「ベテラン声優は進化し続ける、新人はますます厳しい時代に」緒方恵美さんが声優業界の現実を語り、新人へエール

『幽☆遊☆白書』蔵馬役や『新世紀エヴァンゲリオン』碇シンジ役、そして近年では『呪術廻戦』乙骨憂太役など、数々の人気キャラクターを演じ、今なお第一線で活躍し続ける声優・緒方恵美さん。デビューから30年以上経った今も、その仕事への情熱は衰えることを知りません。

そんな緒方さんが先日、自身のX(旧Twitter)で異例の長文を投稿。長年の経験から、声優を目指す方や、現在奮闘中の新人声優さんたちに向けて、声優業界の厳しい現状と心構えを語りました。

緒方さんのポストには、こんなメッセージが綴られています。 

「新人さんたち、もちろんキャラクター分析や演技のレベルは最低限クリアしてほしい。でも、それ以上に大切なのは、謙虚な姿勢と、周りのスタッフさんや先輩方への敬意だよ。

「心からの感謝」がなければ、この仕事は長く続けられない。普段からそれを実践している人こそが、本当にできている人。口先だけじゃなく、行動で示すこと。常に自分を省みることが、王道だよ。」

これは特定の作品の打ち上げでの出来事ではなく、たまたまその日、とある現場で目にした状況から、新人さんたちに注意喚起したいと思ったとのこと。

さらに緒方さんは、自身が主宰する声優私塾でも「生徒が白目を剥くほど語っている」とぶっちゃけ。卒業生が業界で問題を起こさず、安心して仕事を任せてもらえるよう、そして後輩たちが良いパフォーマンスと評判を築けるよう、熱い想いを込めているそうです。

この投稿は、小説家の師走トオルさんもリポストし、共感を表明。「レコーディング現場に数十回立ち会ったが、新人声優には本当に同情する」と語り、「大御所になればなるほど、台本を読む時間がないと思われている人ほど、徹底的に台本を読み込んでいる」と指摘。「こんな状況では、上の席は一向に空かない」と、その厳しさをストレートに表現しました。

この議論には多くのネットユーザーや業界関係者も参加。「台本を読み込む能力こそが淘汰システム。残っているベテラン声優は元々超人レベルだよね」「自分のセリフを覚えるだけでなく、歴史背景や建築構造まで研究する人もいる。一度読んだだけで直感的に正確な演技ができる人もいる」「新人は台本の読み方から学んでいる段階なのに、こんな先輩たちと一緒だとプレッシャーが半端ないだろうな」といった声が上がりました。

また、あるユーザーは、ベテラン声優の中田譲治さんが『空の境界』で荒耶宗蓮役を演じた際のエピソードを共有。台本を熟読するだけでなく、原作小説や関連資料まで徹底的に研究していたそうで、「そのプロ意識はもはや企業秘密レベル」と驚きを隠せない様子でした。

さらに、「声優は実演と違って年齢制限がないから、70代、80代でも子どもの役を演じられる人がいる。だから『椅子が空かない』んだよね」「この業界、本当に厳しい」といった意見も。

声優養成所出身のユーザーからは、「新人が台本を100回読んでも、ベテラン先輩が1回読んだ時の現場でのクオリティには及ばないことがある。先輩が名前だけでやっているわけじゃなく、本当に『経験の差』なんだと痛感する」「長く業界にいる先輩方は、実力があるだけでなく、常に進化し続けているからこそ尊敬できる」という声も聞かれました。

実際、現在の声優の仕事は専門の声優だけでなく、他の芸能人もクロスオーバーで参加することが増えています。さらに、録音技術の向上と効率化も進み、新人が露出の機会を得るのはますます困難に。しかも、ベテラン声優は演技が素晴らしいだけでなく、とても親切で礼儀正しい方が多く、「経験にあぐらをかく」なんてことは一切ない。この業界に食い込むのは本当に至難の業なのです。

この「声優界で新人がなかなか芽が出ない理由」を巡る議論は、業界の高いハードルと高圧的な環境を浮き彫りにするだけでなく、ある現実も示しています。それは、声でキャラクターに魂を吹き込むこの世界で、弛まぬ努力と徹底した準備、そしてスタッフや仲間との良好な関係を築くことこそが、確固たる地位を築き、長く活躍するための唯一の道だということです。


via: togetter