声優・緒方恵美さん、故人の声をAIで再現する風潮に警鐘「私が死んだ後、声を使わないでほしい」

テクノロジーの日進月歩は凄まじく、昨今話題の「画像生成AI」に続き、特定の人物の声を学習・再現する「音声生成AI」も大きな注目を集めています。しかし、その技術は声を生業とする人々にとって、新たな悩みの種にもなっています。

クリエイターの権利を守るため無断AI学習に反対する「NOMORE 無断生成 AI」の活動にも賛同しているベテラン声優の緒方恵美さんが、9月25日に自身のX(旧Twitter)を更新。「故人の声をAIで再現するサービス」について私見を述べ、その手法に疑問を呈したことが大きな注目を集めています。

緒方さんは、「AIで再現した“亡き妻”に「ごめん」 がんを見落とした医師の後悔…広がる“故人AIサービス” 生前の意思表示は?」という見出しの記事を引用しました。

その上で、自身の考えを次のように綴っています。「…改めて言いますが、私が死んだ後、私の声を使わないでほしい。生きてあなたの前に立っていた私と、作品の中の声を、覚えていてほしい。永遠に。」

さらに、続くポストでは具体的な疑問を投げかけます。
「仮に、AIで自分の家族を再現できたとして。貴方はそのAIと、どの位一緒にいられますか? 年間30万円のメンテ料を払い続けられますか? 似ているけどどこか違う、その笑顔に耐えられますか? もう未来を共有できないと悟った時、自分の手でそのスイッチをオフにできますか? 結局、そこに行き着く。」と、故人をAIで再現することの倫理的な問題点を鋭く指摘。最後に「自分の我儘より、相手の遺志を尊重して欲しい。」と締めくくりました。

声優という職業柄、自身の声がAIによって再現される可能性について、緒方さんは極めて慎重な姿勢を示しています。さらに、「『AI再現』は、私達声優だけの問題ではなく、すべての人間の尊厳の問題。臓器提供の意思表示のように、肖像や声を使ってもいいかどうかは、本人が事前に意思表示しておくべきこととして、すべての人に考えて欲しいことだと思います」と補足。この問題が個人の尊厳に関わるものであり、法整備の必要性も含めて社会全体で考えるべきテーマだと訴えました。

緒方さんの一連の投稿には多くの反響が寄せられ、「今の生成AIビジネスは、故人の墓を暴くような冒涜的な行為にまで堕ちてしまった」「聞いているだけで悲しくなるし、故人に対して失礼だ」といった、この風潮を批判する声も上がっています。故人をテクノロジーで再現する行為は、残された者の寂しさを埋めるためなのか、それとも単なる生者のエゴなのか、議論を呼んでいます。

もちろん、「AIによる音声再現」をめぐる問題は年々深刻化しており、もし悪用されて犯罪行為などに使われた場合、現状では法的な根拠に基づいて責任を追及することが困難です。日本の著作権法では「声」そのものが著作物として明確に定義されていないため、法的な保護が及ばず、野放しになっているのが実情です。

この新たなテクノロジーとどう向き合い、どのようなルールを設けるべきか。国レベルでの早急な議論が求められています。