子供の頃に遊んだガラスのビー玉や、夏祭りの定番「ラムネ」を飲むときにカラコロと涼しげな音を立てる、あのビー玉。この一見なんてことないビー玉が、実は戦後日本の職人技が凝縮された結晶であり、5月4日が「ラムネの日」として制定されていることをご存知でしたか? しかし今、このビー玉が深刻な存亡の危機に直面しているのです。
TBS NEWS DIGの報道によると、現在、国内で唯一ビー玉を生産している松野工業が悲鳴を上げています。なんと、ラムネはこの10年間で生産数が4倍以上に激増し、まさに爆売れ状態。それなのに、肝心の「ビー玉本体」の供給が全く追いつかないという、まさかの事態に陥っているのです!

全国ラムネ協会のデータによると、その伸びは一目瞭然です。
2014年産量:約 3,500 万瓶
2024年産量:約 1 億 3,972 万瓶
この爆発的な人気の背景には海外輸出の急増があり、なんと生産量の9割が輸出向けだとか! 日本のラムネが世界で愛されているのは嬉しいニュースですが、その一方で、瓶の口を塞ぐのに不可欠な「ガラスのビー玉」が供給不足に陥り、新規の注文を断らざるを得ない状況だといいます。

松野工業によれば、戦後には国内に17ものビー玉工場が存在したそうですが、激しい価格競争や産業構造の変化の波にのまれ、次々と姿を消していきました。そして現在、国内でビー玉を製造しているのは、宮崎県門川町にある同社の「門川工場」ただ一箇所のみ。子供たちが遊ぶ玩具のビー玉から、インテリア雑貨、ラムネ用、さらには工業製品に使われるものまで、一手に引き受けているのです。
中でも特に製造が難しいのが、何を隠そう「ラムネ用のビー玉」なのだとか。ラムネのビー玉は、炭酸ガスを閉じ込める「栓」の役割を果たすため、ただ丸いだけではダメ。「真球」であることが求められます。もし内部に気泡が混入していたり、形状がわずかでも歪んでいたりすると、製造過程や輸送中の衝撃で破損する恐れが。万が一、破片が飲み物に入ってしまっては一大事です。

その製造工程は極めて繊細で、多くのノウハウが「企業秘密」。重要なのが、溶けたガラスの温度管理です。温度が低すぎれば不純物が混じり、逆に高すぎるとうまく成形できません。さらに、日々の天候や気圧の変化さえも品質を左右するのだそう。例えば、冬場に搬入作業で工場のシャッターを長時間開けていると、室内の気圧が変化し、ビー玉の寸法に影響が出てしまうこともあるというから驚きです。

松野工業の職人さんは、ビー玉についてこう語ります。「このビー玉たちは、自分の役目を終えたら静かに去っていき、その存在すら忘れられてしまう……。そんな健気な子供のようで、少し可哀想に思うんです」
ビー玉作りは、まさに戦後日本のものづくり技術の象徴。職人さんたちは、この技術を絶対に絶やしてはならないと強く語ります。今後も技術を次世代に継承し、ビー玉の新たな可能性や魅力を探っていきたいとのこと。これからますます暑くなりますが、次にラムネを飲む機会があったら、ぜひ瓶の中で輝くビー玉に注目してみてください。その小さなガラス玉には、メイドインジャパンの魂と職人たちの熱い想いがギュッと詰まっているのですから。

via: TBS NEW DIG