1997年に公開されたスタジオジブリ屈指の人気作『もののけ姫』。主人公アシタカが、人間と森の神々との争いを目の当たりにするファンタジーでありながら自然への意識を問う物語は、公開当時193億円の興行収入を記録し、一時は日本映画史上歴代興行収入のトップに君臨しました。
そんな本作の4KデジタルリマスターIMAX特別先行上映会が10月20日に東京で開催され、イベントにはヒロイン・サンの声を担当した石田ゆり子さんが登壇。鈴木敏夫プロデューサーと共に、当時サン役に抜擢された驚きの理由を明かしました。

石田ゆり子さんはまずイベントで、「まさか何十年も経って、またこうして『もののけ姫』を観られるなんて、本当に幸せです。スクリーンが大きくてびっくりしました(笑)。IMAX版は没入感がすごいと聞いて、めちゃくちゃ楽しみです!」とコメントしました。

石田さんは当時を振り返り、「ある日、事務所に行ったら鈴木敏夫さんがいらっしゃって、当時のマネージャーと話していたんです。もう『ジブリ』という言葉を聞いてドキドキしてしまって。まさか自分に声がかかるなんて思ってもみませんでした。ヒロインのサン役だと聞いた時は、本当に嬉しくて飛び上がりそうでした。『なんで私なんだろう?』って思いましたね」と語りました。
すると、鈴木敏夫プロデューサーが笑いながらぶっちゃけました。「だって、宮崎駿のタイプだったから(笑)。主な理由は本当にそれなんです。以前、高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』で、石田さんがヒロインのおキヨを演じていたんですが、当時、宮崎駿が現場で彼女を見て、鼻の下が伸びてたんだよね(笑)。ちょうどサン役を誰にするか悩んでいた時で、『あ、これだ。声じゃなくて、見た目だ!』って思ったんです」。この発言には、会場中が大爆笑に包まれました。
▼ 『平成狸合戦ぽんぽこ』おキヨ

当時のアフレコについて、石田ゆり子さんは「まだ20代で、本業も声優ではなかったので、サン役は本当に手強かった」と告白。「事前にたくさんの資料をいただいたんですが、読み込んでみたらサンのセリフって実はそんなに多くないんです。呼吸や息遣い、そして人間でありながら獣になりたい、でもなれないという矛盾した状態を表現するのが本当に難しかったですね」と苦労を語りました。
石田さんはさらに笑いながら、「たぶん、私がいちばん長く収録していたんじゃないかな(笑)。アシタカ役の松田洋治さんはすごく上手で、サクサク録り終えていたのに、私はまるで居残り授業を受けている生徒みたいにずっと残っていました」と振り返りました。

特に石田さんの印象に残っているのは、あるシーンだそう。「サンが倒れたアシタカを助けて、狼の背に乗せて走るシーンがあるんですが、あれが最初に録ったシーンで、でも一番難しかったんです。宮崎監督から指導を受けた時、『“パンツ履いてないの?”って言うくらいのトーンで“お前、死ぬのか?”って言ってくれ』って言われて、もうポカーンとしちゃいました(笑)」と明かしました。
石田さんは語ります。「その時、私の心の中では『ダメ!死なないで!』って思っていたんですが、監督はサンにとっては『パンツ履いてないの?あ、そう』くらいの感覚なんだって言うんです。当時の私には理解するのが難しすぎて、毎日泣きそうでした。でも、この仕事は私にとって本当に夢のような体験でした——夢のようでもあり、地獄のようでもあり(笑)」。

石田さんは当時を振り返って言います。「宮崎駿監督は一切妥協しない方で、ダメなものはダメってハッキリ言うんです。きっと、あの時は本当に私を降板させることも考えていたんじゃないかなって(笑)。でも、あの経験は一生忘れられません。今でも、もう一度アフレコできるならって思うけど、もうあの時の声は出せないですね」。
しかし、『もののけ姫』がご自身にとってどんな意味を持つか問われると、「海外に行った時、どんな作品に出たの?って聞かれるんですが、『もののけ姫でサンを演じました』って言うと、相手が『ワーオ!すごい!』って、もうめちゃくちゃ尊敬してくれるんです(笑)。これぞまさにジブリの威力ですよね」と、その影響力の大きさを語りました。

約20年前のこととはいえ、石田ゆり子さんにとって『もののけ姫』のアフレコは、苦労もありつつも非常に興味深い思い出だったことが伺えます。これまでのキャリアの中でも、めったにないアフレコ体験だったことでしょう。しかし、鈴木敏夫プロデューサーのぶっちゃけ話はまさかの展開でしたね。宮崎駿監督のキャスティングって、そんな理由だったとは……!
via: Modelpress