ゲーム業界で大きな注目を集めている生成AIについて、カプコンがその活用方針を明らかにしました。同社は、ゲーム内にAIが生成した素材を直接使用することはしないとしつつも、開発の効率化や生産性向上のために、生成AIを積極的に活用していく姿勢を示しています。

カプコンが2026年3月23日に公開した最新の株主総会質疑応答にて、株主からの生成AIに関する質問に回答しました。同社は「AIが生成した素材をゲームに導入することはありません。しかしながら、開発の効率と生産性を向上させるための補助的な技術として、積極的に活用していく計画です」とコメント。現在はグラフィックやサウンド、プログラミングといった様々な分野で、関連技術の導入を検討している段階とのことです。
実はカプコンは、2025年1月にはすでに生成AI技術のテストを開始していました。報道によると、Google Cloudを利用して「アイデア生成」のプロトタイプシステムを構築し、ゲームの世界観や背景のディテールを考案する際に開発チームをサポートしていたとのこと。同社の技術研究開発を統括する阿部和史氏によれば、ゲーム開発で最も時間のかかる作業の一つが、ゲーム世界を構成する膨大なディテールやオブジェクトのデザインだそうです。

阿部氏は、例えば『モンスターハンター』のような大規模タイトルでは、開発チームは背景に登場する一つ一つのオブジェクトに対して複数のコンセプトをデザインし、最終的には数十万にも及ぶアイデアを比較検討する必要があると指摘。各オブジェクトにはテキストによる説明とビジュアルの参考資料が必須で、世界観全体のスタイルに一貫性を持たせるため、開発プロセスは非常に時間のかかるものになっていたと語ります。
カプコンが開発した生成AIシステムは、デザインドキュメントや画像、スプレッドシートなどのデータを読み込み、既存のコンテンツをベースに新たなアイデアを提案することで、チームのコンセプト考案プロセスをスピードアップさせます。AIによって生成されたこれらのビジュアル資料はアートディレクターやアーティストチームに提供され、最終的な本番用のアセットは、これまで通り人間のクリエイターの手によって仕上げられるとのことです。
カプコンは、生成AIの主な役割はあくまで反復的で時間のかかるタスクの処理であり、ゲームの最終的なコンテンツは開発チームが制作するという点を強調。この方針は、AI技術に対するゲーム業界の慎重な姿勢を反映していると言えるでしょう。
近年、業界のホットトピックとなっている生成AIですが、カプコンは最近、NVIDIAの技術デモで『バイオハザード レクイエム』が使用され、注目を集めたことも記憶に新しいところです。このデモでは、一部のプレイヤーから「キャラクターがリアルすぎる」「原作の雰囲気が失われている」といった声が上がり、議論を呼びました。これに対しNVIDIAは、DLSS 5がAIによってフレームを再生成し、ビジュアルを向上させる技術であると説明しています。

関連記事:NVIDIA DLSS 5が物議! AIによる描画生成にゲーマーから疑問の声も―ジェンスン・フアンCEOは「その批判は全くの見当違い」と反論
海外メディア『Game Developer』が今年発表した調査によると、ゲーム開発者のおよそ36%が、すでに日々の業務で生成AIを使用しているとのこと。その多くはデータのリサーチやアイデア出しといった用途で、コアとなるクリエイティブな作業は依然として人間の手で行われているようです。
AI技術が進化を続ける中、ゲーム業界は生産性の向上とクリエイティブな作風の維持という、難しいバランス取りを迫られています。今回のカプコンの発表は、大手ゲームメーカーが生成AIを導入するにあたり、クリエイターの仕事を置き換えるのではなく、あくまで“補助ツール”として活用する道を選んでいることを示すものと言えそうです。
via: IGN