2025年4月から半年間にわたって開催される「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)。国家的な一大イベントとして準備が進められていますが、想定を上回る開催費用などから、世間ではいまひとつ盛り上がりに欠けるという声も。特に、公式キャラクターのミャクミャク様は、2022年の登場以来、その独特すぎるデザインから賛否両論。「日本のクールジャパンも地に落ちた」「国際的な恥さらし」といった厳しい意見もあれば、「キモかわいい」「一周回ってアリ」と評価する声も上がるなど、ネットではたびたび話題になっています。
そんな中、X(旧Twitter)でとあるユーザーが「なぜこのデザインが選ばれたのか、いまだに分からない」と疑問を呈し、最終候補に残った5つのロゴデザイン案を投稿。このポストが大きな注目を集めました。
▼ 当時のロゴ最終候補作品

投稿主は、「ミャクミャク様以外の4つのデザインが、どうして劣っていると判断されたのか全く理解できない。何か裏取引でもあったのでは?」と、選考過程に強い疑念を呈しています。
(開幕を目前に控えた今でも、こうした疑問の声が上がるあたり、万博に対する世間の複雑な心境がうかがえますね)

この投稿に対し、ゲームのグラフィックデザインなどを手掛けるyusamatsu【芸夢】さんが専門家の視点から反論。「デザイナーやイラストレーターの友人たちと話したことがあるけど、プロの目線ならE案(ミャクミャク)以外はありえない」と断言し、大きな反響を呼んでいます。

yusamatsu【芸夢】さんは、その理由をいくつか挙げています。
国際的なイベントでは、世界中のあらゆる組織とデザインの権利問題で揉めないことが最優先される。
様々な媒体で使いやすく、視認性が高く、デザインが崩れにくいこと。万博ロゴはグッズや印刷物、看板など、大小さまざまな媒体で使われます。そのため、白黒印刷やキーホルダーのような極小サイズでも潰れず、誰にでもハッキリと認識できるシンプルなデザインが求められるのです。
デザインやイラストは「魅力的かどうか」よりも、こうしたプロの基準を満たしているかが重要で、これこそが素人とプロの決定的な違いだと指摘。さらに、昨今話題のAI生成イラストが商用利用で難しいとされるのも、まさにこの点にあると語ります。プロがAIを「道具」として使うのは問題ないものの、AIの出力結果に完全に依存するのはNG、というわけですね。
yusamatsu【芸夢】さん自身も、ゲーム会社時代の経験から「企画担当者からの無茶な要求や、アートディレクターによる徹底的な修正を経て、プロのデザイン基準の厳しさを痛感した」と振り返っています。

この解説に対し、「つまり、他の案はレベルが低かったということ?」という質問が寄せられたそうですが、yusamatsu【芸夢】さんはこれを否定。他の案のレベルが低いわけではなく、今回の「万博ロゴ」という用途には合わなかっただけだろう、と補足しています。
デザインとは常に「コストと表現力のバランス」で成り立っており、選考側が何を重視したかの違いに過ぎない、とのこと。もし芸術性がより重視されるコンペであれば、他の案が選ばれていた可能性も十分にあったでしょう。

しかし、最初の投稿主はこの解説に納得がいかない様子。「デザイナーやイラストレーターは頭がおかしいのか?真面目にキャラクターを作っている人たちを侮辱している」と反発しました。
これに対し、yusamatsu【芸夢】さんは「その真面目にキャラクターをデザインしている人たちも、イラストレーターやデザイナーなんですが…」と、冷静にロジックの矛盾を指摘していました。

また、別のユーザーからは「媒体を選ばないなら、もっとオシャレでシンプルなデザインにすればいいのに、なぜこんな不気味なデザインが選ばれたのか?」という素朴な疑問も。
yusamatsu【芸夢】さんによると、デザインはただ「シンプル」であれば良いというわけではないとのこと。シンプルさを追求しすぎると、かえって世界中の既存のロゴと「デザイン被り」を起こすリスクが高まるのだそうです。印刷適性を考えれば色数や簡潔さは重要ですが、それ以上に「独自性(オリジナリティ)」が不可欠。ロゴの類似性は物理的に完全なチェックが不可能なため、「99%被らない」と言えるレベルのデザインを目指す必要があるのです。

この「デザイン被り」問題で記憶に新しいのが、東京2020オリンピックのエンブレム問題です。当初発表されたデザインが、海外の劇場のロゴと酷似していると指摘され、白紙撤回に追い込まれました。国際的なイベントのロゴデザインがいかに難しいかがよく分かる事例です。
▼ 当初発表されたものの、盗用疑惑で撤回されたエンブレム

▼ その後、新たに選ばれた市松模様のエンブレム。よりシンプルで、独自性の高いデザインになりました。

一方で、ミャクミャク様を支持する声も根強くあります。「このロゴを見た瞬間、ぬいぐるみやキーホルダーなど、無限のグッズ展開が目に浮かんだ」「他の4案より、ミャクミャク様が一番記憶に残る。キャラクターとしては大正解」といった意見も多く、そのインパクトと商品化のしやすさを評価する声は少なくありません。

デザインの好き嫌いは人それぞれですが、今回話題となったプロのデザイナーによる解説は、なぜ「ミャクミャク様」が選ばれたのか、その理由を深く理解する一助となったのではないでしょうか。
via: togetter