以前、当サイトでもご紹介した原型師の榎木ともひでさん(@eyewater_e)。『ドラえもん』に登場するスネ夫の「立体化不可能」と言われたあの独特な髪型を、見事に再現した造形作品は大きな話題を呼びました。
そんな榎木さんが、新たな挑戦の成果をXで公開しました。今回のお題は、手塚治虫先生の名作『鉄腕アトム』。誰もが一度は「この髪型、どうなってんの?」と疑問に思ったであろうアトムの髪型を、またもや驚きのアイデアで完璧に立体化してみせたのです。正面から見ても、横から見ても、斜めから見ても、まったく破綻しないその姿は、まるでアニメからそのまま飛び出してきたかのよう。これには多くのネットユーザーが度肝を抜かれました。

アニメや漫画を見ていると、「このキャラクターの髪型、現実で再現できるの?」と疑問に思うことは少なくありません。中でもアトムのトレードマークであるツノのような2本の髪は、作画のアングルによって長さや形が微妙に変わって見えることもあり、二次元ならではのデザインと考えられてきました。

榎木さんは粘土を使って造形。キャラクターの表情やフォルムのクオリティもさることながら、やはり注目すべきはその髪型。塗装後の仕上がりを完璧なものにするため、形状を慎重に練り上げていったことが伺えます。
榎木さんによると、実はかなり前からアトムの髪型には挑戦したかったものの、「誰もが納得できるような方法が思いつかなかった」ため、長らく構想が止まっていたそうです。原理としては「手前のツノが前方に突き出ていれば、角度を変えたときの位置が左右にズレる」ということは分かっていたものの、それを「自然に成立させる」方法が見つからなかったとのこと。しかし最近、ついにその完全な解決策を閃いたといいます。

今回の造形のキモは、正面から見るとアトムおなじみのツノが2本あるスタイルに見える点にあります。しかし、その後ろ姿を見てみると、その秘密が明らかに。なんと、実際には「3本のツノ」が作られていたのです。巧みな角度と錯視を利用した設計により、どの方向から見てもツノが2本に見えるように工夫されており、二次元のウソを三次元のリアルな構造へと見事に昇華させています。

今回の制作にあたり、榎木さんが特にこだわったのは「どの角度から見ても、みんなが知っているアトムの髪型を維持すること」。特に手前のツノは、左から見たときと右から見たときで位置が変わるように作られており、まさに「不可能図形」を現実の立体物として成立させているかのようです。





このアトムの髪型再現を成功させた大きな要因の一つが、以前のスネ夫の髪型制作でも使用された「世界一黒い塗料」とも言われる「真・黒色無双」です。この塗料は光の反射を極限まで抑えるため、立体物でありながら陰影や奥行きがほとんど感じられなくなるという特性を持っています。
作品が公開されると、コメント欄には「完璧すぎる」「これはヤバい」「もはや魔法」といった絶賛の声が殺到しました。しかし榎木さん自身は、本来作りたかったのは「髪型のギミックそのもの」であり、顔はあくまでその効果を分かりやすく見せるために仕方なく制作したものだったと語っています。完成を急ぐあまり、顔のディテールが少し雑になってしまったと反省しており、「もっと時間をかけて作り込むべきだった」と感じているそうです。
ユニークな発想で再び「立体化不可能な髪型」の再現に成功した榎木さん。Xでは他にも素晴らしい作品を多数公開されています。また、原型師としてワンダーフェスティバルなどのイベントにも度々参加されているので、ぜひチェックしてみてくださいね!
via: X@榎木ともひで