『千と千尋の神隠し』はなぜ海外でもウケる? 米俳優の“ある一言”が「腑に落ちた」「それだ!」と日本のSNSで話題に

スタジオジブリの名作『千と千尋の神隠し』は、日本のみならず世界中で長年愛され続けている作品です。特にアメリカでの人気の理由について、多くの人は「湯屋」や「ハク」といったキャラクターデザインなど、濃厚な日本文化の要素が「エキゾチック」に映るからだと考えていました。

しかし最近、X(旧Twitter)である日本のユーザーが、アメリカの映画評論家や俳優による『千と千尋の神隠し』評を紹介。それをきっかけに、「日本らしさ」が人気の理由だという考え方が大きく覆されることになりました。むしろ「自分の人生と重なる部分を見つけられる作品」だという視点が、日本のネットユーザーの間で大きな話題を呼んでいます。

この話の元になったのは、米紙『ニューヨーク・タイムズ』が企画した「21世紀の映画ベスト100」。500人以上の監督、俳優、批評家が2000年以降のベストムービーを選ぶというもので、『千と千尋の神隠し』も堂々のランクイン。俳優兼監督のソフィア・コッポラが個人的なお気に入りの1本として挙げていたり、ホラーの巨匠スティーヴン・キングが選考に参加していたりと、非常に豪華な企画でした。

その中で、アメリカの俳優ジョン・タトゥーロは、『千と千尋の神隠し』が人々の心を打つ理由について、こう語っています。「デパートや人混みではぐれて、パパやママを見失った経験のある子どもなら、誰でもすぐに物語に入り込める映画なんだ。」

この言葉に深く感銘を受けたのが、日本のXユーザー・こりまさん(@korimakorima)。「ビジュアルが日本的だからウケてるんだと思ってたけど、本当に心を掴んでいたのは『突然、頼れるものを失う』感覚だったのか。世界中の子どもが経験する、人混みで一瞬親を見失うあの不安な気持ち。大人になっても、実は完全には忘れてないんだよね」と、自身の気づきを投稿しました。

こりまさんは、私たちがインド映画やアメリカ映画を観て自分の人生と重なる部分を見つけるように、アメリカの人々もまた『千と千尋の神隠し』の中に、自分自身の物語を見つけて共感しているのではないかと考察しています。

この投稿は大きな反響を呼び、「夏祭りで迷子になった時の、心臓がキュッとなる感じを今でも覚えてる」といった共感の声が続々。誰もが経験することではないかもしれませんが、似たような記憶を持つ人にとっては、非常に強い没入感を生むようです。

また、別のユーザーからは、アメリカの人気歌手ビリー・アイリッシュがジブリ映画の大ファンであることを公言し、『Chihiro』というタイトルの楽曲をアルバムに収録したというエピソードも。一方で、彼女の兄であり音楽プロデューサーでもあるフィニアスは、幼い頃に両親が豚になるシーンがトラウマになり、今でもこの作品が苦手だと明かしているそうです。光と影、ですね……!

他のユーザーからは、『千と千尋の神隠し』が描いているのは「自由と不安が同居する」成長期の心境そのものではないか、という指摘も。親元を離れることは無限の可能性を意味する一方で、先の見えない不安や孤独感も伴います。こうしたテーマは『千と千尋の神隠し』だけでなく、アメリカ映画の『ホーム・アローン』や『スタンド・バイ・ミー』といった名作でも描かれてきました。

さらに、「神隠し」という言葉の持つ意味合いについての議論も。「神隠し」は単なる行方不明とは異なり、しばらくして本人がふらっと帰ってくることがあるものの、いなくなっていた間の記憶は曖昧……という特徴があります。「白い服の綺麗な女の人に連れられて遊びに行った」といった言い伝えも多く、ミステリアスで美しい山の神様のイメージと結びついた、日本ならではの都市伝説のようなものだという意見もありました。

『千と千尋の神隠し』は、ただのファンタジーアニメではありません。世界中で愛される理由は人それぞれ千差万別でしょう。しかし今回、俳優ジョン・タトゥーロの視点を通して見えてきたのは、この作品が国境を越えて、人類共通の記憶——人混みの中で拠り所を失い、それでも前に進むしかなかった、あの瞬間——に触れているからなのかもしれません。

これは日本だけの物語ではなく、世界中の子どもたちが理解できる感情の物語。SNSでの「我々は皆、かつて人混みで親を見失った子どもだったのだ」という言葉通り、これこそが多くの人々の共感を呼ぶ、非常に大きな要素の一つなのかもしれませんね。

via: togetter