『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が公開後、大きな反響を呼ぶなか、ファンの間ではもう一つの疑問も話題になっています。社会現象級のIPへと成長した『ちいかわ』は、アニメや映画、コラボ商品など商業展開が大きく広がっても、なぜ原作ならではの世界観や作風を崩さずにいられるのでしょうか。
先日、Xに投稿されたある考察が多くの共感を集めました。投稿者は、作品の権利と作者・ナガノ(ナガノ)先生の創作上の主体性が非常に強く守られていると指摘。ナガノ先生自身の創造力はもちろん、周囲のマネジメントにも恵まれているのではないかと分析しています。これをきっかけに、ナガノ先生が過去に経験したとされるキャラクターの商標問題を思い出す人も相次ぎました。

話題のきっかけとなった投稿者は、『ちいかわ』がすでに数年間にわたって人気を集め、現在の影響力や経済規模を考えれば、「IPを横取りしようとする邪悪な大企業」が介入してきてもおかしくないと指摘しています。それでも、これまでの展開を見る限り、作品の権利もナガノ先生の創作上の主導権も、かなり強固に守られているように感じるといいます。
映画やアニメ制作へのナガノ先生の関わり方からも、「作品の主導権を持ち続けること」に対する並々ならぬこだわりが感じられるとのことです。

ナガノ先生のこれまでの創作活動を知るファンからは、こうした姿勢には『ちいかわ』以前から展開されていた人気キャラクター「自分ツッコミくま」を巡る商標問題の経験が影響しているのではないか、という見方も出ています。

あるユーザーの回想によると、「自分ツッコミくま」はもともとナガノ先生が生み出したキャラクターでしたが、当時は所属先の会社が商標権を保有していたといいます。その後、ナガノ先生が独立した際、一時的に「自分ツッコミくま」という名称を使えなくなり、キャラクター名を「ナガノのくま」へ変更せざるを得なかった時期があったそうです。

商標情報を追っていたユーザーによると、2024年1月19日付で商標の移転登録が行われ、権利者はナガノ先生が設立した「株式会社ナガノ」になったといいます。これにより「自分ツッコミくま」の名称も再び使える状態になったとみられています。ただし、移転に至った詳しい経緯や当事者間に対立があったかどうかは公表されておらず、「過去に大きな痛手を負った」という見方は、あくまで公開情報をもとにしたファンの推測です。


また、『ちいかわ』が近年の日本アニメでよく見られる商業的な手法を避けている点を評価する声もあります。話題性のある人気歌手を主題歌に起用したり、レコード会社が売り出したいアーティストを宣伝の一環として起用したりする作品も少なくありませんが、楽曲が作品の世界観と合わず、かえって鑑賞体験を損なってしまう場合もあります。
それに対して『ちいかわ』は、作品の空気に寄り添った音楽を一貫して選んでおり、ファンからは原作の精神が大切にされていることを示す一つの象徴として受け止められています。

『ちいかわ』が外部からの過度な介入を避けられているのは、権利管理が徹底されているからだけではなく、作者とファンが一緒に積み上げてきた文化的な現象だからではないか、という意見もあります。もし企業が作品の方向性を強引に変えようとすれば、ファンから強い反発を受けることは避けられず、それ自体が作品を守る目に見えない力になっているというわけです。

さらに、ナガノ先生の経験を、ウォルト・ディズニーがかつて「オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット(Oswald the Lucky Rabbit)」の権利を失った出来事になぞらえる声もありました。どちらもキャラクターの権利を巡って代償を払った経験が、その後のIPに対する強い権利意識につながったのではないかと考えられています。

多くのファンは、『ちいかわ』が国民的IPとなった現在も、原作ならではのブラックユーモアと繊細な世界観を保ち続けている背景には、ナガノ先生自身の創作へのこだわりだけでなく、過去のキャラクター商標を巡る経験も関係しているのではないかと考えています。その経験が、現在の『ちいかわ』で創作の軸を守ることにつながっているのかもしれません。