新作アニメ『アン・シャーリー』のキャラ設定に物議! 原作翻訳者が「原作と違う」と複数箇所を指摘、改善を求める

カナダの作家L・M・モンゴメリによる不朽の名作『赤毛のアン』(Anne of Green Gables)。これを原作としたアンサー・スタジオ制作の完全新作TVアニメ『アン・シャーリー』が、昨日4月5日より放送を開始し、多くのファンがこの新たなアニメ化に期待を寄せていました。

ところが放送開始早々、SNS上ではこの新作アニメ『アン・シャーリー』のキャラクター設定を巡ってファンから不満の声が噴出。さらには、『赤毛のアン』の新訳版を手がけた翻訳家の松本侑子氏までもが言及し、今回のアニメ化における数々の問題点を指摘する事態となっています。

多くのネットユーザーが疑問視しているのは、主人公アン・シャーリーがなぜピンク色の服を着ているのかという点。「制作陣は本当に原作を読んだのか?」と、原作の設定が軽視されていることに悲しむ声が上がっています。

(原作の舞台である19世紀の欧米社会には、「金髪には青、茶髪には赤が似合うが、赤毛の女性が赤やピンクを着るのは野暮」という暗黙の美意識がありました。そのため、高畑勲監督版のアニメ『赤毛のアン』では、紫色の服が採用されていました)

この議論が広がる中、原作小説の翻訳家である松本侑子氏が自身のSNSで反応。最新アニメ版『アン・シャーリー』に対し、複数の考証上の意見を投稿し、アニメの内容に原作と明らかに異なる点が多く見られると指摘しました。

まず、原作ではアンが持っているカバンについて「shabby, old-fashioned carpet-bag(古びて流行遅れのカーペット生地の旅行カバン)」と明確に描写されています。初期の村岡花子訳でも「古ぼけた手提げ」と訳されていました。

しかし、アニメではアンは「ハードタイプの革製スーツケース」を提げています。これは時代背景にそぐわないだけでなく、アンが「孤児」であるという設定とも矛盾します。このようなスーツケースは高価で重く、ポーターに運んでもらうのが普通で、小さな女の子が一人で持てるようなものではありません。松本氏は、19世紀に流行したカーペットバッグは安価で丈夫かつ軽量で、デザインも豊富なため女性に人気があったと補足。高畑勲監督版のアニメやカナダの映画、さらには公式サイトであるグリーン・ゲイブルズに展示されている小道具も、すべてこの布製のカバンで統一されています。

さらに、アンがピンク色のワンピースを着ている点についても、松本氏は「原作の精神に完全に反している」と断言します。

村岡花子訳では「赤毛の人間は、想像のなかでさえ、ピンク色の服を着ることはできないのです」とされています。原文は "Redheaded people can’t wear pink, not even in imagination." です。

19世紀の欧米社会には、「金髪には青、茶髪には赤が似合うが、赤毛の女性が赤やピンクを着るのは野暮ったい」という、一種の暗黙の美意識がありました。

松本氏は、「現代ではこうした美意識は薄れていますが、アニメが原作に忠実であることを謳うのであれば、このような重要なディテールを安易に変更すべきではない」と指摘。さらに、自身がこのアニメの考証コンサルタントとして協力し、原作を尊重した真に国際市場で通用する作品作りを手伝いたいとの意向も示しています。

松本氏は続けて、アンの親友であるダイアナが「青い目」で描かれている点も指摘。原作では "She has black eyes and hair and rosy cheeks."(彼女は黒い目と黒い髪をしていて、頬はバラ色だ)とあり、村岡花子訳でも「目はまっ黒で、ばら色のほっぺた」と訳されています。

松本氏によれば、ダイアナは北アイルランド系の「ブラック・アイリッシュ」という設定で、黒髪と暗い色の瞳が特徴です。作中では数少ないダークカラーのキャラクターであり、そのキャラクターイメージと青い目はそぐわないとのことです。

▼ 『アン・シャーリー』のダイアナ

▼ 高畑勲監督版アニメのダイアナ

松本氏は、自身のスタンスについて「あら探しをする糾弾団というよりは、『アン・シャーリー』というアニメの応援団です」と語ります。「ただ、モンゴメリの不朽の名作『赤毛のアン』が、21世紀の新しい技術と素晴らしい美術で、原作に忠実かつ魅力的なアニメ作品になってほしい。世界中で賞賛される傑作アニメになってほしい! それが私の心からの願いです!」と、作品への愛ある故の提言であることを強調しました。

これらの指摘を受け、ネット上では「制作チームが原作を尊重せず、時代考証を軽んじるなら、本当にがっかりだ」「これほどの有名作品なのに、放送が始まったばかりでこの状況では先が思いやられる」といった声が上がっています。

このような「原作設定との相違」を巡る改変の数々は、大きな議論を巻き起こしています。原作ファンからは「細かい部分かもしれないが、作品全体の雰囲気を左右する重要な要素。制作陣には、原作者の意図とキャラクター造形をもっと尊重してほしい」と、今後の改善を望む声が多く寄せられています。

via: togetter