最近、X(旧Twitter)でとある海外ユーザーの投稿が大きな話題を呼んでいます。その内容は、「最近のアニメの男主人公、みんな同じ顔じゃない?」というもの。特にラブコメや異世界転生系の作品では、黒髪で平凡、これといった特徴のない“テンプレ顔”ばかりだという指摘です。
この投稿がネット上で議論を巻き起こす中、数々の人気作品に携わってきたアニメーター兼イラストレーターの神崎廣(かんざきひろ)氏が反応。このデザインの裏側にある、明確な創作上の戦略について解説しました。

話題の発端となった海外ユーザーは、「なんでラブコメ、ファンタジー、コメディ系アニメの主人公って、ほとんどが同じ黒髪、同じ髪型で、なんだかパッとしないヤツばっかりなんだ?」と投稿。このツッコミが、多くの共感と議論を呼びました。
実際に投稿に添えられた画像を見てみると、確かに指摘通りの外見のキャラクターがズラリ。ぱっと見だと、Googleの画像認証「私はロボットではありません」のお題にすら見えてきそうです(笑)。
アニメ『エロマンガ先生』や『ローゼンメイデン』の制作に参加し、ライトノベル『俺の妹がこんなに可愛いわけがない!』のイラストを担当したことでも知られる神崎廣(かんざきひろ)氏は、この疑問に次のように答えています。
ラブコメというジャンルにおいては、「ヒロインこそが最大の“売り”」であるため、キャラクターデザインはヒロインの魅力を最大限に引き出すことを最優先します。そのヒロインをより際立たせるために、主人公はあえて地味で、目立った外見的特徴を持たないようにデザインされることが多いのです。これによって、ヒロインとの対比が生まれるというわけですね。
さらに、主人公の外見を「目立たなく」するのには、もう一つ重要な理由があると指摘。それは視聴者の「感情移入」を促すためです。キャラクターの特徴が曖昧で、より一般人に近いほど、視聴者は自分自身を投影しやすくなり、物語に没入できるというのです。もちろん、神崎氏自身はそうしたデザイン方針の中でも、主人公が単なる“無個性な存在”に成り下がらないよう、最低限の魅力を持たせる努力をしていると強調。また、かつて安田朗(あきまん)先生が語っていた「キャラクター遠近法」という考え方に大きな影響を受け、キャラクターデザインのヒントにしていることも明かしました。

神崎氏はこの現状について、もはや一種の「お約束」であり、長年かけて確立されてきた表現形式だと認めます。しかし、こうしたスタイルがあまりにもマンネリ化してきた際には、クリエイター側も作品が型にはまりすぎないよう、何かしらの変化を加えたいと考えるものだ、とも付け加えています。

この解説には多くのネットユーザーも納得の様子。「主人公はあくまでヒロインを引き立てるための存在」という考え方に同意する声が多数寄せられました。一方で、「主人公のキャラが立ちすぎると、かえってヒロインの影が薄くなってしまう。そのバランス感覚がクリエイターの腕の見せ所だ」といった意見も見られました。
中には、このデザイン手法を「ラーメン」に例える秀逸なコメントも。「背脂とニンニクのパンチを効かせたいなら、スープはあえてシンプルにする。それと同じで、主役(ヒロイン)を目立たせるための引き算のデザインだ」というもので、キャラクター配置の考え方を的確に表現しています。

また、こうした“普通の主人公”は、視聴者が自分を投影しやすい「アバター」のような役割を果たしている、という見方もあります。対照的に、『この素晴らしい世界に祝福を!』の佐藤カズマのように、見た目はシンプルでも性格が非常にアクの強いキャラクターは、見ていて面白いものの、「これが自分だ」と感情移入するのは難しいかもしれません。


つまり、視聴者に「これは俺の物語だ!」と感じてもらうためには、外見だけでなく性格も、あまり強烈な個性を持たせない方が効果的なのかもしれません。
この「平凡な主人公」問題、単なる手抜きや使い回しではなく、商業的な戦略、物語上の要請、そして視聴者心理までを考慮した、実に奥深い結果だったのですね。もちろん、最終的にそれを受け取る視聴者がどう感じるかは、また別の話ですが……!
via: togetter