2021年からスタートし、数多くの玩具やプラモデルを手掛けるブランド・BANDAI SPIRITSが教育分野に進出。日本の小学校高学年を対象としたプラモデル組み立てオンライン授業「ガンプラアカデミア」を、社会科見学のプログラムとして展開しています。
開始から5年目を迎え、累計の参加児童数は100万人を突破しました。現在、教育現場では生徒間の学習意欲の格差や、教員の業務負担増といった課題が深刻化していますが、「ガンプラアカデミア」はこれらの課題解決に貢献するとして人気を集めています。このほど、Oricon newsがBANDAI SPIRITS ホビーディビジョン 事業推進チームの中桐美由貴さんと井出遙さんにインタビューし、「ガンプラアカデミア」の舞台裏について伺いました。
「ガンプラアカデミア」は、児童が自らの手でガンプラを組み立て、その製造工程やリサイクルの取り組みを紹介する映像を通して、ものづくりの面白さや奥深さ、そして企業のSDGsへの挑戦を学べる無料の授業教材パッケージです。主に小学校高学年の児童を対象としています。
2021年10月の開始から2026年9月までに、累計で1万5375校、104万169名の児童が参加しました。プラモデルを教材に、工場の生産工程や技術開発について学ぶ「日本のものづくり」、生産に携わる人々の想いや仕事への向き合い方を知る「キャリア教育」、そしてプラスチック廃材の再利用などから「SDGs」について学ぶことができます。
さらに、このプログラムは文部科学省が定める「総合的な学習(探究)の時間」に最適だと、現場の教員からも高く評価されています。 この授業は、従来の教科の枠を超えて横断的・総合的に課題に取り組み、自ら問題を見つけ、主体的に考えて解決する能力を育むことを目的としており、多くの先生方から好評を得ています。

――そもそも「ガンプラアカデミア」を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
すべての始まりは2019年でした。社内の企画提案制度「パイオニア魂」で、「出前授業×プラモデル」という構想を提案したのがきっかけです。2006年にバンダイホビーセンターが静岡市長沼に移転して以来、多くの学校から工場見学を受け入れてきましたが、遠方の学校にとっては、実際に足を運ぶのはハードルが高いというジレンマがありました。
子どもたちから「見学には行けないけど、質問があります」といった手紙をもらうことも多く、それが「ものづくりの楽しさを、もっと多くの子どもたちに届けたい」という想いを後押ししました。また、ホビーセンターの見学が、小学校の社会科における「工業」の単元と親和性が高いことも、教育プログラムとして発展させるきっかけとなりました。

企画の推進は、想像以上にスムーズに進んだそうです。2019年頃から、日本では「GIGAスクール構想」により、児童一人一台の端末を整備するなどICT環境の構築が進んでいました。 そこに2020年からのコロナ禍が重なり、校外学習や工場見学が中止に追い込まれ、オンライン授業が一気に普及したのです。
各教室にはすでにモニターなどの設備が整っていたため、このプログラムの導入は非常に円滑でした。現在の学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」が求められており、探究学習やグループワークといったアクティブ・ラーニング形式の授業も普及しつつあります。しかしその一方で、学校現場には「生徒間の学習意欲の格差」や「人間関係の摩擦」といった問題も存在します。「ガンプラアカデミア」はこれらの問題解決に繋がるとされていますが、「ガンプラを組み立てる」こと自体が、逆にハードルになってしまうことはないのでしょうか?

――学校現場には「生徒間の学習意欲の格差」や「人間関係の摩擦」といった課題もあります。「ガンプラアカデミア」はそうした問題の解決に繋がるとのことですが、一方で「ガンプラを組み立てること」自体が、逆にハードルになってしまう懸念はありませんでしたか?
中桐美由貴さん:
その点については、特に心配していませんでした。というのも、ホビーセンターで工場見学を受け入れていた頃から、小学生がプラモデルに非常に興味を持ち、楽しんでくれている姿を見ていましたから。
実際に授業を行ってみると、プラモデル作りが得意な子が苦手な子に自然と教えたり、手先が器用な子が組み立ての速さでクラスの「主力」になったりと、かえって様々な個性の子がそれぞれ輝ける時間になっていました。

――単にプラモデルを組み立てるだけでなく、この授業を通して子どもたちに何を学んでほしいと考えていますか?
中桐美由貴さん:
授業で使う映像では、企画、設計、金型、成形、品質管理といった各工程の担当者が、それぞれ「どんな想いで仕事に取り組んでいるか」を自らの言葉で語っています。
日本のものづくり業界では、担い手不足が深刻な社会問題となっています。だからこそ、このプログラムの「キャリア教育」という側面を非常に重視しており、子どもたちに「ものづくりの仕事って、なんだか面白そう!」と感じてもらうきっかけになればと願っています。

――実際に授業を受けた子どもたちや、先生方からはどのような反響がありましたか?
中桐美由貴さん:
アンケートでは「将来、BANDAI SPIRITSで働きたい」といった嬉しい声や、熱い想いが込められたお手紙をたくさんいただきました。また、先生からは、普段はおとなしい子がプラモデル作りですごい才能を発揮して「クラスのヒーロー」になった、というエピソードも伺いました。子どもたちが授業をとても楽しみにしてくれるので、先生方からの評判も非常に良いです。
井出遙さん:
授業をきっかけに、プラモデルの組み立てだけでなく、そこから発展させて自分たちなりの遊び方を見つけてくれる子もいます。また、実際にプラモデルが手元に届き、自分の手でパーツを「パチッ」とはめる瞬間を体験することで、工場のスタッフがなぜ金型を1ミクロン単位で精密に調整するのか、なぜ使用する樹脂の素材にこだわるのか、といったことをより深く理解してくれるようになります。

――このプロジェクトで、最終的に目指しているゴールは何でしょうか?
中桐美由貴さん:
全国のより多くの小学校にこの授業を導入していただけるよう努力を続けますが、何よりも「細く長く続けていく」ことが大切だと考えています。毎年、新しい小学5年生が生まれるので、その子たちにプラモデルの面白さや、ものづくりの奥深さ、魅力を伝え続けていきたいです。
実は最近、「バンダイホビーセンター」に見学に来てくれた中学生から、「小学生のとき、ガンプラの授業を受けました!」と声をかけられたことがあり、本当に感動しました。
そしていつか、BANDAI SPIRITSの採用面接の場で、「小学生のとき、ガンプラの授業を受けました」と話してくれる学生が現れる日を夢見ています。そんな想いを胸に、これからも変わらぬ決意で、この活動を長く伝えていきたいです。

via: Oricon news ガンプラアカデミア