『週刊少年サンデー』連載作家が担当編集の“怠慢”を告発 「掲載順が不自然」「セリフ改変も」と訴え、大きな波紋を呼ぶ

現在、小学館『週刊少年サンデー』で『シテの花-能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-』を連載中の漫画家・壱原ちぐさ先生が、自身のX(旧Twitter)で作品の「掲載順」に関する不満を吐露し、大きな話題を呼んでいます。人気アンケートの結果が待遇に全く反映されていないと感じており、さらには担当編集者による校正の未提出、セリフの無断改変、そしてまさかの「入稿忘れ」といった信じがたい事態が起きていたことを告白。この投稿は瞬く間に拡散され、漫画業界が抱える問題として多くのネットユーザーの注目を集めています。

『シテの花-能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-』は、日本の伝統芸能である「能楽」をテーマにした珍しい作品です。「能楽」は、能面と呼ばれる仮面をつけて演じられる古典歌舞劇で、鎌倉時代後期から室町時代初期にかけて大成した、日本が世界に誇る舞台芸術の一つです。

壱原先生によると、読者アンケートでは平均7位前後とかなり好成績を収めているにもかかわらず、なぜか作品はいつも『週刊少年サンデー』の誌面後方に掲載されているとのこと。その理由について先生は、前任の担当編集者が入稿をたびたび遅らせていたため、編集部内で「常習的に原稿が遅れる作家」というあらぬ誤解が生まれ、作品を前の方に掲載してもらえないのではないかと推測しています。

もちろん、作品の掲載順や巻頭カラーなどは、読者アンケートの結果だけで決まるものではなく、作家の信頼度や単行本の売上、ページ数の都合、雑誌全体の作品ジャンルのバランスなど、様々な要因が複合的に考慮されることは理解していると前置き。しかし、それを差し引いても、自身の作品のアンケート順位と実際の掲載位置の乖離(かいり)が大きすぎると感じているそうです。

前任編集者の入稿遅延については、次のように語っています。

入稿プロセスには、作家がセリフのフォントや写植を確認する工程がありますが、何度も催促しないと動いてくれず、締め切り翌日にようやく対応するという状況が頻発していたとのこと。さらに信じがたいことに、セリフを勝手に改変されるといった事態まで発生。「これはさすがにマズイでしょ…」と感じるレベルだったと明かしています。

その後、後任の編集者がこの異常な状況に気づき、前任者に理由を尋ねたところ、返ってきたのはなんと「あ、えーっと…入稿、忘れてました」という衝撃の一言。悪意はなかったにせよ、「忘れてた」の一言に「怒りを通り越して呆れてしまった」と語り、この瞬間に我慢の限界に達し、今回の投稿に至ったと胸の内を明かしました。

なお、問題の前任編集者は、前作『朱月事変』から担当していた初代編集者と、今作の途中から加わった副編集者の2名体制だったとのこと。しかし、両者の業務分担や責任の所在は明確にされていなかったそうです。壱原先生は、特定の個人を特定して攻撃するようなことは絶対にやめてほしいと呼びかけており、それがさらなる被害を生むことを懸念しています。

壱原先生は、今回の一連の投稿に踏み切った理由について、複雑な心境を抱えつつも、主に2つの大きな理由があったと強調しています。

一つ目は、読者への配慮です。「好きな作品がいつも後ろの方に載っていると、読者は不安になるもの。本作はアンケート結果が良いだけに、余計に心配させてしまう。だからこそ、『この作品はちゃんと人気があるんですよ』と伝えたかった」と語ります。

二つ目は、作品制作に協力してくれている能楽関係者への想いです。「この作品を通じて能楽の魅力を広めたい」という願いを託されている以上、作品の名誉を傷つけるわけにはいかない、という強い責任感があったと述べています。

この告発が注目を集めると、ネット上では「真摯に作品作りに向き合う漫画家に対して、あんまりな仕打ちだ」「作家をサポートすべき編集者が足を引っ張るなんて本末転倒」といった声が続出。また、小学館が過去にも所属漫画家とのトラブルを抱えていたことから、批判の矛先は編集部、ひいては小学館という企業体質そのものに向けられています。

その後、壱原ちぐさ先生はXを更新。問題となった編集者たちが既にサンデー編集部から異動していることを確認した上で投稿したと説明しました。一方で、「編集部が自分の作品をどう見ているか」という点については、担当編集者個人の推測も含まれていたことを認めました。

そして、『週刊少年サンデー』編集長と話し合いの場を持ったことを報告。今回の問題は「前任編集者の業務上のミスとコミュニケーション不足」が前作から積み重なった結果であると、認識を共有できたとのことです。しかし、過去には「正常に打ち合わせができない」「心身に影響が出る」ほどの状況が何度もあったといい、公に声を上げるしか方法がないのではないかと追い詰められていた、と極限状態だったことを告白し、騒動を謝罪しました。

現在は、新しい担当編集者と共に「良い方向へ進んでいる」と報告。前任者からの引き継ぎが不十分だったものの、編集部と直接対話することで、互いの認識のズレを修正できたと明かしました。「直接お話しする機会をいただけたことに、心から感謝しています」と綴っています。最後に、「良い作品を描くことが、漫画家としてできる最大の誠意であり、最も大切な仕事です。これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」と、今後の創作活動への意欲を力強く語りました。

小学館といえば、過去にも所属作家とのトラブルが報じられています。『金色のガッシュ!!』の作者である雷句誠先生が原稿紛失をめぐって同社を提訴した一件は有名です。また、『名探偵コナン』の青山剛昌先生も、連載初期の多忙さと編集部からの干渉に悩み、連載終了を考えたことがあると明かしています。さらに、荒川弘先生の自伝的漫画『百姓貴族』でも、小学館の編集部を揶揄するような描写が見られます。

作家を支えるべき出版社で、逆に足を引っ張られていると感じさせるような事態が起きているとすれば、それは非常に残念なことです。今回のように作家自らが声を上げなければ、こうした問題は外部からは見えにくいのかもしれません…。