ゲームクリエイターの小島秀夫監督が、このほど『WIRED』日本版のインタビューに登場。読者からの質問に答える一問一答形式の企画で、自身がゲーム業界を志した原点を振り返りました。監督は、1985年に発売された『スーパーマリオブラザーズ』が「人生で最もプレイしたゲーム」であり、クリエイターの道へと導いた決定的な一本だったと明かしました。

「人生で一番プレイしたゲームは?」という質問に対し、小島監督は「それはもう『スーパーマリオブラザーズ』ですね、間違いなく」と即答しました。
映画的なストーリーテリングや、複雑で壮大な世界観で知られる小島監督だけに、この答えは意外に感じたファンも多いかもしれません。しかし監督は続けて、この一見シンプルな横スクロールアクションこそが、ゲームというメディアが秘める無限の可能性を初めて教えてくれた作品だったと語ります。

監督が大学生だった当時、なんと『スーパーマリオブラザーズ』をプレイするために授業をサボり、1年間もひたすらやり込んだという驚きのエピソードも。今では横スクロールアクションをプレイすることはほとんどないそうですが、「もしこのゲームがなければ、ゲーム業界には入っていなかったでしょうね」と笑いながら、そのゲームデザインの巧みさを鮮明に記憶していると話しました。
マリオが左から右へ走り、ジャンプする。基本はこれだけなのに、ダッシュボタンの存在がジャンプの軌道と速度に絶妙な変化を生み出し、攻撃や回避の判断に奥深さをもたらしている――。このわずか2つのボタンで生まれる操作の駆け引きこそが、『スーパーマリオーブラザーズ』を当時の数多のゲームの中から傑作たらしめ、今なお色褪せない面白さの源泉なのだと分析します。
監督が指摘するのは、本作には明確なストーリーがほとんどないにもかかわらず、プレイヤーは自分が冒険している感覚を強く得られるという点です。ドット絵で描かれ、複雑なシナリオもない。それでも確かに感じられる「冒険感」。この体験こそが、監督に「ゲームというメディアは、いつか必ず表現力で映画を超える」と確信させた瞬間だったそうです。
また、任天堂が作り上げた世界観も重要だったと付け加えます。背景設定に過ぎないキノコ王国ですが、そこには日本の民話や『不思議の国のアリス』のようなファンタジー要素が巧みに織り交ぜられています。ステージを進むごとのビジュアルの変化や巧みなレベルデザインを通じて、プレイヤーは冒険の進行と世界の広がりを肌で感じることができたのです。
インタビューの後半では、自身の代表作である『メタルギアソリッド2』におけるテクノロジーと社会の描写にも言及。同作はAIの到来を予言したと評されがちですが、本当に描きたかったのはデジタル社会そのもの、つまり膨大な情報が交錯することで「意志」のようなものが生まれる状況だったと語りました。