『劇場版 モノノ怪』プロデューサーが引責引退。最終章での櫻井孝宏さん“サプライズ起用”が物議「観客の選択権を奪った」と謝罪

5月末にシリーズ最終章「蛇神」が公開されたばかりの『劇場版 モノノ怪』ですが、企画プロデューサーを務める山本幸治氏が6月5日、自身のX(旧Twitter)にてプロデューサー職からの引退を発表しました。

この背景には、過去の不倫報道により主人公「薬売り」役を降板した声優の櫻井孝宏さんが、本作で事前告知なく再登場したことがあり、多くの観客から不満の声が上がり物議を醸していました。山本氏は、この件の責任を取る形で謝罪を表明しています。

『劇場版 モノノ怪』は2024年から三部作として展開されています。当初、第一部「唐傘」は2023年に公開予定でしたが、2022年10月に櫻井さんの長期不倫が『文春オンライン』によって報じられたことを受け、制作側は主人公「薬売り」役を櫻井さんから神谷浩史さんへ交代することを決定。当時、公式サイトでは次のように発表されていました。

「『劇場版モノノ怪』は舞台を大奥に移し、女性たちの苦しみと救済を描こうとしております。その作品性の観点からの決断となります。」

しかし、5月末に『劇場版 モノノ怪 第三章 蛇神』が公開されると、劇中に櫻井孝宏さんが声で出演していることが判明。このキャスティングについて公式からの事前告知が一切なかったため、ネット上では瞬く間に大きな議論が巻き起こりました。

▼ 櫻井さんが演じたのは「離(はなれ)の薬売り」で、いわばもう一人の薬売りとも言えるキャラクターです。

寄せられた批判に対し、山本氏は一連の経緯を説明。報道当時、制作チーム内では様々な憂慮の声が上がり、一時は制作続行も危ぶまれる状況だったといいます。櫻井さんの降板を決断したのは、スキャンダルそのものだけでなく、観客が作品を純粋に楽しめない環境になってしまうことを懸念したためだったと明かしました。

今回の再起用については、第三章の物語が大きく関係していると山本氏は語ります。監督の過去のインタビューによれば、「蛇神」に続く「百目」篇で物語をどう締めくくるかが課題となっており、その中で「もう一人の薬売りを登場させる」というアイデアが浮上したとのこと。

山本氏は、別バージョンの薬売りを登場させる、映像のみで過去の姿を見せる、あるいは一切登場させないなど、多くの選択肢があったことを認めつつも、かつての薬売りにもう一度会いたいと願うファンの声も忘れてはいなかったと説明。最終的に、櫻井さんが演じたバージョンのキャラクターを正式に再登場させることを決断したと述べました。

「かつてこのキャラクターを愛してくれたのに、その存在が消されてしまったかのように感じていたファンの皆さんに、『離の薬売り』との再会を喜んでもらいたい」という思いがあったそうです。

山本氏は、問題の本質は櫻井さんの再起用そのものではなく、事前の説明や配慮が不足していた点にあると分析。制作チームとしては、観客に劇場でサプライズを体験してほしいという思いから情報を伏せ、上映後3日間のネタバレ禁止といった宣伝戦略をとったとのこと。

しかし、今となってはその判断に重大な落ち度があったと認め、「このキャラクターの登場を望まないお客様が、事前に鑑賞するか否かを判断する権利を奪ってしまいました。問題の大きさを軽視しており、不快な思いをさせてしまった皆様に深くお詫び申し上げます」と述べ、キャスト情報を事前に公開しなかったことについて正式に謝罪しました。

そして声明の最後に、山本氏はプロデューサー職からの引退を正式に表明。「今回の判断の責任は自分にあると考え、プロデューサーの仕事を終えることにしました」と綴りました。山本氏は、これまでも強引な企画推進で問題を起こすことがあったと告白。それでも諦めずに前進してきたものの、今回の『モノノ怪』の一件については自らが責任を負うべきだと判断したといいます。

自身の決断によって不快な思いをしたファンや関係者へ改めて謝罪するとともに、近年、自身の価値観と世の中や観客の感覚との間にズレが生じていることを痛感していたと吐露。今後は経営や後進の育成、業界改革などに裏方として注力していく意向を示しました。

山本氏は最後に自身のキャリアを振り返り、「フジテレビ時代から20数年、100本ほどの作品を企画・プロデュースしてきました」とコメント。中でも中村健治監督の作品は常に特別な存在だったと語ります。

「最後の作品が『劇場版モノノ怪』で本当に良かった。作品はとても高いクオリティで仕上がっています。ぜひ劇場でご覧ください」と、作品への愛情を滲ませながら締めくくりました。

この発表を受け、ネット上では賛否両論が巻き起こっています。「櫻井さんは今も声優として活動しているのだから、再起用自体は問題ない。告知しなかったのがまずかっただけ」といった擁護の声がある一方、「『作品性の観点から』降板させたはずなのに、こっそり復帰させるのは筋が通らない」「当時の発表を自ら覆す行為で、裏切られた気分」など、厳しい批判も数多く見られます。

すでに公開中の『劇場版 モノノ怪 第三章 蛇神』は、興行収入・作品評価ともに好調なスタートを切っているとされますが、今回の“サプライズ起用”が大きな波紋を広げたことは間違いありません。この一件が今後どのような影響を及ぼすのか、引き続き動向が注目されます。