『龍王のおしごと!』作者・白鳥士郎先生が衝撃告白「当初、空銀子は死ぬ予定だった」――悲劇を覆した家族との別れ、そしてイラストレーター・しらび先生の“静かな抵抗”

白鳥士郎先生が執筆し、しらび先生がイラストを手がける大人気将棋ライトノベル『龍王のおしごと!』。多くのファンに愛された本作も、今年ついに最終21巻が発売され、堂々の完結を迎えました。

この完結に際し、原作者の白鳥士郎先生が自身のX(旧Twitter)で連載中の胸の内を告白。「本来なら死ぬはずだったヒロインが、最終的に結婚した」という衝撃の事実を明かし、なぜヒロイン・空銀子が病死するはずだったのか、そしてなぜその設定が覆されたのか、その経緯をファンに向けて語りました。

白鳥先生によると、一時期、ライトノベル作家やイラストレーターに会うと、挨拶もそこそこに「銀子、死ぬんですか?」と聞かれるのがお約束だったそうです。これはアニメ放送が始まった頃のことで、この質問はなんと小説12巻が発売されるまで続いたのだとか。

実は、当初『龍王のおしごと!』のプロットを最後まで組んだ段階では、「銀子は奨励会編の最後にプロ棋士になるものの、長年の無理がたたって病死する」という衝撃的な展開が予定されていました。病名まで「免疫性血小板減少性紫斑病(通称 ITP)」と具体的に設定されており、これはかつてA級棋士のまま夭折した故・山田道美九段(追贈)が患った病気と同じものでした。

当初、1巻の売れ行きが芳しくなかったため、出版社からは5巻での完結が予定されていました。5巻までのプロットでは銀子の死まで描かれることはなく、この設定は問題になりませんでした。しかし、徐々に人気が高まり、アニメ化が決定したことで、事態は大きく動き始めます。

6巻から始まった奨励会編、そして9巻のラストで銀子は三段リーグ入りを果たします。覚えている読者も多いかもしれませんが、9巻の挿絵で銀子が読者に背を向けて立っているのは、実は彼女の死を暗示する伏線だったのです。

しかし、その頃にはすでに白鳥先生の心は揺れ動いていました。『龍王のおしごと!』1巻の刊行前(原稿は脱稿済み)に、父親のように慕っていた祖父が逝去。そのショックで、一時は『のうりん』が書けなくなるほどだったといいます。

その約1年後、今度は母親が他界。当時は『龍王のおしごと!』5巻を執筆中で、精神的にかなり追い詰められていたそうです。仕事で訪れた書店で、そこがかつて祖父と母と旅行した思い出の場所だったことから、突然泣き出してしまったこともあったとか。

仕事中に突然思い出が蘇り、感情が崩壊してしまったとのこと。その影響は大きく、『のうりん』の続刊は10年間も執筆が止まり、ようやく2026年6月に完結を迎えたほどでした。

実は、「銀子が死亡する」というプロットは非常に詳細に練られており、一部はほぼ完成原稿に近い状態まで書かれていました。銀子が死ぬからこそ、あいは八一のもとを去らなければならない。あいの性格上、銀子を失い傷心の八一につけ込むことはできず、銀子と同じプロ棋士になって初めて彼の前に立つ資格を得る――。

白鳥先生自身も「非常に美しいプロットだった」と語るこの展開で、物語は15巻前後で完結する予定でした。しかし、ご存知の通り――銀子は死にませんでした。彼女は無事にプロ棋士となり、八一と公式戦で対局し、そして最後には結婚するという、誰もが幸せな大団円を迎えたのです。

では、なぜ完成稿に近いプロットを全て覆し、ハッピーエンドへと舵を切ったのでしょうか? その理由の一つは、「相次ぐ家族の死によって、『死』が書けなくなってしまった」ことでした。

小説11巻は、まさに「銀子の死」という展開を回避するために、いわば“ひねり出された”一冊だったそうです。執筆中は「本当にこれが読者の読みたいものなのだろうか…?」と悩み続けたそうですが、蓋を開けてみれば「11巻が一番好き」という声が殺到! 3巻と並ぶほどの代表的なエピソードとなり、これは全くの予想外だったと語ります。

そして、銀子を死なせるプロットを断念したもう一つの大きな理由。それは、イラストを担当するしらび先生の“強い反対”でした。先生は「銀子を死なせないでください」と直接口にすることはなかったものの、その想いはイラストやコメントを通じてひしひしと伝わってきたそうです。

例えば、11巻の表紙で初めて手をつなぐ銀子と八一。あれこそが「この二人は決して離れない」、つまり「銀子は死なない」という、しらび先生からのメッセージだったのです。

11巻のあとがきでしらび先生が寄せたコメントも、表向きは「こんなに素晴らしい物語を書いてくださってありがとうございます」ですが、その真意は「銀子を殺さなかったことへの感謝」だったと白鳥先生は振り返ります。

12巻ではさらに踏み込み、より直接的な方法でその意思を伝えてきたというしらび先生。その具体的な内容については、現在発売中の『龍王のおしごと!』21巻特装版に付属する「完結記念 Memorial Book」で明かされています。そこには、「銀子は死ぬべきか否か」を巡る、白鳥先生としらび先生の知られざる攻防の記録が初めて公開されているとのことです。

ちなみに、11巻が刊行された後も、しらび先生はまだ安心していなかったようです。そのため12巻の表紙も、11巻とほぼ同じ構図に。そして、完結巻である21巻の表紙もまた、手をつなぐ八一と銀子の姿が描かれています。

しらび先生も7月にXで次のようにポストしています:

「 GA文庫『龍王のおしごと!21 ~白雪姫と龍王の結婚~』は7月15日ごろ発売です。11、12巻と対になるような表紙にしましたので、キャラクター達のこれまでの変化も感じていただけると嬉しいです。整理してて気づいたんですが、僕が描いたイラストの中で主人公の八一が手を繋いでるの、銀子だけなんですよね。意図したわけじゃないんですが、結果的にそうなってよかったなと。」

21巻特装版付属のメモリアルブック対談で、しらび先生も当時の心境を語っています。白鳥先生は今振り返り、「キャラクターの死で読者の涙を誘おうとしたライトノベル作家の浅はかな考えを、イラストレーターが愛の力で止めてくれた」と述べています。

ライトノベルのキャラクターは、作家だけのものではありません。イラストレーターもまた、キャラクターの創造主です。作家とイラストレーターが等しく愛を注ぎ込んでキャラクターを創り上げるからこそ、『龍王のおしごと!』はこれ以上ないハッピーエンドを迎えられたのだと、白鳥先生は深く反省し、しらび先生への感謝を綴っています。

最後に、アニメは見たけれど原作はまだ読んでいないというファンに向けて、「安心してください、銀子は死にません。そして、ちゃんと八一と結ばれます。最高のハッピーエンドを保証しますので、ぜひ原作を最後まで読んでみてください」とメッセージを送りました。

今回の告白で、『龍王のおしごと!』連載当時の白鳥先生の苦悩や、イラストレーターのしらび先生との固い絆が明らかになりました。ファンにとっては想像を絶するような、精神的に追い詰められた状況下での創作活動がいかに困難であったかが伺えます。

物語が最高の形で完結したことは、ファンにとっても、そして何より作者自身にとっても大きな救いとなったのではないでしょうか。

via: X@白鳥士郎