「京アニ事件」が変えた業界の常識? 創作者たちが警鐘を鳴らす「勝手に送られてくる企画」への警戒感と本音

2019年に世界を震撼させた「京都アニメーション放火殺人事件」。尊い命が奪われ、アニメ会社の資産も甚大な被害を受けました。日本メディアからは「平成以降で最悪の放火事件」と報じられ、犯人の青葉真司には死刑判決が下されています。

そんな「京アニ事件」を経験して以降、日本のクリエイター界隈ではある行為に対して、強い警戒感と反発の声が上がっています。それは「未承諾の企画提案」です。X(旧Twitter)では、多くの業界関係者がファンやネットユーザーからのこうした言動に懸念を示しています。

『新世紀エヴァンゲリオン ANIMA』の著者であり、メカニックデザインで知られる山下いくとさんも、今回の件について言及。「京アニ事件以降、クリエイター界隈全体が学んだ教訓がある。それは『誰からも頼まれていないのに、自分のアイデアをクリエイターに勝手に送りつける行為は、マジで迷惑なことだ』ということ」と発言しています。さらに、こうした一方的なアイデアには一切興味がなく、目を通すこともないと断言。即座に「ミュート&ブロック」で対応すると強調しました。

( 註 : 京アニ事件の犯人、青葉真司は逮捕時「(彼らが)俺の小説をパクりやがって!」と叫んでいました。過去には京都アニメーション大賞の一般小説部門に、彼と同姓同名、同住所の小説が投稿されていたこともあります )

ネットユーザーからは、アニメ制作会社 J.C.STAFFの公式アナウンスを例に挙げる声も。

「皆様からお送りいただく弊社への企画案やキャラクター設定などのご提案につきましては、現在、一切受け付けておりません。いかなる形式の企画書、アイデア等の資料も、郵送・メール問わず、お送りいただくことはご遠慮ください。

弊社では、オリジナル企画やキャラクターを独自に開発しておりますが、万が一、お送りいただいた内容と一部重複した場合、誤解やトラブル等に発展する可能性がございます。このような事態を避けるため、未承諾のご提案は一切お受けしない方針とさせていただいております。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げますとともに、日頃のご支援に心より感謝申し上げます。」

アニメ脚本家の山口宏さんも、京アニ事件以前から大手制作会社には「私が考えた物語」といったものが頻繁に送られてきていたと明かしています。中には、直接会社に乗り込んできて監督との面会を要求する人もいたとか。山口さんは、多くの会社が「封筒すら開けずに返送する」と強調。「一度でも中身を見てしまえば、後で『パクリだ』と言われかねないから」と、その理由を語っています。

この一連の発言には、多くの共感が寄せられています。あるゲーム会社社員は「毎月、創意工夫に満ちた企画書を送ってくる人がいた」と過去の経験をシェア。また別のクリエイターは、手紙に現金が同封されており、キャラクターの衣装変更を要求されたエピソードを回想しました。中には、ファンが自作ゲームを公式に送りつけ、「公式採用」を期待するケースもあったそうです。

イラストレーターや小説家からも「こういう行為は昔からあった」「本当にやる気がなくなる」といったコメントが続々。あるクリエイターは「提案された瞬間、一生そのアイデアを使いたくなくなる」と本音を吐露しました。さらに、「本当に自分のアイデアを形にしたいなら、制作会社に入るか、自分で起業しろ。毎日騒いだり手紙を送ったりするな」といった厳しい意見も寄せられています。

実際、かつて日本の業界で盛んだった「投稿持ち込み文化」(作品を出版社などに直接持ち込んで自薦する行為)も、現在では大きな影響を受けています。Pixivやnoteといったオンラインプラットフォームでクリエイターが自由に作品を発表できるようになったとはいえ、かつての物理的な持ち込み文化の衰退による損失を補うには至っていません。

こうした状況を見ると、クリエイターたちが一般のファンからの「お気持ち」的な提案に対して、非常にナーバスになっているのが分かります。もし採用すれば盗作問題に発展する可能性があり、最悪の場合、京アニ事件のような報復心を燃え上がらせてしまうリスクも。事件以降、業界全体が警戒せざるを得ない状況にあると言えるでしょう。

via: togetter