ここ数年で一気に花開いたVTuberカルチャー。日本のみならず、アジアや欧米でもその人気はとどまるところを知りません。しかし、その華やかな世界の裏側では、多くの個人勢、時には企業所属のVTuberまでもが厳しい競争にさらされています。参入者が増え続ける一方で視聴者のパイは限られており、市場は飽和状態。志半ばで活動を終えるVTuberも少なくありません。
そんな中、最近日本のX(旧Twitter)で「底辺VTuber」という言葉がトレンド入りし、大きな話題を呼んでいます。もともとは自虐的な意味合いで使われていたこの言葉が、今や検索ホットワードに。この現象は、多くのクリエイターやリスナーに、VTuber業界における「成功」と「失敗」、そして「自己肯定感」の境界線について改めて考えるきっかけを与えています。

いわゆる「底辺VTuber」とは、再生数やチャンネル登録者数、収益などの面で、人気VTuberに及ばないクリエイターを指す言葉です。多くのクリエイターが自ら名乗ることで、厳しい現状をユーモラスに乗り越えようとしてきました。しかし、昨日(4月22日)、「底辺VTuber」という言葉が日本のXでトレンド入りしたことで、この言葉を巡る議論が一気に巻き起こったのです。
あるVTuberのライナーさんは、「『底辺VTuber』って言葉がVTuber界隈どころかコミュニティ全体でバズってるけど、この状況は見ていて本当に胸が痛い……」と心境を吐露しました。

一方、VTuberの北方荒熊リューさんは、「『底辺VTuber』がトレンド入りしてるけど、そもそも何が原因なんだろうな」と前置きしつつ、独自の視点を展開します。「ハッキリ言わせてもらうと、いわゆる底辺VTuberって、実は結構すごいんですよ。
だって世の中には、
①そもそも配信してない
②コンテンツの準備もしてない
③努力の跡が全く見えない
こんな『VTuberですらない人』が山ほどいる。『あの人は底辺だ』って言えるってことは、その人の活動がちゃんと目に入ってるってこと。『底辺VTuber』と、何もしてない連中を一緒くたにしないでほしいね」と熱く語りました。

自らも「底辺」で奮闘していると語る多くのVTuberも、自身の経験を共有しています。軌月えるさんは「デビュー配信の最大同接は3人、チャンネル登録者はたったの1人でした」という衝撃の事実を明かし、「新人の皆さんは、デビューという自分を宣伝する最大のチャンスを無駄にしないよう、しっかり準備してください!」と呼びかけています。

また、活動歴6年近くなるというVTuberの八千田基準點さんは、「登録者はやっと240人。配信に来てくれるのは、いつも一桁か、時にはゼロなんてこともあります」と正直に告白。それでも、「『底辺VTuber』って呼び方は、自分で言うにしても人から言われるにしても、良い言葉じゃないですよね。僕はマイペースでやってるけど、それでも見に来てくれるリスナーさんがいるし、配信はすごく楽しいですよ~」と語ります。

しかし、一方で「『自称・底辺VTuber』がバズって、結果的に底辺を脱出する」というサクセスストーリーが少なからず存在することも指摘されています。これには「いっそ『斜辺系VTuber』って名乗ってみたらバズるんじゃね?」なんて冗談も飛び出す始末。
もちろん、これも一種のジョークであり、「底辺VTuber」という自虐が、自分を奮い立たせるための原動力になっている側面もあるようです。

そんな中、ユーザーのkentaxさんは、「底辺VTuber」と自称する戦略はあまり得策ではない、と自身の見解をシェアしました。
その理由は以下の通りです。
ブランドイメージの毀損
「私なんてこんなもんです」と公言してしまうと、リスナーはあなたの実力を見る前に「大したことないんだろうな」という第一印象を持ってしまいます。これは非常にもったいないことです。
SNSでの印象悪化
あなたのことを知らない人がこの言葉だけを見ると、ネガティブなオーラを感じてフォローをためらってしまうかもしれません。謙遜と過度な自己卑下は全くの別物です。
コラボ相手やクリエイターへの悪影響
VTuberの姿は、イラストレーター、Live2Dモデラー、動画編集者など多くのクリエイターの協力で成り立っています。あなたが「底辺」を連呼すると、その素晴らしい作品まで価値が低いものだと誤解されかねません。
コラボや案件の機会損失
企業や他のVTuberは、あなたの過度な自虐を見て「この人は不安定そうだ」「自信がなさそうだ」と感じ、コラボレーションを躊躇してしまう可能性があります。
たとえ冗談のつもりでも、こうした言葉は自分や周囲に目に見えないダメージを与えかねません。今の成績が振るわなくても、未来永劫そうだとは限りません。大切なのは、これからどうしたいかです。「底辺」を名乗るより、自分がリスナーに何を届けたいのか、どんな方向を目指しているのかを語る方が、本当のファンと出会えるはずです。


VTuberの馬車道はげみさんもまた、かつて「底辺」というレッテルを貼られた経験を持つ一人です。しかし彼女は「輝かしい軌道に乗る人がいれば、どん底で必死にもがいている人もいる」と信じ、自分なりのやり方で「自分だけの輝きを掴み」、リスナーに希望と勇気を与えたいと語ります。
「底辺から成り上がるのって、まさにリアル・シンデレラVTuberって感じじゃないですか(笑)。でもやっぱり、わざわざ自分で『底辺VTuber』って名乗る必要はないと思いますけどね」

この「底辺VTuber」を巡る一連の議論は、単なるネット上の一過性の話題ではありません。それは、現在のVTuberという創作の現場で、クリエイターたちが自己評価、リスナーからの期待、そして市場の厳しい現実とどう向き合い、格闘しているかの縮図と言えるでしょう。
トップを走るVTuberも、今はまだ日の目を見ないVTuberも、その一人ひとりの努力は等しく尊いものです。もしかしたら、自虐で傷を舐め合うよりも、自分の可能性を信じ、後悔しないように活動し続けることこそが、本当の価値なのかもしれません。
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via: togetter