近年、日本アニメは国内外で目覚ましい発展を遂げ、そのソフトパワーを遺憾なく発揮しています。特にコロナ禍においては、国際市場での存在感を一層高めました。
2023年のアニメ制作市場は過去最高を記録したとはいえ、その裏では制作体制が破綻するケースも少なくありません。竹嶋えく先生が描く人気漫画『ささやくように恋を唄う』のTVアニメ版は、2024年4月の放送開始以降、頻繁に作画崩壊が指摘され、制作スケジュールの都合で度重なる放送延期に見舞われました。そして先日、ついにBD(ブルーレイディスク)の発売中止が発表され、多くのファンから悲鳴と怒りの声が上がっています。

原作漫画『ささやくように恋を唄う』は、決してメジャーではないものの、百合好きの間では高い人気を誇る作品です。一迅社が発行する月刊『コミック百合姫』で連載され、単行本は現在10巻まで刊行されています。物語は、高校1年生の木野ひまりが、新入生歓迎会で出会った高校3年生の先輩ボーカリスト・朝凪依に一目惚れするところからスタート。ひまりが驚異的な行動力で依に猛アタックし、二人の奇妙で甘酸っぱい百合の学園ラブストーリーが展開されます。

しかし、横浜アニメーションラボとCloud Heartsが制作を手がけたこのアニメは、当初2024年1月放送開始予定だったものの、まず4月に延期。いざ放送が始まると、第8話で制作の遅れにより3週間の中断を挟み、第10話放送後には再び放送休止が発表されました。結局、最終2話がまとめて放送されたのは、実に半年後の12月29日という異例の事態に。
その間、作画クオリティの低さや、見るに堪えない奇妙な作画が頻発し、ファンは「これはもう『惨事アニメ化』だ」と嘆きの声を上げていました。



ファンが「BDで修正版がリリースされるのでは」と一縷の望みを抱いていた矢先、飛び込んできたのはまさかの発売中止の報でした。公式からは「社内事情」との説明のみで、詳細については一切触れられていません。さらに、アニメ制作に携わったCloud Heartsの公式サイトが、2024年10月以降ドメイン切れでアクセス不能になっていることも判明。この状況がファンの間でさらなる憶測を呼んでいます。
(Cloud Heartsが近年制作に携わった作品には、『冰剣の魔術師が世界を統べる~世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する~』、『聖者無双~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~』、そして『THE NEW GATE』などがあります)
さらに、同作の舞台版BD&DVDも、制作会社の倒産により発売中止となっており、ファンは「原作はこんなに素晴らしいのに、なぜアニメも舞台もこんなに不運なんだ」と、やりきれない思いを募らせています。
多くのファンが原作者の竹嶋えく先生に同情の声を寄せており、「せっかくの素晴らしい原作が、アニメも舞台も制作会社がこんな有様にしてしまった」「原作ファンとしては、あまりにも報われない結果に『一体どんな気持ちで制作を引き受けたんだ』と怒りを通り越して呆れるばかりです」といった声が聞かれます。

今回の件は、以前の調査分析でも指摘されていましたが、アニメ業界の二極化が深刻化している現状を浮き彫りにしています。大手制作会社が人気作を手がけて潤う一方で、中小規模の会社は活況の恩恵を受けられず、赤字を抱えたり、今回のような悲惨な状況に陥ったりするケースが後を絶ちません。
この状況は根深く、日本アニメ市場が世界的に存在感を増す中で、この傾向を覆すのは難しいかもしれません。せめて、自分の推し作品がまともな制作会社に恵まれることを願うばかりです。