見た目から「キャンプ場の仮設トイレみたい」などと酷評され、大きな話題に。これに対し、設計を手がけた一級建築士の米澤隆氏が3月16日、自身のX(旧Twitter)で“火消し”に登場! 予算の「中抜き」疑惑やデザインの意図について自ら説明し、大きな注目を集めています。

▼ 最近、メディアによって万博トイレの一部写真が報じられると、ネット上では「これで2億円は税金の無駄遣い」といった批判が殺到しました。

米澤氏は、「大阪・関西万博のトイレ5について、一部の写真が流出したことで『チープに見える』、『工事費が中抜きされているのでは』といった疑念が生じ、社会に混乱を招いています。設計者として、この件について説明させていただきたいと思います」と切り出しました。
そして、ネット上で拡散されている写真はトイレ5の一部に過ぎず、実際には建物全体で46室のトイレがあると写真付きで説明しました。
多くの人が「トイレ1つに2億円」というフレーズに驚き、「万博の高級トイレ」「デザイナーズトイレ」といったイメージを抱いてしまったため、実際の建物とのギャップから「安っぽく見える」という批判につながったと分析しています。
しかし、大阪府の吉村洋文知事の説明によると、これらは一般的な公衆トイレではなく大規模な施設とのこと。2カ所の主要トイレの建築単価は1平方メートルあたりそれぞれ77万円と64万円。2021~2022年の公共建築調査における公衆トイレの平均単価が98万円/平方メートルであることから、万博のトイレはむしろ平均よりコストを抑えており、超豪華仕様というわけではないようです。
米澤氏は、「わずか半年の会期のために巨額の予算を投じることへの疑問は理解できます。設計段階から、どうすれば無駄を減らせるか、皆さんと同様に悩んできました」と共感を示した上で、「高価な材料で高級トイレを作る(もちろん予算的にも無理ですが)、よりも、シンプルな材料を使い、解体・移設・再構築が可能な設計にすることで、万博終了後も価値を発揮し続けられるようにする。それが合理的な解決策だと考えました」と付け加えました。
米澤氏の説明によると、このトイレは様々な形や色のモジュール化された部材で構成されており、会期終了後はブロックのように分解し、公園や広場などに移設して、現地のニーズに合わせて再組み立てできるとのこと。「個々のモジュールや個室だけを見ると確かにシンプルですが、ブロックのように色や形を組み合わせることで、より豊かな空間を生み出すことができるのです」と強調しました。



また、公共事業であるため、経費や業者の選定は厳格な手続きに則っていると説明。工事予算は公的な調査データや市況に基づいて上限が設定されており、超過はあり得ないとのこと。施工業者も一般競争入札で決定され、価格は市場原理によって適正化されます。事実、この「トイレ5」の工事は2度も入札が不成立となり、3回目でようやく落札された経緯があります。「もしこの案件が本当に“おいしい”仕事なら、2回もスルーされるはずがないですよね? これが、随意に懐を肥やせるような案件ではないことの証明です」と訴えました。
さらに、当初の予算は2億円近くだったものの、世論の批判を受け、3回目の入札では建材のグレードを下げて予算を再検討。最終的な落札金額は、解体費用を含めて税抜きで約1.5億円まで圧縮されたことも明かしました。「この件について様々なご意見があることは承知していますが、批判の前に、まずは設計の背景にある理念や制約をご理解いただければ幸いです。機会があれば、ぜひ万博会場へお越しいただき、ご自身の目でこのトイレの全貌をご覧ください。そうすれば、より深くご理解いただけると信じています」と呼びかけました。
この問題に関心をお寄せいただき、ありがとうございます。この説明で、少しでも実情が伝われば幸いです。

この設計者本人による丁寧な説明に、ネットユーザーからは「誠意を感じる」といった声が多数寄せられています。確かに、公共事業は何かと批判されがちで、特に万博のような注目度の高いイベントではなおさら。「2億円トイレ」というキャッチーな見出しだけが独り歩きしてしまい、悪いイメージを持たれがちでした。しかし、こうした設計思想や将来的な活用計画が示されたことで、コストに見合う設計なのかどうか、多くの人が納得したようです。

もちろん、デザインの良し悪しは個人の感性に左右される部分もありますが、設計者自らが声を上げ、メディアの不正確な情報を正したことで、「2億円トイレ」が本当に常識外れなものなのか、多くの人が再考するきっかけになったのではないでしょうか。
via: togetter