アニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」の放送も記憶に新しい中、物語はいよいよ「死滅回游」編へと突入! MAPPAによるハイクオリティな映像と、原作の絶大な人気も相まって、ファンからの期待は高まるばかりです。
中でも注目は、『劇場版 呪術廻戦 0』以来の登場となる乙骨憂太が、ついにTVシリーズに本格参戦したことでしょう。今回は、乙骨役を演じる声優・緒方恵美さんが「アニメイトタイムズ」のインタビューで語った、乙骨というキャラクターへの想いや、『呪術廻戦』の現場についてご紹介します。

以下、インタビューのQ&A形式で、緒方恵美さんの熱い想いをお届けします。
Q:TVシリーズへの本格登場、おめでとうございます。「渋谷事変」のラストでは、虎杖悠仁の死刑執行人として登場し、非常にシリアスな雰囲気でしたが、その中にも乙骨の優しさが垣間見えました。
緒方:見た目は少し変わりましたけど、中身は全然変わってないんですよ。「渋谷事変」のパートはほとんど一人での収録だったので、あっという間に終わってしまって、逆に驚きました。『劇場版 呪術廻戦 0』の時は、一言一言をじっくり時間をかけて録っていたので、この作品は収録に時間がかかるものだと思い込んでいたんです(笑)。「え? もう終わりでいいんですか?」と思いながら帰ったのを覚えています。

Q:『劇場版 呪術廻戦 0』を経て「死滅回游」編に至るまで、緒方さんの目には、乙骨憂太はどのような人物に映っていますか?
緒方:乙骨くんは基本的に「他人を拒絶しない」人なんです。もちろん呪霊は別ですが、彼は常に自分よりも他人のことを先に考える。だから里香ちゃんに対しても、「祓ってしまおう」ではなく、「どうしてこうなっちゃったんだろう? 僕に何ができるだろう?」と考える。里香ちゃんが周りの人を傷つけてしまうことに悩みながらも、彼女を消そうなんて一度も思ったことがないんですよね。

Q:本当に、常に「誰か」のために行動しているキャラクターですよね。
緒方:「死滅回游」編のPVの最後にある「自分のためだけに生きるのは きっといつか限界がくる」というセリフは、まさに乙骨くんの本心だと思います。そして正直なところ、私自身もまったく同じように感じています。
若い頃は「この仕事で食べていけるようになりたい」「レギュラーが欲しい」「主役をやりたい」「認められたい」といった欲がありました。でも、ある段階まで来た時にふと気づいたんです。――自分の欲を満たすためだけでは、もう一歩も前に進めないな、と。
Q:乙骨の言う「限界」について、緒方さんご自身はどのように捉えていますか?
緒方:当たり前のことなんですけど、この仕事はみんなで作り上げるものですからね。「誰かのために」と言うと聞こえはいいですが、もっと言えば、ビジネス的にも私たちの仕事は「お客様に喜んでもらうもの」を作ることなんです。
とっくの昔に、自分のためだけに生きるフェーズは終わっています。たぶん20年か30年くらい前に(笑)。そういう意味で、乙骨くんの考えと自分はすごく似ているなと感じます。

Q:緒方さんご自身が「作品のために」という姿勢を非常に大切にされているのが伝わってきます。
緒方:アニメはチームプレイですから。役者同士はもちろん、音響チームや作画チームがいて、お芝居が映像と合っていなければ意味がない。すべてを統合して、観てくださるお客様に楽しんでいただく。一時でも嫌なことを忘れてもらったり、「明日も頑張ろう」って思ってもらえたり――それが私たちの仕事なんです。
ライブなんかはもっと直接的で、スタッフやミュージシャンと一丸となって、お客さんが「癒やされた」「明日からまた笑って過ごせる」と言ってくれる、その顔を見るために必死になれる。まあ、乙骨くんは私よりもっと自己犠牲的ですけどね。私は全然そんなタイプじゃないです(笑)。
Q:でも、巡り巡って、それが結局「自分のため」になる、と。
緒方:そうですね。自分の欲求を満たすために、みんなと一緒にやっている。誰一人として、自分だけの力で何かを成し遂げられる人なんていませんから。だから、本当にリアルな気持ちで「うん、乙骨くんと同じこと考えてるな」って思いました。高校生でそこに気づける彼は、本当にすごいなと逆に感心します。

