職場の友人の冗談「成人漫画にだけは堕ちるなよ」に対し、ある漫画家が「成人漫画は全然簡単じゃない!」と持論を展開

「成人漫画」に対して、皆さんどんなイメージをお持ちでしょうか? ACG界隈では、成人漫画家が一般向け作品を手がけることを「上岸(じょうがん)」なんて呼んだりしますよね。多くの人にとって「上岸」は、商業作品として成功するチャンスを意味するようです。成人向け作品ももちろん収益化は可能ですが、どうしても「商業大作」というイメージとは結びつきにくい、というのが一般的な認識かもしれません。

そんな認識に対し、X(旧Twitter)で活動する漫画家・赤木継先生(@nougekanow)が異を唱え、特に「成人漫画を描くことが『堕落』だ」という意見には納得がいかない様子。その投稿が大きな話題を呼んでいます。

赤木先生によると、過去に連載作品が打ち切りになった際、職場の同僚から冗談交じりに「大変だったね、でも成人漫画にだけは堕ちるなよ」と励まされたことがあったそうです。

「成人漫画に堕ちる」という表現には、成人漫画を一段下に見るニュアンスが含まれていますが、プロとして連載経験を持つ赤木先生は、そのたびに「いやいやいや、成人漫画は全然簡単じゃないんですよ!あれはめちゃくちゃハードルが高い領域で、僕にはとても無理です!」と心の中で反論していたといいます。

赤木先生は、本業が脳神経外科医という異色の経歴を持つ漫画家さん。漫画が好きで、創作の道にも足を踏み入れたそうです。

連載作品を描いていた頃、成人漫画やBL漫画を資料として模写していた経験があるとのこと。その過程で、性描写を主とする作品では、コマ割り、セリフのテンポ、キャラクターの動き、線の強弱、表情、構図、さらには擬音に至るまで、すべてが「エロさ」を演出するために緻密に計算されていることに気づいたそうです。

特に「キャラクターの口元一つとっても、注目すべきディテールが無限にある」と語ります。「口の開き具合、形、口角の角度、舌の位置、線の強弱、歯の描写……これらが繊細に調整されている。さらに汗や吐息といった細部の表現、透明人間や腹部の断面図といったクリエイティブな演出まで加わり、これは短期間で習得できる技術ではないと痛感しました」とのこと。

赤木先生はさらに、「ただ裸の女性を描くだけなら、一般的に『上手い』と言われるレベルまでは描けるかもしれない。しかし、読者に強い性的興奮を抱かせる作品を創り出すのは、まったく別の世界。今の自分にはできないし、将来できるようになるかもわからない」と付け加えています。

赤木先生は、「成人漫画を描くこと」と「一般漫画を描くこと」の間に「優劣」はなく、技術と目的が異なるだけだと考えています。そして、「成人漫画は決して堕落の場所ではない」というメッセージを伝えたいと語っています。

赤木先生のこの発言は、他の漫画家さんたちからも共感を呼び、「成人漫画は確かに挑戦的な分野だ」という声が多数寄せられました。中には、技術力が伸び悩んだ成人漫画家が「一般向けに『堕ちる』」という逆説的な表現で、一般漫画へ転向するケースもある、という興味深い意見も飛び出しました。

もちろん、一般漫画も成人漫画も、それぞれ異なる芸術的価値を持っています。異なる創作視点に触れ、理解を深めることで、こうした優劣の区別はなくなるのかもしれません。それぞれの創作の苦労を知ることで、どの分野にも独自の素晴らしさや凄さがあることに気づかされますね。

via: おたくま経済新聞