『サイレントヒルf』竜騎士07氏が語る、時代設定と女性主人公の意図。「昭和が間違いという単純な話ではない」

『サイレントヒルf』でシナリオと世界観構築を手掛ける竜騎士07氏がメディアのインタビューに応じ、本作で女性主人公「雛子」が選ばれた理由や、物語の時代背景について初めて言及。これは単なる歴史批判ではなく、「価値観のズレ」を描いた物語であると強調しました。

竜騎士07氏によると、女性主人公という設定と物語の時代背景には、どちらが先といった因果関係はないとのこと。これらは「並行して考えられ、同時に生まれた」結果だそうです。つまり、キャラクターの性別、時代背景、世界観はバラバラの要素を後から組み合わせたのではなく、構想の初期段階から一体となって存在し、自然と現在の『サイレントヒルf』という形にまとまっていったと語ります。

「以前のインタビューで『なぜあの時代を選んだのか』と聞かれた際、『現代と呪いの世界が実質的に隣接している場所』と答えました。言い換えれば、世界観の中に現代の価値観と昭和の価値観の境界線を示したかったのです」と竜騎士07氏は語ります。

また、本作が「抑圧された女性の状況に焦点を当てている」という一部の解釈に対し、竜騎士07氏は「昭和が間違いで、現代が正しい」といった単純な二元論ではないと明確に否定。本当に描きたかったのは、価値観が激しく移り変わる“過渡期”そのものであると強調しました。その時代の中で、主人公の雛子は体制に直接打ちのめされるのではなく、「何かがおかしい」と“気づいてしまった”からこそ、生きづらさを感じ始めるのだといいます。

「もし彼女が何も疑わなければ、平凡に生きていけたのかもしれません」。竜騎士07氏は雛子の置かれた状況をこのように表現し、この環境との絶妙な“ズレ”こそが、彼女の悲劇の核心であり、恐怖を増幅させる原動力になっていると分析しました。

興味深いことに、竜騎士07氏は『サイレントヒルf』の物語構造を、単一テーマのストレートなものではなく、幾重にも味わいが広がる「コース料理」にたとえています。

プレイヤーには1周目のプレイだけで結論を急ぐのではなく、マルチエンディングや周回プレイを通じて、作品への理解を徐々に深めていってほしいとのこと。このような設計は、物語が一言で要約されてしまうような単純なものになるのを避けるためだそうです。

「確かに、この作品は女性が受ける苦しみに焦点を当てている、と言う人もいるでしょう。もちろんそれもテーマの一つですが、あくまで数ある素材の一つに過ぎません。私にとって『サイレントヒルf』は、多くの栄養素で構成された『コース料理』なのです」

「一口食べただけで『しょっぱい』とか『酸っぱい』とか結論を出すものではなく、1周目をクリアし、2つ目のエンディングにたどり着く……その過程で、満足感の質がどんどん変化していくはずです」と竜騎士07氏は語ります。

最後に竜騎士07氏は、「もし作品のテーマが一言で簡単に説明できるなら、わざわざ長編ゲームにする必要はありません」と断言。だからこそ、プレイヤーには全てを体験し尽くした上で改めて作品を振り返ってほしいと述べ、『サイレントヒルf』が描くのは単なる恐怖だけでなく、価値観が揺らぐ時代の中で人々が耐える“声なきプレッシャー”なのだと、その真意を明かしました。


via: ファミ通.com