Q:虎杖との対峙シーンのアフレコはいかがでしたか?
緒方:実はほとんど会話らしい会話はしていないんですよ(笑)。戦闘力の差が圧倒的すぎて、乙骨は息ひとつ乱れない。虎杖くんのほうには避ける音などが入っていましたが、こっちは何もないので、もはや戦いにすらなっていない感じでした。
Q:「渋谷事変」を経て、虎杖も心に大きなものを抱えていますよね。
緒方:本意ではなかったにせよ、自分の手で大勢の人を死なせてしまった。その後の虎杖くんは、精神的にボロボロの状態ですよね。だから、あの時の彼は「いつもの虎杖くん」ではなく、非常に特殊なコンディションだったと捉えています。

Q:榊原良子さんが演じる「天元」はいかがでしたか?
緒方:天元様のような「全知全能の存在」って、普通のアニメならもっと淡々と、神々しい感じで演じられることが多いじゃないですか。でも榊原さんのお芝居はまったく違っていて、鳥肌が立ちました。「今、私たちは一体何を聞かされたんだ…?」って。
後で監督や音響監督から「すみません、もう少しフラットにお願いします」というディレクションが入って、「やっぱりそうなるか」と思ったんですが、榊原さんは天元を「この世のすべてを内包する存在」として、あらゆる感情を込めて演じようとされていたんです。もう、すごすぎる、の一言でした。
Q:その役へのアプローチの仕方からして、すでに常人には難しい領域ですね。
緒方:キャリアが長くなると、どうしても過去の経験則だけで演じてしまいがちになるんです。これは役者に限らず、どんな仕事でも同じだと思います。でも榊原さんは、今もなお「新しい天元」を見つけようと挑戦されている。その姿勢と、そんな先輩がいてくださることに、本当に勇気づけられます。スタジオを出る時、心から「勉強になりました。ありがとうございます」とお伝えしました。

Q:緒方さんから見た『呪術廻戦』のアフレコ現場は、どのような雰囲気ですか?
緒方:とても丁寧で、誠実な現場です。スタッフの誰もが「どうすればもっと作品が良くなるか」を考えている。何か小さな問題が起きても、ごまかしたり大騒ぎしたりせず、静かに解決策を探る。言葉にしなくてもお互いを思いやれる、特別な信頼関係があるんです。
Q:それは、やはり『呪術廻戦』という作品だからでしょうか?
緒方:そうだと思います。『呪術廻戦』のキャラクターたちって、ベタベタした関係性じゃないし、「強敵(とも)と書いてライバル」みたいな熱いセリフを交わすわけでもない。でも、言葉にしなくてもお互いを信頼しているのが伝わってくる。現実の人間関係でも、ある程度の距離感は必要じゃないですか。このチームは、作品と同じような絶妙な関係性を保てている、すごく稀有な現場だと思います。
Q:最後に、ファンへのメッセージをお願いします。
緒方:『呪術廻戦』のキャラクターって、みんな結構マイペースですよね(笑)。それぞれがバラバラに行動していて、あまり顔を合わせることもない。まるで個別に潜入捜査をしているみたいで。だからこそ、一人ひとりを応援したくなるんです。キャラクターも、そして私たち声優も、それぞれが自分の持ち場でベストを尽くしています。ぜひ、各キャラクターの活躍を楽しんでいただけたら嬉しいです。

緒方恵美さんのインタビューからは、キャラクターへの深い理解と真摯な姿勢、そしてMAPPAが作り出す現場の熱量が伝わってきますね。物語が大きく動き出す「死滅回游」編、ますます目が離せません!
via: Animate Times