小学館の漫画アプリ「Manga One(マンガワン)」が、過去に女子高生への強制わいせつ事件で有罪判決を受けた漫画家・山本章一氏(本名:栗田和明)を別名義で起用していた問題。ネット上で大炎上する中、多くの漫画家が同アプリでの作品掲載停止を発表する事態に発展しています。
そんな火中の3月2日、小学館とマンガワン編集部は、作家の起用をめぐる一連の騒動について第三者調査委員会を設置すると発表。さらに、現在連載中の『星霜の心理士』の原作者である八ツ波樹氏が、過去に女子中学生への強制わいせつ事件で逮捕された『アクタージュ act-age』の原作者・松木達哉氏本人であることを認め、謝罪しました。この発表が、さらなる波紋を広げています。
(関連記事:小学館、性加害作家の“別名義”連載で炎上…謝罪するも「責任転嫁」「作家を庇っている」と批判殺到
小学館の性加害作家起用問題、赤松健氏と日本漫画家協会も声明を発表。クリエイターが安心して創作できる環境改善を求める )

小学館は公式サイトで、「当社は、性加害、性搾取、その他あらゆる人権侵害を決して看過いたしません」と表明。山本章一氏の起用について、被害者や『常人仮面』の作画を担当した鶴吉繪理先生、読者、関係者各位に改めて深く謝罪しました。
本件についてはすでに社内調査を開始しているとした上で、マンガワン編集部が主体となり、第三者委員会を設置することを決定。以下の点について調査・検証を行うとしています。
『堕天作戦』の掲載終了に至る事実経緯
『常人仮面』の連載開始に至る意思決定の過程
担当編集者が原作者と被害者との示談交渉に関与したとされる経緯
マンガワン編集部における漫画家・原作者の採用プロセス
編集部全体の人権意識とコンプライアンス体制の問題
これにより問題点を洗い出し、原因を究明、再発防止策を提言するとのこと。第三者委員会の詳細については、決定次第改めて告知するとしています。最後に「皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを、重ねて深くお詫び申し上げます」と謝罪し、作家や従業員、関係者への誹謗中傷やプライバシー侵害を控えるよう呼びかけました。

さらにマンガワン編集部は、かつて『週刊少年ジャンプ』で『アクタージュ act-age』を連載していた原作者・松木達哉氏を、「八ツ波樹」という別名義で『星霜の心理士』の原作者として起用していた件についても経緯を説明しました。
松木氏は2020年8月に強制わいせつ罪で逮捕・起訴され、懲役1年6ヶ月・執行猶予3年の判決が確定しています。編集部は、この事実を把握した上で、同氏を『星霜の心理士』の原作者として起用したと認めました。起用にあたっては、判決が確定し執行猶予期間も満了していること、事件に対する本人の反省、再犯防止への取り組み、専門家による社会復帰への評価などを確認し、編集部内で協議の上で決定したとしています。
起用に至る経緯は以下の通りです。
2024年8月29日、マンガワン編集部から松木達哉氏名義のXアカウントに連絡を取り、面会の機会を打診。
8月30日、松木氏からメールで、小説投稿サイトに掲載していた小説『勇者一行のメンタルカウンセラー』が共有される。これが後の『星霜の心理士』の原案となった。
9月6日、当時の編集長の承認を得て、初回の打ち合わせを実施。その場で松木氏は被害者への深い謝罪と反省の意を述べ、事件から判決、執行猶予期間満了までの生活や心境の変化について説明した。
また、松木氏は旧筆名での活動が被害者に事件を想起させ、二次加害につながることを懸念し、新しいペンネームでの活動を希望したとのことです。
編集長への報告と承認を経て、「八ツ波樹」名義での掲載を決定。ペンネーム変更の最大の理由は「被害者への配慮」であり、この事実はごく一部の編集者のみで共有されていたと説明。八ツ波氏は事件後、カウンセリングを継続しており、担当カウンセラーからも十分な心理療法と更生への努力が認められていることから、編集部は社会復帰の機会を一方的に否定すべきではないと判断した、としています。

一方、作画を担当する雪平薫先生には、契約前に原作者と編集者から直接、過去の事件やそれに伴うリスクについて説明。雪平先生は「初めて漫画原作を読んで涙を流し、自分が描くべき作品だと感じました。この作品が持つテーマや社会的意義は、世に出すべき価値がある」として連載を快諾したとのことです。今回の公表にあたっても事前に雪平先生と協議し、先生からは作品と連載の継続を望む声が上がっているといいます。
しかし編集部は、「このような形での公表を余儀なくされた今、こうした対応が真に被害者への配慮たり得たのか、かえって被害を拡大させることにならなかったか、という点について、我々の配慮が十分でなかったことを痛感しております」と反省の弁を述べ、今回の説明によって被害者に再び辛い思いをさせたことについて深く謝罪しました。
そして本日より、『星霜の心理士』は当面の間、更新を休止するとのこと。休載に伴う原作者の八ツ波樹氏、作画の雪平薫先生への不利益については、誠心誠意対応するとしています。

しかし、この声明が発表されるやいなや、ネット上では新たな疑問が噴出。「なぜ同じ犯罪歴のある作家なのに、『星霜の心理士』のケースでは作画担当に事前説明と同意を得ていたのに、『常人仮面』の件ではそれがなかったのか?」という指摘です。『常人仮面』の作画担当・鶴吉繪理先生は、問題が発覚するまで何も知らされていなかったとされています。
読者からは「2つの案件で対応に差がありすぎる」「『星霜の心理士』の起用はこんなに慎重なのに、なんで『堕天作戦』と『常人仮面』の件はあんなに雑だったんだ?差が激しすぎて意味がわからない」など、対応の一貫性のなさを批判する声が相次いでいます。
また、公式声明で松木氏がカウンセリングを継続し深く反省している点に触れたことに対し、「それができるなら、なぜもう一方の件はあんな杜撰な対応だったのか?」というもっともなツッコミも入っています。

作家個人の問題だけでなく、矛先は小学館や編集部の体質にも向けられています。「本当に責任を感じているなら、どの編集長、どの編集者が決定したのか名前を書くべきでは?」「なぜいつも作家だけが矢面に立たされるのか」「会社として人権を重視してきた、みたいな言い方だけど、これまでの対応が酷すぎたから今こうなってるんでしょ」など、厳しい意見が飛び交っています。

さらに、『週刊文春』の公式Xアカウントが、この件についてすでに取材を進めており、詳細を報じることを予告。これを受け、多くのネットユーザーから「文春が嗅ぎつけたから、慌てて公表したんじゃないの?」「メディアに追われなければ隠し通すつもりだったのでは?」といった憶測や、「タイミング最悪すぎる」といった声も上がっています。

「更生した作家の社会復帰」というデリケートな問題を抜きにしても、小学館とマンガワン編集部の作家起用プロセスに大きな問題があったことは明らかです。さらに、発覚した2つのケースで対応に明らかな差があり、現在の小学館の姿勢を信頼することは困難と言わざるを得ません。
もし最初から誠実に対応していれば、ここまで大きな騒動にはならなかったかもしれません。問題は罪を犯した作家個人だけでなく、小学館全体の意思決定プロセスとコンプライアンス意識が、読者からの信頼を失墜させている点にあります。今後の第三者委員会の調査と、メディアの続報が待たれます。
via: togetter