『はじめの一歩』森川ジョージ先生が語る「作者が倒れても描け」はもう古い! 漫画業界の水準は過去最高だと断言

連載35周年を迎える超ロングラン連載の金字塔『はじめの一歩』。多くの読者が子どもの頃から親しんできた、その熱い展開は今も多くのファンに愛され続けています。

作者の森川ジョージ先生は、日々SNSでファンと交流し、近況をシェアされています。そんな先生が先日X(旧Twitter)で、近年「数十巻にも及ぶ長編漫画が増えている現状」と、「作者が倒れても描け」といったかつての連載環境について、ご自身の長きにわたる連載経験を踏まえ、持論を展開されました。

森川先生はまず「漫画家の健康問題」に言及。あるユーザーからの「『週刊少年ジャンプ』を発行する集英社は、作者への要求が非常に厳しく、作品掲載のためなら作者の意思や健康状態を顧みず描かせようとする」という意見に触れつつ、こう語ります。「テンポが早く、入れ替わりの激しい少年漫画誌でさえ、今や長期連載が増えてきました。昔のような『作者が倒れても描け』という本末転倒な状況は、ほぼ見られなくなりましたね。」

長期連載を担当する編集部も、クリエイターの健康を考慮したスケジュールを組むようになっていると強調。多くの長期連載作品で、作者に休養や取材のための期間が設けられているのは、もはや当たり前の光景。かつてとは環境が大きく変わったと指摘しています。

さらに森川先生は、「作品そのものよりも、それを作り出す職人(作者)が一番大事」という点は、もはや周知の事実だろうと続けます。

更新頻度の速い少年漫画誌でも、長期連載が増えている現状。「人が病気になっても無理やり描かせる」といった本末転倒な状況は、今やほとんど見られないとのこと。これは『週刊少年ジャンプ』だけでなく、『週刊少年サンデー』や『週刊少年マガジン』といった各誌共通の認識だそうです。

この議論に対し、あるユーザーからは「今の漫画は才能が枯渇していて、金儲けのために当然のように引き延ばしている。昔のジャンプ連載は、長くても大体30巻くらいで終わっていた。」という意見が寄せられました。

これに対し森川先生はバッサリ。「『才能が枯渇したから連載を延長している』なんて意見は、全く同意できませんね。」と反論。「昔は20巻もあれば『超長編』と呼ばれ、それが当時の限界だと思われていました。しかし、その枠を打ち破る人が現れ、その環境で育ったクリエイターたちがさらに限界を引き上げた。『無理だろう』が『意外とできる』に変わっていったのは、そうした先人たちの努力の積み重ねがあったからこそ、今があるんだと思います。」

続けて、先生は例を挙げます。「メジャーリーグでは、エースで4番を打つ選手が現れ、ボクシング界では4階級制覇、さらには2階級で主要4団体統一王者が出るなど……。そんな環境で育つと、人の考え方は根本から変わります。漫画界も同じで、今や50巻を超える作品なんてゴロゴロありますからね。」

森川先生は、「そうした先人たちが希望を見せてくれたからこそ、今の漫画家や編集者、ひいては業界全体の新世代は、昔よりも総合的なレベルが上がっていると信じています。それは、世界的な地位や実際の収入データを見ても明らかでしょう。」と語ります。

そして、こう締めくくります。「今はまだ『引き延ばし』だとか『ネタ切れ』だと揶揄されることもあるかもしれませんが、不断努力する先人たちと、果敢に挑戦する新しい血があれば、いつかこの言説を覆せると信じています。これはあくまで僕個人の見解ですが、心からそう思っています。」

森川ジョージ先生のこのような経験談は、多くの人が抱く漫画業界への固定観念を覆すもの。今の漫画制作現場には、かつてのような「出版社に無理強いされる」といった状況はもはやない、という理解を深めるきっかけにもなります。

近年、多くの作品が潔く連載を完結させているのを見ると、完結させてもらえない、といったプレッシャーは感じられません。例えば、近年の『鬼滅の刃』、『呪術廻戦』、『僕のヒーローアカデミア』、『その着せ替え人形は恋をする』など、いずれも作者の意思で完結したものであり、ネタ切れでダラダラ引き延ばした印象は皆無です。これもまた、作者が創作に全力を注げる環境へと進化した証と言えるでしょう。